『トロール・ハンター』

『トロール・ハンター』

原題:“Trolljegeren” / 監督&脚本:アンドレ・ウーヴレダル / 製作:ヨン・M・ヤコブセン、スヴァインウング・ゴリモー / 撮影監督:ハルヴァール・ブラーン,F.N.F. / 美術:マルティン・ガント / VFXスーパーヴァイザー:オイスタイン・ラーセン / VFX&ポストプロダクション:マルクス・B・ブローデルセン / 編集:ベール・エリック・エリクセン / 音響:ポール・ハウガン・インゲブレットセン / 出演:オットー・イェスペルセン、グレン・アーラン・トステルー、ヨハンナ・モールク、トーマス・アルフ・ラーセン、ハンス・モーテン・ハンセン / 配給:TWIN

2010年ノルウェー作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:桜庭理絵

2012年3月24日日本公開

公式サイト : http://troll-hunter.jp/

TOHOシネマズシャンテにて初見(2012/03/24)



[粗筋]

 ヴォルダ大学の学生トマス(グレン・アーラン・トステルー)、ヨハンナ(ヨハンナ・モールク)、カッレ(トーマス・アルフ・ラーセン)の3人は課題の一環として、ドキュメンタリーの撮影を行っていた。

 彼らが取材したのは、最近熊狩りの人々を悩ませる、密猟者の問題である。熊狩りには許可が必要だが、何者かが無許可で熊を射殺し、放置していくケースが相次いでいる。聞き取り調査の結果、どうにかその密猟者らしき人物を特定したトマスたちは、彼のもとへと赴いた。

 件の密猟者、ハンス(オットー・イェスペルセン)はトマスたちが向けるカメラを頑なに拒んだが、学生は執拗にこの人物を追い続ける。

 異様な内装を施したトレーラー・ハウスで暮らし、各地を転々としているらしいハンスは、やがて“爆発危険”という看板とともに封鎖された森林に侵入していった。恐る恐るあとを追ったトマスたちだったが、やがてハンスの車を見失ってしまう。手探りで森の奥深くに潜っていったトマスたちは、やがて謎の雄叫びに似た声と、閃光を目撃した。そして、森の奥から現れたハンスは、こう叫ぶ――「トロール!」と。

 かくてトマスたちは、政府がひた隠しにする、ノルウェーの知られざる領域を目の当たりにする――

[感想]

 トロールとは、北欧の民話などに登場する妖精の一種である。森や山の中に暮らす彼らはたとえば『ムーミン』のモチーフとなり『となりのトトロ』の原型ともなり、ゲーム『ドラゴンクエスト』に登場するモンスターとしてもお馴染みだ。本篇は、それがノルウェーに実在し、政府がひた隠しにしている、という設定に基づき、ドキュメンタリーの方式でその真実を暴く、という体裁で描き出した作品である。

 が、前述した『ムーミン』や『となりのトトロ』のイメージで観に行くと、非常にかけ離れた代物である。本篇でのトロール像はもう少し土着的な民話のものをなぞっているようで、知的生物、というよりは、いささか特異な生態を持つ野生動物といった趣である。それらが森や山奥に存在しているため、それを追うハンターに帯同する学生が撮影した、という体裁の映像は、さながら秘境探検映画の趣がある。

 ただしこの作品、なかなかにツッコミどころが多い。予告篇でも垣間見えるトロールの体格をご覧いただければ解るが、果たしてこんなでかいもの、隠し通せるものだろうか。幾つかの特色は、現実の世界で生活するのも大変なんじゃないか、と思わせるし、他方でちょっと監視下を逃れただけで、家畜などに甚大な被害が及ぶ危険があって、隠していたことの是非より「どうして見つからなかったのか」ということが訝られる。

 だが本篇の場合、そういう不自然さを承知の上で世界観を構築しており、わざと観客に違和感を与え「おいおい」と突っ込ませることで愉しませようとしているようだ。顕著なのは粗筋以降、ハンスがある考えから学生達の取材を受け入れたあとの描写である。ハンスが語るトロールの生態、“トロール・ハンター”として活動する彼の仕事ぶりや暮らしぶりなど、恐らくは民話をベースに膨らませて描き出されるそうした様子が、生々しくも滑稽なのだ。

 どうしてもトロールのほうに注目したくなるが、しかしこの作品、主人公はやはり“トロール・ハンター”たるハンスと言っていい。何故、この不可思議な生き物を狩る仕事に就いたのか、どのような暮らしを送っているのか、そしてどのようにトロールと対峙するのか……まさに“お仕事探訪”の様相を呈する描写だが、これがとにかく面白い。トロールを殺すたびに報告書を作成する、と真面目くさってアンケート式のリストに記入する姿が笑える一方で、夜の闇が怖いからトレーラーに設置した日焼けマシンに日焼け止めを塗って入って寝る、というのはユーモラスだが切実だ。本篇の魅力の大半はこのハンスという人物の見せる愛嬌と哀愁に因っている、と言ってもいい。

 そして、クライマックスに至ると緊迫感が増し、怪獣映画よろしく壮絶な展開になるあたり、ツボを見事に押さえている。語られるトロールの生態からすると奇妙な経緯に、事実が加わることで、ある“真実”が判明、最終対決へ、という流れは王道だがそれ故に熱い。個人的には、その“真実”に比較的解り易いモチーフを組み込んでいるのも好感が持てた。

 率直に言えば、決して何もかも完成された作品というわけではない。構図にはしばしば(学生が撮ったドキュメンタリー、という前提があるにしても)甘さが目立つし、合成の出来映えは、ハリウッドの大作を見慣れていると拙さは否めない。だが、そうした弱さ、欠点を圧倒するくらいの意欲とこだわりが、本篇には漲っている。

 トロールの造形はお世辞にも美しくないし、メインとなるハンスにしても学生達にしても、決して絵面がいいとは言えない――北欧の独特な自然の情景と、そこに跳梁する巨大なトロールの姿は見応えがあるが、それが魅力の中心を占めるわけでもない。本質的に題材がB級であることもあって、好もしく思わないひともいるだろう。だが、いい意味でのチープさと、モチーフに対する愛情を感じられる、本物の“B級映画”を切望しているのなら、かなり確実に満足を与えてくれるはずだ。そして好事家諸氏は、こんな作品がDVDに直行することなく、短期間でも大スクリーンで拝める機会を、間違っても逃さないでいただきたい。

 あと、本篇が気に入ったのなら、エンドロールが終わるまで席を立たないことをお薦めする。大したネタではないが、きっとニヤリとするはずだ。

関連作品:

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