『プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪ 奇跡の魔法!』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン1入口に掲示されたポスター。

原作:東堂いづみ / 監督:土田豊 / 脚本:村山功 / オリジナルキャラクターデザイン:稲上晃川村敏江香川久、佐藤雅将、高橋晃、中谷友紀子、馬越嘉彦、宮本絵美子 / キャラクターデザイン&作画監督青山充 / CG監督:中西信棋、小林真理 / 美術監督:渡辺佳人 / 色彩設計:澤田豊二 / 撮影監督:高橋賢司 / 音楽:高木洋 / ミュージカルプロデュース&作詞:森雪之丞 / 作曲:小六禮次郎さかいゆう高取ヒデアキ / 振付:西田一生 / 声の出演:高橋李依堀江由衣齋藤彩夏新妻聖子山本耕史嶋村侑浅野真澄山村響沢城みゆき古城門志帆東山奈央中島愛潘めぐみ、北川里奈、戸松遥生天目仁美寿美菜子渕上舞、宮本佳那子、釘宮理恵福圓美里、田野アサミ、小清水亜美水樹奈々水沢史絵沖佳苗三瓶由布子樹元オリエ本名陽子、ゆかな、能登麻美子 / 配給:東映

2016年日本作品 / 上映時間:1時間10分

2016年3月19日日本公開

公式サイト : http://www.precure-allstars.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2016/4/8)



[粗筋]

 最近出会い、魔法つかいプリキュアとなった朝日奈みらい(高橋李依)とリコ(堀江由衣)は立派な魔法使いに、そして立派なプリキュアになることを目指して励んでいる。

 みらいの暮らす世界では、ふたりが魔法使いであることは秘密――のはずなのに、魔法で動けるようになったぬいぐるみのモフルン(齋藤彩夏)が甘い匂いにつられて人前に飛び出してしまい、出会った少女たちの目前で思わず魔法を使ってしまう。

 大慌てするふたりだったが、そのとき、更にとんでもないことが起きた。一同の前に謎の怪物が現れて、襲撃してきたのだ。怪物に心当たりがあるらしい少女たちは、みらいたちの前で変身し、怪物に立ち向かう――彼女たちもプリキュアだったのだ。

 彼女たち、プリンセスプリキュアと共に戦うが、やけに怪物はしぶとい。いよいよ窮したとき、どこからともなく歌声が聞こえてきた。突如弱まった怪物は、そのまま姿を消してしまう。

 まだプリキュアとして新米のみらいとリコは、キュアフローラこと春野はるか(嶋村侑)をはじめとするプリンセスプリキュアたちの戦いぶりに感激し、指導を願い出る。はるかたちは、ちょうど他のプリキュア達とお花見をする約束をしていたそうで、みらいとリコを誘った。

 そこへ、突如空に描かれた魔法陣から、ふたつの影が現れた。魔法使いソルシエール(新妻聖子)と、トラウーマ(山本耕史)と名乗る2人組は、ある魔法を完成させるために必要な材料として、伝説の戦士プリキュアの涙を求めているのだという。既に他のプリキュアは捕らえた、と言われ、みらいたちはふたたび変身して立ち向かうが、ソルシエールたちの力に圧倒され、あえなく捕らえられてしまう。

 気づいたとき、みらいたちは異世界に放り出されていた。ふたたび襲いかかる怪物と対峙しながら、他のプリキュア達の救出を試みるが――

[感想]

 率直に言って、オールスターズの前作『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』はかなり厳しい出来映えだった。あえてミュージカル、という趣向に望んだ意欲は評価出来るし、この前後に歌ネタを進化させ新たな境地へと赴きつつあったオリエンタルラジオを起用、その芸風を活かして作品に採り入れるセンスは優れていた、と思うが、内容的には不満が多かった。

 だが、このプリキュアシリーズは、TVシリーズやそれに沿った劇場版も含め、常に進歩し続けている。オールスターズで同じミュージカルの趣向を続ける、と決めた時点で、ある程度はその失敗を自覚したうえで、克服する工夫を怠らなかった。本篇にはその成果がしっかりと窺える。

