中島みゆきConcert「一会」2015〜2016 at 東京国際フォーラムＡホール。

　あんまりコンサートの類には出かけません。行きたいんですけど、たいていちけっと発売時期に金欠で、押さえることが出来なくなるのです。しかし、うまく予算を押さえてあった場合や、ちょうど折良く余裕があるときにチケット発売の情報を知ると確保したくなる。なので、３年振りに訪れた*1コンサートが、３年前と同じく中島みゆきだったのは、まったくの偶然です。

　今回のコンサートは、ツアーとは銘打っていません。決して全国を回るわけではないから、というのがその理由だそうです。しかし、それでもまだ始まったばかり、来年２月まで上演予定があるので、セットリストなどはここで触れません……まあ、第３幕以外はパンフレットにぜんぶ書いてあるので、たぶんどっかで書いちゃってるとは思いますが。

　みゆきさんは以前のコンサートで演奏しなかった曲をなるべく選ぶ、という方針があるそうで、つまりメジャーな曲はそれほど多くない。こっちはけっこう聴いているので望むところだ、という気分でしたが、まさか冒頭から２連発で、個人的に好きな曲がふたつ続くとは思わなかった。客層からするとちょっとハードめな楽曲なので、直後のＭＣでみゆきさんが恐縮されてましたが、私はあれで一気に沸騰しました。

　予想通り、メジャーな曲よりはけっこう細かいところから引っ張ってきている印象でしたが、それはそれでぜんぜん問題なし。ただ、まだ始まって３ステージめ、とこなれていないせいなのか、第２幕でちょっとした事件が起きた。

　みゆきさんが歌の出だしを忘れてわやくちゃになる、というひと幕が。

　やはり曲名は伏せますが、今日のプログラムではいちばん古い曲で、しかもアレンジがかなり変更されている。第１幕でも１曲、歌詞を間違えて、歌の途中で「間違えちゃった〜」とぶっ込んでくるひとですから、まあそういうこともありましょう。２度と聴けない演奏、という意味ではほんとうに貴重なひと幕でありました。

　予め、直前にリリースされたアルバムをちゃんと聴いたうえでの鑑賞でしたが、ニューアルバムからは３曲しか演奏しない、というのが意外……でもないか。３年前も似たような感じだった。アルバムに囚われずヒット曲に縛られず、ファンをなるべく考慮しつつ、全体では知識がなくとも楽しめるくらいヴァラエティに富んでいる。立ったまんま鑑賞させることもないので、気軽にどっぷりと浸れる彼女のコンサートは、私にはとっても居心地がいいのです。

　しかも今回、チケットが届いた時からもしや、と思っていたのですが、ムチャクチャ席が良かった。前から５列目、しかも上手に近い通路寄り。演出によっては、ステージのライトが足許に当たるくらい近い。お陰で、みゆきさんの表情はもちろん、演奏中の衣装替えのタイミングも見逃さないほどでした。たぶん、あんないい席で鑑賞できる機会は今後ないでしょう。

　最後にもうちょっと。

　別のコンサートでもそうでしたが、中島みゆきのコンサートでは会場にお便り箱を設置し、観客から投書してもらって、その中から選んだものをお披露目するコーナーがあります。今回、そこで読み上げられたなかで面白かったのは、とある夫婦の会話。

　奥さんが、コンサートのチケットを買ったから一緒に行く？　とダンナに訊ねると、「アレとアレはやるのか」という質問が。アレとアレってなんだ、と訊き返すと、「犬と星」と答えた。奥さんは切り返して「あんたバカね、いまなら星か麦でしょ」……みゆきさんは嘆かれてましたが、実に解りやすい略だ。

　これだけはバラしてもいい気がするので申し上げますと、犬も星も出ませんが、麦は出ました。当たり前だ、あのあと初めてのコンサートのはずですから。