『導火線 FLASH POINT』

導火線 FLASH POINT [DVD]

原題:“導火綫 Flash Point” / 監督:ウィルソン・イップ / アクション監督:ドニー・イェン / 脚本:セット・カムイェン、ニコール・タン / 製作:ドニー・イェン、ナンサン・シー / 撮影監督:チェン・マンポー、ミウ・キンファイ / プロダクション・デザイナー:ケネス・マック / 編集:チャン・カーファイ / 衣装:リー・ピクワン / スタント・コーディネーター::谷垣健治、下村勇二 / 音楽:コンフォート・チャン / 出演:ドニー・イェンコリン・チョウ、ルイス・クー、ファン・ビンビン、レイ・ルイ、シン・ユー、ケント・チェン、シュイ・チン、谷垣健治 / 映像ソフト発売元:ACCESS-A

2007年香港作品 / 上映時間:1時間27分 / 日本語字幕:?

2011年7月16日日本公開(DVDリリース記念限定公開)

2011年6月3日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2011/12/11)



[粗筋]

 1997年、中国返還直前の香港。

 マー(ドニー・イェン)は正義感溢れる優秀な刑事だが、如何せん血の気が多く、全力で容疑者を痛めつけてしまう傾向にある。見かねた上層部は彼を警察音楽隊に転属させるが、すぐに呼び戻されることとなった。

 マーの相棒ウィルソン(ルイス・クー)は犯罪組織摘発のため潜入捜査に臨んでいる。彼が接近したベトナム出身の3兄弟アーチャー(レイ・ルイ)、トニー(コリン・チョウ)、タイガー(シン・ユー)はとりわけ凶悪で、商売仲間でさえ邪魔と見ると非道な手段で脅しをかけていた。やがて、タイガーによって瀕死の重傷を負わされた男が情報を提供、警察は3人を一網打尽にすべく、3兄弟が母親のために催したパーティに踏み込む計画を立てる。

 だが、トニーは招待客が訪れないことを怪しみ、警察が踏み込むより先に会場を切り上げ、香港脱出を企てた。ウィルソンはトニーたちの目を盗んでマーに連絡を入れるが、トニーに勘づかれてしまう。道端に転がされたウィルソンが発見されたのは、それから数時間後のことだった……。

 幸いにウィルソンは一命を取り留め、アーチャーを逮捕することには成功したが、司直の手を逃れたトニーとタイガーがこの状況で大人しくしているはずもなかった。アーチャーの裁判に際して、証言台に立つことが明白である者たちを次々と襲撃する。その魔手は、潜入捜査のなかで孤独を託っていたウィルソンにとって唯一の支えだったジュディ(ファン・ビンビン)さえも巻き添えにしてしまう……

[感想]

 近年、マーシャル・アーツを軸とするアクション映画で活躍する俳優のなかで、最も気を吐いているのがドニー・イェンである。あいにく、日本ではこの手の映画、とりわけ香港や中国産のものが劇場公開される機会はめっきりと減ってしまったが、時折入ってくる作品でその存在が知られ、新作を熱望するファンが劇場公開への呼びかけをするようになり、それに応える形で劇場公開に漕ぎつける例も出て来た。本篇もそんな作品のひとつで、生憎正式な劇場公開こそされなかったものの、日本でのDVDリリース時に、記念として期間限定の形ではあるが映画館で上映されている。残念ながら私はタイミングが合わず、レンタルにてようやく鑑賞した次第である。

 観てみると、どうしてこれをDVDに直行させてしまったのか、けっこう本気で業界の見識を疑いたくなるような仕上がりである。

 ストーリーそのものはさほど特徴的なものではない。常軌を逸した悪党たちが傍若無人に振る舞い、その魔の手は警官のみならず、身内にも及んでいく。その悪逆非道ぶりに、もともと血の気が多く、格闘のセンスにも優れた刑事が怒りを爆発させる……というものだ。ぶっちゃけ、そのアウトラインだけを眺めると、ジャッキー・チェンの代表作『ポリス・ストーリー/香港国際警察』に酷似している。

 だが、随所にコメディを鏤め、荒唐無稽の印象も強かったあちらに対し、本篇はとことんシリアスだ。ユーモアもあるがそれはあくまで添え物で、潜入捜査に駆り出された刑事の孤独感と、じわじわと追いつめられていく様を描いた序盤のヒリヒリとしたシビアさ、そして終盤、ドニー・イェン演じるマー刑事が怒りを爆発させて以降のアクションの壮絶さ、非情さは、『ポリス・ストーリー』とは似て非なるものだ。

 実のところ、アクションの見せ場というのは決して多くはない。だがそれが凄まじいインパクトを備えているのは、そこに繋げていくドラマの構成が巧みだからだ。冒頭から、悪党を捕えるためなら暴力も辞さない姿勢を顕わにするマー刑事と、目の前で繰り広げられる悪事の数々に鬱屈を募らせながらも必死に耐え忍び、情報を集めるウィルソン刑事。本来相棒でありながら、互いにフォローできない状況に苛立ちを募らせていた挙句に、陥る最悪の事態。マー刑事ならずとも胸を痛める展開の果てに、あの場面に遭遇したなら、それは暴走もするだろう、と頷ける。だから、最後に単身ベトナム三兄弟に挑むマー刑事の姿に、痛々しさと等しく、カタルシスが生まれているのだ。

 そして、アクションのみを眺めても、その創意工夫とインパクトは絶品だ。

 草原の、極端に視野が制約されているなかでの銃撃戦。草を掻き分ける音で相手の位置を予測し、姿勢を限界まで低くして弾幕を逃れるかと思えば、樹に登って相手の位置を確かめ狙撃する。草叢なので、外れて着弾すると緑色の煙が舞う。あり得そうでいて、なかなか見られない映像が展開する。

 そして、ドニー・イェンと敵とのタイマンは、近年稀に見る力強さだ。イェン演じるマー刑事に火を着ける三男を演じたシン・ユーも熱演だが、最後に10分近く拳を交える、コリン・チョウ演じる次男との一幕はまさに“死闘”という表現が相応しい。優劣が頻繁に入れ替わり、倒れても挑発して相手を煽る。イェンは無論、対決するコリン・チョウもハリウッドで活動した経験があり(『マトリックス・リローデッド』で預言者の従卒セラフを演じていたのはこの人だ)、一流のマーシャル・アーツ俳優の激突は、アクション映画ファン、とりわけ70年代から80年代にかけての香港映画を好む人なら興奮すること請け合いである。

 結局彼らはどうなったのか、その後については明確に描いていないが、マー刑事なりに意思を示すとともに、虚しさを湛えた終幕は、アクション映画ならではの、しかしその枠に収まらない余韻を残す。

 革新的ではない、しかしアクション映画のジャンルで未だ強い意欲を示すキャストとスタッフの矜恃を感じる名作である。改めて、劇場公開されなかったことが惜しまれる。

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コメント

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