原作:東堂いづみ / 監督:大塚隆史 / 脚本:村山功 / 美術監督:田中里緑 / キャラクターデザイン:稲上晃、川村敏江、香川久 / 作画監督:青山充 / 美術デザイン:行信三 / 音楽:佐藤直紀、高梨康治 / 声の出演:沖佳苗、喜多村英梨、中川亜紀子、こおろぎさとみ、松野太紀、三瓶由布子、竹内順子、伊瀬茉莉也、永野愛、前田愛、仙台エリ、草尾毅、入野自由、朴路美、樹元オリエ、榎本温子、山口勝平、松来未祐、渕崎ゆり子、岡村明美、本名陽子、ゆかな、田中理恵、関智一、矢島晶子、池澤春菜、谷井あすか、子安武人、エド・はるみ / 配給:東映
2009年日本作品 / 上映時間:1時間11分
2009年3月20日日本公開
公式サイト : http://www.precure-allstars.com/
[粗筋]
ダンス・コンテストで、何故か一次審査を通過してしまったラブ(沖佳苗)・美希(喜多村英梨)・祈里(中川亜紀子)の3人は、決勝が開催される横浜を訪れる……が、さっそく降りる場所を間違えてしまった。
本当の会場を目指して移動している途中、突如現れた黒く巨大な影が3人に立ちはだかる。プリキュアに変身して応戦、すぐに相手は退いたが、去り際に「まだ力が足りない」と謎めいた言葉を残していった。タルト(松野太紀)は何かを感じたようで、シフォン(こおろぎさとみ)を預けて行ってしまったが、ほんの一瞬目を逸らした隙に、シフォンも姿を消してしまう。
同じ頃、のぞみ(三瓶由布子)たち6人も横浜を訪れていた。お目当ては、いま評判のタコカフェのたこ焼き。だが、ようやく食べられると思ったところへ、空からルルン(谷井あすか)と黒い影が落ちてきた。ホシイナーに変貌し襲撃してきた黒い影からルルンを守るため6人はプリキュアに変身するが、黒い影は彼女たちの必殺技を受けても倒れない。放たれた力を吸収して、飛び去ってしまった。
ルルンの話によれば、恐ろしい力を持つ怪物・フュージョン(子安武人)が目醒め、異世界の王国を襲っているのだという。ルルンたちは、それぞれのプリキュアたちに助けを求めることを決めたが、その会議の席をフュージョンに襲われ、散り散りになってしまったのだ。のぞみたちは他にプリキュアがいるということに驚きながらも、彼女たちを捜すことにする。
また別の場所でなぎさ(本名陽子)とほのか(ゆかな)、ひかり(田中理恵)の3人が、更に別のところで咲(樹元オリエ)と舞(榎本温子)の2人が、それぞれ事態を知って、他のプリキュアたちを捜し始めていた――
[感想]
2008年末から2009年正月にかけて公開された『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』には、それまでのシリーズに登場したプリキュアが一堂に会する短篇が併映されていた。サービスとしては面白いのだが、その時点で都合11人いたプリキュアを押しこむには、さすがに尺に無茶がある。上映後に、本篇についての告知があったときも、まあ1時間以上あれば多少は余裕が出るだろうが、2009年2月からスタートする新シリーズ『フレッシュプリキュア!』の3人も加わっては、まともに話を構成するのも難しい、というのが正直な感想だった。
実際に公開された作品を鑑賞してみると――やはり、14人は多すぎる。全員登場させるだけでも随分な尺を必要としているし、アクション・シーンの見せ場も充分に確保出来ていない。アクションのパターンに変化を加える余裕もないので、全体に似たような雰囲気になっているのも惜しまれる。前2作では何故かアクションで格好良さを示していたキュアレモネードも、インパクトを発揮できていなかった。
だが、当初危惧していたほど、どうしようもなくギチギチに押しこまれた、という印象は受けない。むしろ、この非常に制限された枠の中で、プリキュアたちの見せ場を確保しながらきちんとストーリーを構成していたことに感心した。悪役の背景や動機を掘り下げることこそしていないが、そのぶんをすべて女の子たちの行動を描写することに割き、一同が事態を把握、合流するまでの経緯にちょっとずつキャラクターの情報や活躍を盛り込んでいく。クライマックスではそこで描かれたことをちゃんと拾い上げて、盛り上がりに繋げているのだ。
如何せん、大人としては聞いていて恥ずかしくなるような台詞のオンパレードなのだが、しかし物語の構成がしっかりしているのでちゃんと重みは備わっているし感動も導く。もっと各個の活躍がふんだんに描かれていれば、という嫌味もあるが、爽快感も満足感も得られる、優秀な仕上がりだった。
ただ、本篇の出来映えそのものより、気になるのは最新シリーズ『フレッシュプリキュア!』の扱いである。
こうして全シリーズのヒロインたちが揃ってみると、新シリーズでの変化がかなり目につく。作画のトーンやデザインの違いについては、どうやら前シリーズまでの作画・美術スタッフが携わっているお陰である程度埋められているようだが、そのせいで却ってテレビで現在放送されているシリーズと従来とのセンスの違いを意識させてしまっている。変身や必殺技を使うシーンでの決め台詞のセンスさえも、こうして並べてみるとかなり違和感があるのだ。
通常、こうしたシリーズ作品の主人公たちを集めた企画ものでは、その時点で現役として活躍しているキャラクターが中心となり話を転がしていく。本篇でもいちおうそういう体裁を取っているが、全体を通してみると、主題を転がしまとめているのは『Yes!プリキュア5』のキュアドリームなのだ。
まだまだ話が始まったばかりの『フレッシュプリキュア!』の面々よりもキャラクターが固まっている、シリーズで初めて5人組のリーダー役を担っていて大勢の前で演説するのに合っていたこと、そして何より現時点でこの作品を観に来る子供たちはたぶん『フレッシュプリキュア!』よりも『Yes!プリキュア5』の面々のほうだろう、といった事情から、キュアドリームが本篇でもまとめ役のような位置に就くことになったのは想像に難くない。だがそのことを割り引いても、『フレッシュ〜』の面々の存在感の薄さ、据わりの悪さは気になるところだ。
……もっとも、そんなのはあくまですれた大人の見方に過ぎない。そうした差違すらも楽しんでいるような人、或いは純粋にシリーズに愛着のある人ならば、間違いなく満足出来る内容だろう。
エンドロールにおいて、事件のあと、本来の姿に戻った女の子たちの交流を描いているのもいい……ただ、まるで学校のひとクラスに所属する女の子を全員撮したスナップ、みたいな絵を眺めていると、改めて“プリキュア、増やしすぎ”という感想を抱かされてしまうのだけど。
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