『荒野の七人』

荒野の七人 [Blu-ray]

原題:“The Magnificent Seven” / 原作:黒澤明橋本忍小国英雄 / 監督&製作:ジョン・スタージェス / 脚本:ウィリアム・ロバーツ、ウォルター・バーンスタイン / 製作総指揮:ウォルター・ミリッシュ / 共同製作:ルー・モーハイム / 撮影監督:チャールズ・ラングJr. / 美術監督エドワード・フィッツジェラルド / 編集:フェリス・ウェブスター / 音楽:エルマー・バーンスタイン / 出演:ユル・ブリンナースティーヴ・マックイーンチャールズ・ブロンソンジェームズ・コバーンロバート・ヴォーンホルスト・ブッフホルツ、ブラッド・デクスター、イーライ・ウォラック、ウラジミール・ソコロフ、ロゼンタ・モンテロス、ビング・ラッセル / 配給:日本ユナイテッドアーティスツ / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

1960年アメリカ作品 / 上映時間:2時間8分 / 日本語字幕:大野隆一

1961年5月3日日本公開

2010年8月4日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series2 青の50本》上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/07/08)



[粗筋]

 メキシコの寒村・イストラカンは近年、貧困に喘いでいた。収穫の時期になると、カルヴェラ(イーライ・ウォラック)率いる盗賊団が訪れ、掠奪を繰り返していく。必死に争いを避けていた村人たちも、もはや限界だった。なけなしの金をかき集め、拳銃を仕入れて、交戦することを決意する。

 ふたりの村人が近くにある街を訪れ、拳銃を仕入れると共に、扱いを教える人間を捜すことになった。そこで彼らは、ちょっとした騒動を目撃する。死んでいた先住民を見つけた裕福な旅人が、葬儀屋に弔いを頼んだところ、荒くれ者たちが墓地への埋葬を拒絶、銃を構えて威圧したのだ。ほとほと困り果てた一同の前に、ふたりのガンマンが現れる。荒くれ者たちの挑発をものともせず馬車を駆り、拳銃で応戦して、無事に死者を墓地まで運んだ彼らに、村人たちは自らの難局を託すことを決める。

 ふたりのガンマン、クリス(ユル・ブリンナー)とヴィン(スティーヴ・マックイーン)は、この決して儲からない依頼を引き受けた。ふたりでは心許ないと考え、街で呼びかけ、自らも出向いて声をかけた結果、集まったのは5人。

 クリスたちの侠気を目の当たりにしていた村人はともかく、他の村人たちはこの素性の知れないガンマンたちに対して、疑念を隠さなかった。しかし、そうしているあいだにも、カルヴェラたちがふたたび村に現れる時が迫っている。クリスたちは、戦いの準備を始めた――

[感想]

 黒澤明監督『七人の侍』を西部劇としてリメイクした作品である――依然として基本を勉強中、しかも何となく「黒澤作品は出来るなら劇場で観たい」という気持ちに傾きつつある私は未だにオリジナルを鑑賞していないので、どう変更したのか、どちらの出来映えが上なのか(世間的にはオリジナルのほうが上、というもっぱらの評判のようだが)は論じられないが、西部劇映画としてなら判断することも許してもらえるのではないか。

 少なくとも、もとが日本の時代劇である、という予備知識がなければ、そういう事実に気づくことはないだろう。見事に西部劇に変換されている。

 私のまだまだ多くない西部劇鑑賞の経験と照らし合わせてみただけでも、むしろ本篇は非常に正統派の内容と映る。盗賊たちに繰り返し掠奪される寒村、手助けに赴くガンマンたち。セットとロケとを駆使して描かれる荒野の寒々しくも美しい光景や人々の交流、そして血潮を滾らせるクライマックスの決戦。あまりに違和感がない。

 言われてみれば、日本の時代劇を彷彿とさせる描写もある。無償で手を貸すガンマンたちもそうだが、特に印象的なのは最後に生き残った者が口にする感慨だ。あれは、放牧という形態で生活する人々もいたアメリカ大陸では、若干説得力に欠くように思う。あの一言が重みを備えるのは、やはり日本の時代劇においてこそ、だろう――無論、本篇の文脈でなら、決して不自然ではないのだが、実感はより増す。

 とはいえ、だから駄目、というわけではなく、この物語のベースが西部劇に適用できることに気づき、きちんと合わせるべきところは合わせ、巧みに翻案したであろうことは十分評価に値する。世界的にも傑作として認められている原作であるだけに、あちらに思い入れのある人には様々物足りないところはあるのだろうが、予備知識なし、或いはオリジナルの内容を知らずに観れば、本篇は骨太の西部劇以外の何ものでもない。

 たとえば、少しずつガンマンたちに心を開いていく人々との交流、特に子供たちと親しくなる姿は胸を暖かくし、それが結実するクライマックスの決戦は激しくも感動的だ。西部劇ならではの銃撃戦の面白さが様々詰めこまれていることも、それまでのいささか安穏とした中盤で貯めた力を一気に解き放つような熱さがある。雇われたガンマンたちの散りざま、最後の姿もそれぞれに多彩なドラマと余韻を伴って忘れがたい。

 この頃よりも更に各国の、様々な作品に手を出し次々とリメイクしていく様に、ハリウッドのアイディア枯渇が囁かれて久しいが、リメイクすることで異なる光芒を添えられるのであれば賞賛されて然るべきだろうし、事実『ディパーテッド』のような栄誉に輝いた作品もある。本篇もまた、オリジナルの持つ魅力を異なる形で引きだした、創意の光る作品であることは間違いない。恐らくずっとオリジナルと比較され続けることにはなるだろうし、いつまでも後塵を拝し続けるだろうが、だからといって決して忘れ去られることはないだろう。

関連作品:

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続・夕陽のガンマン

ワイルドバンチ

華麗なる賭け

シャレード

コメント

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  2. […] 関連作品: 『地上(ここ)より永遠(とわ)に』/『ジュリア』/『戦場にかける橋』/『ナバロンの要塞』[…]

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