原作:藤子・F・不二雄 / 監督:八木竜一、山崎貴 / 脚本:山崎貴 / エグゼクティヴプロデューサー:伊藤善章、梅澤道彦、阿部秀司 / プロデューサー:大倉俊輔、守屋圭一郎、渋谷紀世子、岡田麻衣子 / アートディレクター:花房真 / CGスーパーヴァイザー:鈴木健之 / サウンドデザイン:百瀬慶一 / 音楽:佐藤直紀 / 主題歌:秦基博『ひまわりの約束』(Ariora Japan/Augusta Records) / 声の出演:水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、松本さち、萩野志保子、三石琴乃、松本保典、田原アルノ、竹内都子、山崎バニラ、高木渉、妻夫木聡 / 制作プロダクション:白組、ROBOT、シンエイ動画 / 配給:東宝
2014年日本作品 / 上映時間:1時間34分
2014年8月8日日本公開
公式サイト : http://doraemon-3d.com/
TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/08/20)
[粗筋]
野比のび太(大原めぐみ)は何をやっても冴えない。勉強は出来ないし運動神経もゼロ、怠け者で努力もしない。同級生のジャイアン(木村昴)とスネ夫(関智一)に年がら年中いじめられても、抵抗も出来ないような男の子だった。
そんな彼の部屋の引き出しから突然、一体のロボットとひとりの少年が姿を現した。セワシ(松本さち)と名乗った少年は、自分は22世紀からやって来た、のび太の孫の孫だ、と言う。セワシの話によれば、成長したのび太は不幸の連続で、散々な人生を送るのだそうだ。そのあおりで貧乏生活を強いられているセワシは、のび太の未来を変えるため、ネコ型ロボットのドラえもん(水田わさび)をお世話役として置いていくことにしたのである。
未来からのび太の様子を見ていたドラえもんは、のび太の情けなさに「何をやっても無駄だ」と考え、セワシの命令を拒もうとするが、セワシに“のび太を幸せにするまで帰れない”というプログラムを設定されてしまい、泣く泣くこの世界に残ることにした。
様々なひみつ道具を詰めこんだ四次元ポケットを持つドラえもんと暮らしはじめて、のび太の生活は一変する。遅刻魔だったが、どこでもドアを用いることで授業に遅れることはなくなったし、暗記パンで解答を覚えて、テストでいい点数を取ることも出来た。
ドラえもんは、のび太が幸せになることの目標として、のび太が憧れている同級生・しずか(かかずゆみ)と結ばれる未来を目指すことにした。だが、同級生の中には、成績優秀運動神経抜群、しかも人柄にも優れた出来杉(萩野志保子)という強敵がいる。のび太は出来杉に負けまいと、ひみつ道具に頼ろうとするが……
[感想]
最近はすっかり遠のいてしまったが、幼い頃は『劇場版ドラえもん』を観に行くのが春の恒例だった。すっかり映画好きが高じてしまったいま、ときどき久しぶりに観ようか、という気分にもなったが、結局機会を見つけられずにいた。そんななかであえて本篇を鑑賞しに劇場に足を運んだのは、『friends』の監督コンビが、3DCGによって描き出したドラえもんであり、しかも劇場版ならではの大冒険を扱うのではなく、『ドラえもん』という物語のよりベーシックな部分を採り上げているらしい、と感じたからだ。
実際、予告篇で提示された、そういったイメージとほぼ一致した作品ではある――あるのだが、私個人としてはちょっとしっくり来なかった。
『ドラえもん』は、原作者の逝去により漫画の新作は(少なくとも藤子・F・不二雄の作品としては)出ることがなくなったが、アニメ版はキャストを入れ換えつつ、未だに続いている。劇場版は無論のこと、テレビ版でも『ドラえもん』が始まったきっかけに戻って物語を組み立てることは、少なくとも当分のあいだ出来ないだろう。だが、従来のセルアニメ(に準ずる手法)から離れた違うスタイル、まさに本篇で用いられた3DCG及び3D上映のようなものを導入するなら話は別だ。改めて、シリーズの端緒と、その着地点について語ることが許容される。
