傘がない。

 昼間出かけようとしたとき、初めて気がつきました。

 たとえば、どこかに忘れてきた、というなら話は解る。しかし、最近は雨が降っているときにあまり外出していませんし、万一を考えて持っていったときも、ちゃんと携えて帰ってきた覚えがある。

 どうにも納得がいかず、傘立てをよく調べてみると、明らかに家人のものではない傘が1本、入っている。我が家では昔、自分の名前が入った千社札風のシールを作っていて、自分の持ち物にはそれを貼って区別がつくようにしているのですが、それが貼っていないものが1本紛れ込んでいるのです。

 私が、どこかに出かけて置いてきたのをすっきり失念している可能性をひとまず脇に避けると、考えられるのはただひとつ。雨の日に訪れた誰かが、自分の傘を置き忘れて私の傘を使ってしまった、ということだけ。

 実のところ、見知らぬ傘のほうが、ものはいいのです。私の傘は手動ですがこちらはワンタッチ、ゆうに15年は使っている私の傘はどこかから雨が少し漏れていましたが、残っていたものは状態が非常にいい。どのみち、いずれ買い換えるつもりではいたのですが……長年、置き忘れることもなく使い続けてきた傘は、ぼろくても愛着がある。いずこへともなく消えてしまうよりは、買い換えてもしばらく手許に置いておきたかった。

 持っていってしまった来客に当たろうにも、ちょうど雨の折りに誰が訪れたのかなんていまさら調べるのも難しい。忘れていたとしても、もうたぶん処分されている頃でしょう。仕方がないので、夕方からの用事の際には、見知らぬ傘を持っていきましたが……なんだかとっても釈然としない。しかも、こんなに風が強くしばしば激しく雨粒が降りしきっていたのに、肝心の移動中にはまったく降らなかったっていったい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました