『パラノイアック』初日舞台挨拶atユーロスペース。

 ……本日は色々なことがありました。ぜんぶ書くとそれだけでけっこう尺を取ってしまい、焦点が狂うので、その辺は明日のネタにするとして、今日は映画に絞って記します。

 1週間ぶりの映画鑑賞は前回と同じく渋谷、ユーロスペース。1年2ヶ月ぶりなんですが、奇しくも前回と同じ監督の作品です。あの『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズで演出補として登場、独特の存在感でファンにその名を記憶され、のちに演出に昇格すると、着実に成長を遂げ、シリーズ久々の劇場公開作をシリーズ屈指の傑作にしてスタッフを離れた岩澤宏樹監督が、たぶん初めて挑んだ完全フィクション長篇、フリーのホラーゲームを元に、廃墟での奇妙な出来事をPOV形式で描いたパラノイアック』(NSW配給)

 上映前に、封切りを記念した舞台挨拶が行われました――1週間限定公開とはいえあえて初日に駆けつけたのはこれがあったからです。出演者の小西キス、札内幸太、梶原翔、柳瀬はるひに加え、岩澤宏樹監督も登壇したのです。何せ演出補の頃から顔を見ていて、演出昇格当初の手腕の微妙さも見届けていただけに、この舞台挨拶は出来ればじかに観たかった。

 舞台挨拶は上映前、それ故に色々と仕掛けのある本篇の内容にあまり触れられないのがみな歯がゆそうでしたが、出演者のコメントからは長いこと怪奇ドキュメンタリーに関わってきた岩澤監督の“鬼”っぷりが窺い知れる。この手の作品にはよくあることながら、ロケーションも撮影期間も相当にタイトだったようで、箱根の廃墟、シンナーくさい真っ暗闇での宿泊を余儀なくされた挙句に、翌日になっても「まだ撮りたい」と言われた、などと出演者が愚痴をこぼすたびに苦笑いしていた監督の姿が印象的でした。

 それにしても岩澤監督、『ほん呪』に出始めた頃とほとんどしゃべり方も雰囲気も変わっていない。挨拶の時間が短かったこともあって、そんなに突出して印象に残る話はなかったんですが、こちらとしてはじかに見届けられただけでも満足でした。終映後にサインを貰ったり出来ればもっと良かったんですが、書いてもらうモノがなかったですし、何よりこっちにそんな余裕がなかったのでねー……。

 肝心の本篇のほうは、いい意味でも悪い意味でも期待に応えてくれた、と言うべきでしょうか。『ほん呪』などで鍛えたPOVのスタイルはもう文句のつけようがなく完成されていて、ちょっとした謎解き要素をちりばめたストーリーの疾走感は強烈。ただ、さすがにこういう作品、こういう趣向では描くべきだった説明も色々と端折っているので、意識して解釈を施そう、という態度を取らないひとにとっては「何じゃこりゃ」で終わる危険が強い。

 ただ、監督もたぶんそこは承知でしょう。今後彼がどういう方向に進むのかは知りませんが、本格的なフィクションに進出するなら、まとわりついているPOVのイメージを脱却するか、白石晃士監督のようにそのスタイルを拡大していくか、になる。どちらに進むにしても、まずはホラーを手懸けるのは正しい選択だと思います。初長篇としては上々。

 ……とにかく今日は、劇場に着いた時点から色々とあったんですが、その辺は明日、改めて。私ゃもう疲れましたよ、今日は。

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