 前作はミュージカル、というよりもミュージカル“風”の作りに過ぎなかった。いちおうはオリジナルの楽曲もあるが、ほとんどはTVシリーズの主題歌や、そこで披露されていたダンスをヒットパレードのように羅列して構成されており、華やかではあるがストーリーは大雑把だった。

 それに対し本篇は冒頭から明確にミュージカルを押し出してくる。登場するなり歌い踊る新米プリキュアふたり、その楽曲の流れを受けて、姿を見せた先代プリンセスプリキュアも歌って踊る。ここでの歌詞は正直内容には乏しいのだが、ミュージカルであること、そこで彼女たちがどういう世界において、どんな関係性であるのか、をおおむね窺わせるように組み立てられている。わざわざ“オールスターズ”と冠された映画を観に来る層は作品に対して多少の知識は持っている、しかもここでは最新シリーズと直前のシリーズに関わったキャラクターしかまだ登場していないので、説明は不要とも言えるのだが、おさらいのためにも必要な部分をおろそかにせず、そこからこの作品ならではの世界観に導いていく。手管として隙がない。

 ミュージカルパートのプロデュースと作詞に森雪之丞を起用したことで、ミュージカル映画としての質じたいもかなり高いが、ここであえて2Dでの作画を選択する意欲も個人的には賞賛したい。プリキュアシリーズで定番となったダンスシーンだが、本格的なのはTVシリーズエンディングでの3DCGによるものだけ、劇中では申し訳程度に披露される程度だった。本篇でも、いちばんカメラワークに凝ったクライマックスだけは3DCGを用いているが、それ以外は手書きによっている。特に冒頭、いきなり手書きの絵で踊りはじめるくだりは、長年観続けている者からすると、その心意気だけで痺れてしまう。このシリーズのスタッフは余所と比較して遙かに高いレベルの3DCG技術を備えているが、それでも通常の手書きによる映像との違和感を完全に抑えることは難しく、故に導入や動きの激しくないパートは3DCGを避けた、と思われるが、それにしても気合いの入った仕事ぶりには頭が下がる。

 例年、ゲストキャラに声優経験の乏しい女優や芸人を招くことは、業界内では定番でもアニメのファンからは不興を買いがちだが、その点でも本篇に文句をつけるひとは少ないはずだ。重要なキャラクターのソルシエールを演じる新妻聖子はミュージカルの世界でキャリアを積んだ役者であり、本篇で幾度か披露される歌声は、それぞれに歌手でもあるメインキャストを圧倒する勢いだ。その部下トラウーマを演じた山本耕史はテレビや映画での露出も多くミュージカルのイメージは乏しいものの、ソルシエールがいささかシリアスすぎて不足しかねなかった笑いの部分をきっちり演技でフォローしている。

 本篇で感心するのは、ドラマとしても整っているだけでなく、息抜き的な“笑い”、遊びの要素がちりばめられていることだ。旧作でもそうした工夫は少なくなかったが、しかし本篇ほど有効に機能していた例はあまり思い出せない。プリキュアたちが奮闘する傍ら、ちょっとお間抜けに活躍する妖精たちの姿や、悪役たちのお茶目な振る舞いをするのも効いているが、いちばんニヤリとさせられるのは、オールスターならではの趣向だ。異なるチームが一緒に戦う面白さ、というのは前々からこのシリーズの意義ではあったが、本篇での趣向は図抜けている。実のところ、あれこそこの“オールスターズ”シリーズにいちばん欲しかった描写ではなかろうか。

 ミュージカルという装いに“オールスターズ”らしさをしっかり詰め込みながらも、本篇はTVシリーズとも共通するテーマを織り込んである。豪華さに、胸に響くドラマと鮮やかなカタルシス、それらをミュージカルという要素が見事に彩った。あくまでも、“プリキュア”というシリーズを土台にしながらも、単品としても鑑賞に堪えるエンタテインメントであり、優秀なミュージカル映画でもある。これまでに製作されたプリキュア映画のなかでも、上位に入る傑作だと思う。

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