私にとって2度目の東京国際映画祭、本日の行き先は日本橋です。メイン会場はTOHOシネマズ六本木ヒルズ、一部がシネマート六本木で上映されており、それに加えて今回、日本橋にて数本の特別上映が行われています。“日本橋で日本映画を見よう”と銘打ち、大映の名作映画に、最近の話題作『エンディング・ノート』などを、日本橋にあるCOREDO室町の日本橋三井ホールで上映するのです。企画として面白いので、今回意識してこの中から1作チケットを購入しておきました。
上映は13時30分スタート――いつもの私なら仮眠を取っている時刻です。この時間帯に観る、という選択肢はふだんなら存在しませんが、しかし今回に限ってあえて選んだのは、作品が私にとって魅力的だった。泉鏡花の小説を、市川崑が映像化、芸者の繊細で哀しい恋模様を描き出した『日本橋』(大映配給)……市川崑作品であることもそうですが、日本橋で上映する企画だから、まさにこの土地を舞台にし、題に地名を冠した作品を選ぶ、という解りやすさに思わず乗ってしまいました。
監督と作品名だけで惹きつけられてしまったため、内容についてはほとんど知識を入れずに来てしまったのですが、非常に味わいのある時代劇。シンプルではない人間関係、割り切れない行動が醸しだす終幕の情感がいい。如何せん、ふだんは寝ている時間なので、序盤はちょっと辛かったのですが、随所にまぶしたユーモアのあるやり取りや、特徴的な展開に引っ張られて、最後は眠気を意識しませんでした。大傑作ではないけれど、佳品。
今回初めて訪れた日本橋三井ホール、様々なイベントに用いることを想定しているようで、座席はきちんと傾斜のついた映画上映に適した仕様になっていますが、簡単に撤去出来る構造になっている。清潔で広さもありますから、けっこう良質な施設だと思うのですが、残念なのは、足許の状態が良くない点です。。最近のシネコンなら、どれほど暗くても座席の番号などは見えますし、フットライトも設置されているので、上映後でも慎重にしていれば移動出来ますが、この仕組みでは辛い。こと、この作品の場合は、私のような物好きを除けば高齢の方が中心で、杖を突くような人には相当難儀だったでしょう。全席自由席だったのですが、スクリーンとの距離があったこともあって、前列が比較的早く埋まってしまったのもいけなかったのでしょうが、もう少し考慮が必要だったかも。
この“日本橋で日本映画を見よう”という企画、TOHOシネマズ日本橋があればそこを使いたかったのではないでしょうか。しかしTOHOシネマズ日本橋は2014年3月開業予定で、目下絶賛建設中。……せっかくですから、開業時にはこういう名画座企画みたいなものも実施してくれないかなあ。ちょうど位置的にいちばん近い銀座テアトルシネマが来年で閉館してしまいますし、単館系作品をかけて欲しいというのももちろんですが、9つ用意するというスクリーンのうちせめてひとつぐらいはフィルム上映に対応して、継続的に旧作の上映をして欲しいものです。新作ばっかりじゃ文化にはなりませんから、ねえ。知識なしに観た『日本橋』だって、立派に楽しめるんですから。
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