原題:“The Expendables 2” / 監督:サイモン・ウェスト / 脚本:リチャード・ウェンク、シルヴェスター・スタローン / キャラクター創造:デヴィッド・キャラハム / 原案:ケン・カウフマン、デヴィッド・アゴスト、リチャード・ウェンク / 製作:アヴィ・ラーナー、ケヴィン・キング=テンプルトン、ダニー・ラーナー、レス・ウェルドン / 製作総指揮:ジョン・フェルトハイマー、ジェイソン・コンスタンティン、イーダ・コーワン、ベイジル・イヴァニク、ガイモン・キャサディ、ダニー・ティムボート、ボアズ・デヴィッドソン、トレヴァー・ショート / 共同製作:ロバート・アール、ジブ・ポレムス、マット・オトゥール、ガイ・アヴシャロム、ジギ・カマサ / 撮影監督:シェリー・ジョンソン / プロダクション・デザイナー:ポール・クロス / 編集:トッド・E・ミラー / 衣装:リズ・ウォルフ / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、チャック・ノリス、テリー・クルーズ、ランディ・クートゥア、リアム・ヘムズワース、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、スコット・アドキンス、ユー・ナン、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー / ニュー・イメージ製作 / 配給:松竹
2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間42分 / 日本語字幕:林完治 / PG12
2012年10月20日日本公開
公式サイト : http://www.expendables2.jp/
[粗筋]
自ら“消耗品軍団(エクスペンダブルズ)”と名乗る傭兵部隊。料金は高いが、その仕事は確かで、世界に名を轟かせている。ネパール北部で拉致された中国人富豪の救出も、豪快な作戦で見事に完遂した。
だが、この一件のあと、入ったばかりの新米であるビリー・ザ・キッド(リアム・ヘムズワース)は、この仕事が自分に向いているのか悩んでいることを告げる。実力主義でありながらチームワークに優れた仲間たちとの相性は悪くないが、恋人と離れる時間が長くなっており、仕事と女の板挟みで苦しんでいる。軍団のリーダーであるバーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)はビリーの気持ちを尊重し、身の振り方を決断するよう促した。
大仕事のあと、本来なら休暇に入るはずだったが、帰投したロスの前に、疫病神が現れる――CIAに所属するチャーチ(ブルース・ウィリス)である。チャーチは“エクスペンダブルズ”が自分に残した借りをちらつかせ、面倒な仕事をロスに依頼する。
それは、バルカン半島に墜落した飛行機の強化金庫に残っているはずの機密データを回収する、というものだった。マギー(ユー・ナン)という女性のエージェントを同行させる、という点を除けば、面倒ではあるが決して難しい仕事ではないように思えた。
だが、機密データを回収した直後、ロスたちは武装した集団に包囲される。ヴィラン(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)に率いられた彼らは“エクスペンダブルズ”と同様の傭兵集団であるが、遥かに悪辣な行為に手を染めている連中だった……
[感想]
アクション俳優のオールスター・ムービーである。そして、それ以上でもそれ以下でもない。
趣向としては前作より徹底されたのは間違いない。第1作ではカメオ的位置づけだったブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーの2人がアクション・シーンに本格参戦、前作では不在が惜しまれたジャン=クロード・ヴァン・ダムが敵方ながら加わり、更には俳優を引退していたチャック・ノリスまでが顔を連ねた。中心人物のシルヴェスター・スタローンを含め、ほとんどのメイン・キャストも続投しているので、贅沢さはいやましている。
しかし、ストーリーはかなり粗い。チャーチが一連の作戦行動に“エクスペンダブルズ”を起用した理由からしていまひとつ雑であるし、ヴィランとの駆け引きも見場優先で異様だ。それ以前に、本筋においてもプロローグ部分においても、“エクスペンダブルズ”が採る作戦はほとんどが乱暴な特攻で、成功にも失敗にもさほど説得力がなく、アクションによって物語が締めくくられるカタルシス、といったものに乏しい。
だが、本篇の場合はそれで構わないのだ。恐らく、妄想したひとは少なくないだろうが、実際にこれだけの面子が1本の映画の中で顔を揃えたことは皆無に等しい。六十代も半ばに至って未だに現役のアクションスター兼監督として活躍するシルヴェスター・スタローンだからこそ可能だったこのキャスティングが、興行的にも一定の成功を収めたからこそ、続篇であるこの作品においては更に夢のようなメンバーが集結した。
第1作においては、集団での特攻や、ジェット・リーとジェイソン・ステイサムとのコンビ技のような、多数であればこそ、という見せ方が多かったが、今回はメイン級キャストについてはそれぞれ単独での見せ場を用意し、各々のファンに応えるかたちで、アクションの魅力を示している。単独主演作で披露するものにも比肩する力強いナイフ捌きを披露するステイサム、クライマックスで迫力充分のタイマンに挑むスタローンとヴァン・ダムなどは無論、たぶん諸般の事情で完全な形での参加が難しくなったと思われるジェット・リーでさえ、プロローグ部分ではここ最近ご無沙汰だった、血飛沫の舞う激しい立ち回りを披露しており、もっと尺が欲しい、という欲を出したくなるが、シーンそのものの満足感は高い。
前述したように、本篇はアーノルド・シュワルツェネッガーが出演している。前作はまだカリフォルニア州知事在職中だったためにカメオ出演の扱いだったが、本篇では冒頭、いきなり意外な形で登場すると、随所で顔を覗かせ、最終的にはかなりの活躍を示す。往年のような優れた肉体美をあらわにするわけでも、肉体的なポテンシャルを証明するわけでもなく、正式復帰を前にした肩慣らし、或いはアクション映画ひと筋で活躍してきたスタローンからのご祝儀的な活躍のようにも見えるが、しかしそれでも、彼の出演シーンはアクション映画を愛好してきた者にとっては充分すぎるサービスとして成り立っている。細かな台詞がいちいちシュワの出演作を匂わせるあたりも、あざといのも確かだが、嬉しくなってしまう。
もっと達者な監督や脚本家が就けば、そうしたスターたちの見せ場と、アクション映画だからこそのストーリーの面白さを両立させることも可能だったように思えるが、決して楽なことではあるまい。アクション俳優たちの勇姿を披露するほうを優先し、きちんと満足させるのだから、その意味では要求に間違いなく応えきっている。
前作で望まれていたのに出演が叶わなかったヴァン・ダムを登場させ、ピンポイントで参加した大物も存分に活躍させたとは言い条、名前の挙がらなかった大物はいるし、出来るならば女性陣にも加わって欲しい、などなど、こういう企画は始めたら要求は尽きない。恐らく、それに応えられるだけの影響力と行動力があるのはスタローンだけであろうし、同一の趣向の映画が頻出して役者の奪い合いになっては元も子もない。是非ともスタローンには、観客に望まれ、状況が許してくれる限り、このシリーズを作り続けていただきたいものである――少なくとも、私は待っている。
関連作品:
『SAFE/セイフ』
『GAMER』
『RED/レッド』
『ターミネーター3』
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