『ジグソウ:ソウ・レガシー』

TOHOシネマズ西新井が入っているアリオ西新井外壁に掲示されたポスター。

原題:“Jigsaw” / 監督:ピーター・スピエリッグマイケル・スピエリッグ / 脚本:ジョシュ・ストールバーグ、ピーター・ゴールドフィンガー / 製作:グレッグ・ホフマン、オーレン・クールズ、マーク・バーグ / 製作総指揮:ダニエル・ジェイソン・ヘフナー、ピーター・ブロック、ジェイソン・コンスタンティンジェームズ・ワンリー・ワネル、ステイシー・テストロ / 撮影監督:ベン・ノット / プロダクション・デザイナー:アンソニー・カウリー / 編集:ケヴィン・グルタート / 衣装:スティーヴン・ライト / キャスティング:ステファニー・ゴリン / 音楽:チャーリー・クロウザー / 出演:マット・パスモア、カラム・キース・レニー、クレ・ベネット、ハンナ・エミリー・アンダーソン、マンデラ・ヴァン・ピープルズ、ポール・ブラウンスタイン、ブリタニー・アレン、ジョサイア・ブラック、トビン・ベル / ツイステッド・ピクチャーズ製作 / 配給:Asmik Ace

2017年アメリカ作品 / 上映時間:1時間32分 / 日本語字幕:松浦美奈 / R15+

2017年11月10日日本公開

公式サイト : http://jigsaw.asmik-ace.co.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2017/11/15)



[粗筋]

 その男、エドガー(ジョサイア・ブラック)は重度のソシオパスであり、複数の逮捕歴があった。だがその日、キース(クレ・ベネット)たちに追われるあいだのエドガーの様子はいつもと違っていた。必死の逃走劇のあと、ビルの屋上に駆け込んだエドガーは、どこからともなく入手した、銃器に似た装置を手にすると、「俺は死にたくない」と言いながらトリガーを引いた。警官隊の銃弾を浴びて病院送りとなったエドガーから、事の次第を確認するのは不可能だった。

 時を同じくして、異様な屍体が発見される。バケツのような梗塞部が嵌められた頭部は上半分が切断されており、その状態で遺体は陸橋から吊されていた。遺体の傷口には、USBメモリが埋め込まれており、記録されていた音声ファイルには、こんなメッセージが収録されていた。

「ふたたびゲームが始まった。無垢なる者への罪が贖われるまで、ゲームは終わらない。残りはあと4人――」

 音声を照合した捜査陣は、その結果に慄然とする。声紋は、ジョン・クレイマー(トビン・ベル)のものと一致した。だが、そんなことがあり得ないはずだった。何故なら、かつて“ジグソウ”と呼ばれた連続殺人犯であったジョンは、10年前に死んだはずなのだから。

 本当に、どこかで“ゲーム”は始まっているのか。だとしたら、“ジグソウ”は死んだはずのジョンなのか、それとも他の誰かなのか……?

[感想]

 2004年に発表された映画『SAW』のインパクトは未だ忘れがたい。例を見ない独自の美学で行動する殺人犯が用意した凶悪なゲーム。そのヒリヒリとした緊張感の先に待ち受ける予想外の衝撃。物語が残す絶望的な余韻に至るまで、およそ未曾有の映像体験だった。『SAW』以降、その影響を受けた“ソリッド・シチュエーション・スリラー”というジャンルが映画界には定着していくが、しかし『SAW』を凌駕したものはない、と言い切っていい。

 オリジナルを踏襲し、7年に亘って継続した続篇でさえもそれは同様だった。意思を尊重し、前作の設定や指摘された矛盾点を踏まえた上で、新たな衝撃、新たな驚きを追求する姿勢には頭の下がる思いだったが、インパクトで第1作を超えた、とはとても言えない。

 第1作を超えられない、という意味では、7年振りとなる復活作である本篇も同様と言わざるを得ない――ただ、既に7作に亘って様々な趣向に挑み、手詰まりに陥った感のあったシリーズの復活作としては、実に見事な完成度だ。

 急にアクション映画が始まったかのような冒頭こそ一瞬戸惑いを覚えるが、シリーズに馴染んだ者なら、追われるエドガーの行動にピンと来るものがあるはずだ。そして、その予感を裏づけるように、どこかで繰り広げられる“ゲーム”の描写が織り込まれていく。

 シリーズを追うごとに極端になっていき、趣向に淫するようになっていった“ゲーム”の内容については、2作目の時点から既に否定的見解もあったが、他方で被害者、或いは犯罪者たちを追い込み、苦痛におののかせる様々なアイディアに魅せられたファンも多数存在し、そういう意見に支えられてきたシリーズであることも確かだ。この復活作を手がけたスタッフはそのことを充分にわきまえ、本篇においても個性的な“ゲーム”が複数登場させている。

 だが真に瞠目すべきは、スリラーとしての魅力を甦らせた点だ。

 1作目で提示したスリラーとしての緊張感、クライマックスの衝撃の強さはそれこそ作品の象徴たるものであった。だからこそ続篇もその点はわきまえて、毎回ルールの範囲内で工夫を凝らし、観客に驚きを提供しようと試みてきた。しかし、毎年1本というハイペースも災いしたのか、毎回何かしら矛盾や不自然な部分を抱え込むようになり、続篇で無理矢理取りつくろうような状況が続いてしまった。それはそれで、スタッフとファンとの知恵比べ、根気比べめいたライブ感があったのも確かだが、どんどん取って付けたような印象ばかりが際立ってしまった感も否めない。

 本篇では、そうした“シリーズゆえの軛”が、うまく取り払われている。繊細な問題があるので詳しくは述べないが、ファンならば当然危惧せずにいられない、シリーズであるがゆえの“障害”を、本篇は巧みにクリアしている。そしてその攻略のアイディアそのものが、本篇を極めて優秀なスリラーに昇華しているのだから、唸らずにいられない。

 疑問はある――アイディアとしては優秀だが、それでもまだ長きにわたって語り継がれてきたシリーズに無理矢理繋いでいるために、新たな不自然さを生み出してしまったのも事実だ。もし本篇を端緒にシリーズをふたたび復活させたところで、遠からず前作の言い訳めいた設定に支配され、“ゲーム”の趣向ばかりが先鋭化した作品になってしまう怖れも孕んでいる。

 とは言い条、久しぶりにシリーズを復活させた作品としては、ほぼ完璧と言っていい出来映えではなかろうか。ゾンビ映画を『アンデッド』として、吸血鬼ものを『デイブレイカー』として、タイムトラベル物を『プリデスティネーション』として、ジャンルや趣向を緻密に研究したうえでフレッシュな傑作を発表してきた監督・スピエリッグ兄弟の手腕が遺憾なく発揮された、理想的な“遺産”である。

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関連作品:

SAW』/『SAW2』/『SAW3』/『SAW4』/『SAW5』/『SAW6』/『SAW ザ・ファイナル 3D

アンデッド』/『デイブレイカー』/『プリデスティネーション』/『ピラニア3D

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コメント

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