恐らくスタッフにもそういう狙いはあっただろう。本篇では、原作に接したことがある人ならまず知っているようなエピソードや“ひみつ道具”をベースに再構築しており、作品に馴染みがあるひとにとっては原点を見るような作りであり、翻って、これまで『ドラえもん』に接したことがないひとでも、どういう話だったのかよく解る内容になっている。
そうした点は評価するのだが、ただ、それならばもつと思い切ったシナリオを用意して欲しかった、という嫌味が私には拭えない。確かに本篇のエピソードの処理は、一部オリジナルの要素で繋ぎながらもほぼ原作通り、台詞も原典に従っているとのことで、雰囲気には文句はつけられないが、しかし本当にほぼトレースしただけなのだ。折角いま、こういうかたちで制約を取り払って組み立てられるのだから、もっと思い切った跳躍が欲しかった――未見の方に配慮するとこの程度の書き方しか出来ないのが歯痒いが、“お涙頂戴”的な組み立てにするなら、もっと踏み切って欲しかったのである。
また、台詞回しやムードは確かに原作を踏襲しているのだが、全般にどうもテンポが良くない。作りの必然性から本篇はプレスコで収録が行われたというが、なまじ先に録っているせいなのか、それともオリジナルの文脈を尊重しすぎたせいなのか、どうも映像の転がし方としてぎこちない印象がある。悪い意味で、一般のセルアニメ的なところを残してしまっているように感じた――それもまた、個人的に惜しまれたところだ。
しかし、題材の選択はいいし、捉え方もいい。オリジナルの趣向で長篇としての芯を通した格好だが、そこにも無理がなく、かつて原作やアニメ版に接していた層はむろん、いま放送中のテレビアニメ版で馴染んでいる層でも大きな違和感を抱くことはないだろう。
私が本篇で特に評価したいのは、3DCGだからこそ可能な臨場感を存分に駆使していることだ。のび太視点で、間近にいるドラえもんを見せてくれるのもさることながら、特筆すべきはタケコプター利用者の視点を再現していることだ。数あるひみつ道具の中でも原作読者、アニメ視聴者に特に親しんだものであり、3DCGであればこそその魅力を疑似体験させることが出来る最たるものだ。作中、その醍醐味が堪能できるのは2箇所だが、その場面のチョイスにも好感が持てる。
映画を単品としてのクオリティで評価するようなひと、『ドラえもん』にさして愛着のないひとにはたぶんあまり愉しめないし、受け入れづらい仕上がりだろう。ただ、『ドラえもん』に馴染んでいて、いまもこの世界を素直に受け止められるひとなら満足出来るのではなかろうか。そういう観客をターゲットにしていることが窺えるのだから、真っ当な出来映えなのだ――あれこれ文句をつける方がちょっとひねくれているだけなのかも知れない。
関連作品:
『friends もののけ島のナキ』/『リターナー』/『BALLAD 名もなき恋のうた』/『ALWAYS 三丁目の夕日’64』
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』/『ロボッツ』/『WALL・E/ウォーリー』
コメント
私も先日観賞したのですが、話は原作…
特に漫画を読んでいた人にとっては物足りなかったですね
しかし、アニメでは少しコミカルに映る様な場面も、
3Dならではのリアルな描写によってより感動することもできました
特に後半のび太がタケコプターで飛んでいる際のドラえもんなど…
よりパワーアップした個所もあっていい映画でした
私も先日観賞したのですが、話は原作…
特に漫画を読んでいた人にとっては物足りなかったですね
しかし、アニメでは少しコミカルに映る様な場面も、
3Dならではのリアルな描写によってより感動することもできました
特に後半のび太がタケコプターで飛んでいる際のドラえもんなど…
よりパワーアップした個所もあっていい映画でした