『キャビン』

原題:“The Cabin in the Woods” / 監督:ドリュー・ゴダード / 脚本:ドリュー・ゴダードジョス・ウェドン / 製作:ジョス・ウェドン / 製作総指揮:ジェイソン・クラーク / 撮影監督:ピーター・デミング / プロダクション・デザイナー:マーティン・ホイスト / 編集:リサ・ラセック / 音楽:デヴィッド・ジュリアン / 音楽監修:デイナ・サノ / 出演:クリステン・コノリークリス・ヘムズワース、アンナ・ハッチソン、フラン・クランツ、ジェシー・ウィリアムズ、リチャード・ジェンキンスブラッドリー・ウィットフォード / 配給:KLOCKWORX

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:川又勝利 / 字幕監修:町山智浩(予定) / PG12

2012年9月16日第5回したまちコメディ映画祭in台東映画秘宝まつりにて上映

2013年3月9日日本公開予定

公式サイト : http://cabin-movie.jp/

ツイッター公式アカウント : http://twitter.com/ciw_mov

浅草公会堂にて初見(2012/09/16)



[粗筋]

 ダナ(クリステン・コノリー)は友人のジュールズ(アンナ・ハッチソン)、カート(クリス・ヘムズワース)、ホール(ジェシー・ウィリアムズ)、マーティ(フラン・クランツ)とともに、カートのいとこが購入したという森の中の小屋へと、ヴァカンスに赴いた。

 現地に着くまでははしゃいでいた一同だが、森の中の一本道に入る手前、給油と道の確認のために立ち寄った、潰れたガソリンスタンドで現れた男に、「行きはいいが、帰り道はない」と不穏なことを囁かれ、にわかに空気は変わる。

 辿り着いた小屋は更に薄気味悪く、ダナは不安を禁じ得なかったが、他の面々はさほど気にも留めていないようだった。ダナもいつしか、危うさを感じながら一緒に楽しんでいたのだが、パーティのさなか、突如として開いた地下室の扉が、彼女たちを恐怖へと導いていく……

[感想]

 私が本篇を鑑賞した時点で、邦題はまだ決まっていなかった。既に宣伝用のTwitterアカウントが始動していたにも拘らず、最初のうちは、したまちコメディ映画祭で本篇を鑑賞したひとに向かって、宣伝展開についていいアイディアがあれば出して欲しい、といった趣旨のつぶやきを漏らしていた。それくらい、本篇は宣伝の仕方が難しく、内容の紹介がしづらい。オチに抵触してしまうつもりであれば楽なのだが。

 粗筋だけ眺めればごく有り体の、人里離れた土地で繰り広げられるホラー映画に過ぎない。しかし本篇は、冒頭から妙な雰囲気を醸している。何せ、粗筋に記した本題よりも前に、こういう物語とはまるで縁のなさそうな人々の行動が描かれる。いったい何が始まるのか、と不安になったところでにわかに、まるで作中作のような趣で上記のような場面に入っていく。

 一般的なホラー映画と同様に、緊張や恐怖をもたらすシーンも随所にあるが、入れ子の外側にいるような人々の存在が、その効果をまったく違う形で膨らませていく。驚き、恐怖も味わわせてくれるが、それと同じくらいにユーモアも強烈だ。

 しかし本篇の真骨頂は、次第に明かされていく、アイディアの本質そのものである。途中で察したつもりになっても、恐らくこれほどの趣向だった、と気づくひとは少ないだろう――それも、たぶん相当なホラー映画愛好家でも、だ。そして、ホラー映画を多く渉猟しているようなひとほど、本篇の趣向に痺れるに違いない。

 危惧されるのは、ホラー映画好きでないとこの発想の面白さを充分に味わえないのではないか、ということと、ホラー映画好きであっても本篇の特異すぎる趣向は賛否が分かれるのではないか、ということだ――が、こればっかりは実際に観てみなければ判断はしづらいだろう。

 お前が何を言っているのかよく解らないが気にはなる、という方は、とりあえず何も考えずに――出来ればそれ以上の予備知識を持たずに劇場に足を運んでいただきたい。恐らくこれ一度きり、二度と再現不可能な映画体験が堪能できるはずだ。そして本篇を観れば、『クローバーフィールド/HAKAISHA』の脚本を手懸けたドリュー・ゴダードも、2012年最大の話題作『アベンジャーズ』を手懸けたジョス・ウェドンも、いずれも1作限りの才能ではなかった、ということが実感できるはずだ。

 ……ネタに触れずに書ける感想は、たぶんこれが限界です。

関連作品:

クローバーフィールド/HAKAISHA

アベンジャーズ

モールス

キック・アス

宇宙人ポール

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