『マーターズ(2015)』

マーターズ [DVD]

原題:“Martyrs” / 原作:パスカル・ロジエ『マーターズ』 / 監督:ケヴィン・ゴーツ&マイケル・ゴーツ / 脚本:マーク・L・スミス / 製作:ピーター・サフラン、アニエス・メントレ / 製作総指揮:モーガン・ホワイト、ダン・クリフトン / 共同製作:リシャール・グランピエール / 撮影監督:ショーン・オディ / プロダクション・デザイナー:アラン・ロデリック=ジョーンズ / 編集:ジェイク・ヨーク / 衣装:シェイラ・ヒューム / キャスティング:ローレン・ベース、ジョーダン・ベース / 音楽:エヴァン・ゴールドマン / 出演:トロイアン・ベリサリオ、ベイリー・ノーブル、ケイト・バートン、ケイトリン・カーマイケル、メリッサ・トレイシー、ロミー・ローズモント、トビー・ハス、エリーズ・コール、エヴァー・プリシュクルニック、ブレイク・ロビンス、テイラー・ジョンソン・スミス、レキシー・ディベンデット、アイヴァー・ブロガー / ワイルドバンチ/サフラン・カンパニー/ブラムハウス製作 / 配給&映像ソフト発売元:AMGエンタテインメント

2015年アメリカ作品 / 上映時間:1時間26分 / 日本語字幕:?

2016年1月23日日本公開 ※『未体験ゾーンの映画たち2016』の1篇として

2016年3月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2017/10/24)



[粗筋]

 ひとりの少女が警察によって保護された。リュシーと名乗るその少女は、監禁され、絶え間ない暴行を受け続けていたのだという。彼女の証言に基づき、警察は監禁されていたと思しき建物に踏み込むが、少女を苦しめた者たちは既に引き払ったあとだった。

 リュシーは施設に引き取られた。暴行により幻覚に悩まされ、人間を拒絶するようになっていった彼女の心を開いたのは、施設の仲間であるアンナだった。ふたりは友情を育み、いつも一緒にいることを誓うようになる。

 ――それから10年後。

 校外ののどかな一軒家を、突如として惨劇が襲った。朝食の席にひとりの女が踏み込み、ショットガンで住人を次々と射殺していったのである。動く物がないことを確かめると、女は電話をかけた。相手は、成長したアンナ(ベイリー・ノーブル)――ショットガンを手にしたリュシー(トロイアン・ベリサリオ)は、「あいつらを始末した」と親友に宣言したのである……。

[感想]

 オリジナルはフランスで製作されたホラー映画『マーターズ』である。さほど間隔を置かずにハリウッドが飛びつきリメイクを試みたのも理解できる、常識外れの傑作である――が、同時に、オリジナルを知っている者なら一様に、“リメイク”ということに不安を抱く類の作品でもある。

 実のところ、本篇のクオリティはそれほど悪くはない。かなり原作に忠実に作っており、むしろ誠実な出来映えと言っていい。にも拘らず、オリジナルと比較してかなり厳しい評価を受けているのも、しかし致し方のないところだろう。

 本篇の描写は良くも悪くも洗練されてしまっている。ハリウッド的な様式美で描かれたアクションや暴力の数々は映像として完成度は高いものの、その薄汚れたようなトーンから独自の美学を感じさせたオリジナルと比較すると妙に行儀良く、型に収まってしまったような印象を受ける。

 いちばん問題なのは、中盤以降の展開に加えられた脚色だ。オリジナルは一種、宗教的な領域にまで踏み込み、やもすると不可解な印象も強いので、リメイクにあたって娯楽やドラマとしての側面を強めたかった、という意図も察しはつく。しかし、オリジナルの発想を尊重しつつも施されたこの脚色が、結果としてその強烈な結末のインパクトを削いでしまっている。

 恐らく、この作品をリメイクする、となった場合、換骨奪胎が激しすぎれば批難を浴びるのは勿論だが、中途半端にアレンジを施しても反発を受ける。かといって、舞台や言語などを入れ換えただけでそのまんまの内容であれば、映画という何処にでも持っていって上演可能な表現手法なのにわざわざ作り直す意味はあったのか? という反応を呼ぶのも想像に難くない。オリジナルよりもより潤沢な予算を用意し撮影環境を整えられるハリウッドならでは、のリメイクを施したい、と考えた場合、恐らく本篇はかなり理想に近いかたちを実現はしている。ただ、この作品に必要なのは、オリジナルを超越するレベルの工夫だったように思う。本篇の仕上がりは大健闘と言えるが、残念ながらこのレベルでは、オリジナルに魅せられた人間を納得させるのは難しい。

 翻って、オリジナルを観ていない人なら、かなり愉しめるかも知れない。いくぶんテンポのぎこちない部分もあるが、予想の難しい展開と終盤の壮絶なやり取りは見応えがある。ただ、オリジナルを知っている者としては、本篇の肝となる主題と類を見ない着地の衝撃は、やはりオリジナルでこそ味わって欲しい、と思ってしまう。本篇の形では、この衝撃は恐らく充分には浸透しない。

 オリジナルに対する敬意や、仕事としての誠実ぶりを疑うような出来ではないだけに、実に悩ましい……。

関連作品:

マーターズ

フッテージ』/『パラノーマル・アクティビティ 呪いの印』/『インシディアス[序章]

ザ・リング』/『THE JUON―呪怨―』/『ダーク・ウォーター』/『シャッター』/『アイズ』/『REC:レック/ザ・クアランティン』/『ゲスト』/『モールス

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