プログラム切り替え直後の月曜日は、私にとって午前十時の映画祭7を観に行く日。ゆえに、荷物を受け取ったあと、デスクトップの修理の報告書だけざっと目を通したら、それ以上中身を確認することもせずに自転車で日本橋まで馳せ参じたわけです……チケットだって確保済だし。
毎度のTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞した今コマの作品は、“三重苦”により外の世界を知ることなく成長していたヘレン・ケラーに、初めて教育を施した家庭教師アニー・サリヴァンの姿を描いた『奇跡の人』(東和初公開時配給)。
ヘレン・ケラーの半生を描いた、というわけではなく、基本的にサリヴァン先生がヘレンと邂逅し、彼女に言葉を初めて理解させるまで、の短い期間を題材としている。しかしこれが思いのほかものすごい迫力があります。目も見えず声も聴こえず、匂いや感触だけでしか周りを知らない子供に、如何にして言葉を理解させ、コミュニケーションを確立するか。もともと弱視で繰り返し施術を受け辛うじて視力を得たサリヴァン先生だからこそ可能な方法と強い意志でもって体当たりで臨みながらも、過去の経験から来る苦悩によりたびたび己の判断を疑ってしまうサリヴァン先生の感情を描くことで、そのプロセスに更なる重みを与えている。そうした迷宮のような心理状態があればこそ、あのクライマックスが素晴らしく感動的なものになっている。まるで観客に、ヘレンと同じような苦しみを疑似体験させ、そこから解き放つかのような見事な構成。あんまり安易なお涙頂戴物だったらやだなー、くらいのことを考えて観に行ったのですが、侮ってました。やっぱりこの映画祭に選ばれるだけあって、そんな軽薄な代物ではなかった。
これで午前十時の映画祭7も残すところあと3作。このあと何事もなければ今年もコンプリート出来そうです……何事もなければ、な。
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