20年経っても、香港映画は同じようなことをしているのです。

 月末の用事までになるべく心残りを片付けねばなりません。当初は朝から出かけるつもりでしたが、成り行きで出そこなってしまったこともあり、明日以降に考えたスケジュールを前倒しにすることにして、午後から出発。目的地は久々の六本木です。

 ――が、ちょっと油断していた。そろそろ春休みも終わりだろう、と侮っていたんですが、まだ色々と人出は多い。特に、皇居で現在、花見のために一部を開放していることを忘れていたのが痛かった。あのあたりでだいぶ余計な時間を取られてしまい、現地に着いたのは上映開始時間をちょっと過ぎた頃合い。このあとも同じ劇場で観るつもりでしたし、第2の候補も用意していないこともあり、まあ冒頭数分程度の抜けは許容するか、と諦めて劇場へ。幸い、オープニング手前ぐらいまでを観逃しただけで済みました。

 シネマート六本木にて鑑賞した1本目は、春のプチ香港・中国エンターテイメント映画まつりと題した企画のうちの1作、ジャッキー・チェンが2役を演じて話題となった1991年製作の映画ツイン・ドラゴン』(TWIN配給)。2011年に開催された大成龍祭では上映されなかったこともあって、これが初めての鑑賞です。

 もともと香港映画監督組合の資金捻出のために製作された作品だったそうで、この頃にはだいぶ洗練されつつあったストーリー構成よりも如何に観客を喜ばせるか、に焦点を絞っているのが窺える。アクションにカースタント、コメディ要素も盛り沢山ですが、さすがに筋道に無理がある。とはいえ、ジャッキーが二役を演じる、という面白みをコメディでもアクションでも存分に活かし、冒頭から結末までほぼ見せ場に欠かないサーヴィス精神は天晴です。過剰すぎるきらいはありますし、まとまり、というところから高い評価はしにくいんですが、やみくもな面白さが漲る、香港映画らしいパワーのある作品でした。

 1時間ほど間があって、それから2本目です。窓口のひとには、「『サイレント・ウォー』*1ですか?」と訊かれましたが違います。でもこっちも2013年の中国、とは言うものの実質香港作品、『海洋天堂』のジェット・リーとウェン・ジャンが刑事コンビに扮し、謎の連続殺人に挑む様を描いたアクション・コメディドラゴン・コップス -微笑捜査線-』(東京テアトル×Happinet配給)

 ……きょう1本目に観た作品と22年もの時間が開いているというのに、何だろうこの変わり映えのなさは。いや、決して悪い意味でなく、充分に洗練された作品を生み出せるようになったいまになっても、あの頃のサーヴィス精神をここまで蘇らせたものが出て来る懐の深さは本気で尊敬します。私程度の造詣でも解るくらい明確な、往年の香港映画へのオマージュをふんだんに盛り込み、整合性よりもとにかく観客を楽しませることに耽溺しきった内容で最後まで畳みかける。コリン・チョウやブルース・リャンと繰り広げる人間離れしたバトルでジェットが相変わらずの冴えを見せてくれますし、実はタイトル・ロールに扮しているウェン・ジャンも単細胞のバカっぷりも爽快です。こっちも内容的に筋が通っている、とは言えませんが、やっぱり往年の香港映画らしい無茶苦茶なパワーが漲る好篇でした。っていうか、ほんとに余韻が『ツイン・ドラゴン』と一緒だよ!

*1:映画まつりのもう1作。『インファナル・アフェア』シリーズの監督コンビが2012年に撮った、サスペンス映画だそーです。

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