『天才刑事・野呂盆六II 母という名の罠』

 名刑事・野呂盆六は免許取得したてで車を運転し旅に出たが、途中で立ち往生してしまう。助けを求めた車を運転していたのは、いまその名を轟かせつつある女優・朝霧早矢子。だがこのとき、早矢子の運転する車のトランクには、男の屍体が詰まっていた……

 昨年の復活第一弾はどういうわけか見逃していましたが、今回は直前に察知できたので鑑賞。復活以降そうなったのか、倒叙ものとは言えない作りになっていますが、しかし仕掛けに骨があり、見応え充分です。

 ただ、終盤で証拠に用いた要素のひとつはちと問題あり。今日日の科学捜査の方向性からすれば、もっと早い段階で調査して、それを根拠に捜査が出来たでしょう。そう思わせる要素を終盤で出してしまったせいで、TVドラマとしては珍しい力強い推理の味が少し弱まってしまった。

 とは言えこんなのは本当に些末な点で、全体の完成度は秀逸。ドラマにありがちな、脇役であるというだけで愚かな刑事というのは存在せず、極めて真っ当にその推理に疑問を呈しているし、繰り返されるどんでん返しと、説得力のある人間関係の構築は見事です。クライマックスはお約束のようにお涙頂戴の展開になっているのですが、人間関係がしっかりしているから、ここでも取って付けたような印象はない。

 あとはもうちょっとカメラワークや演出を丁寧に組み立てていれば個人的には文句なしだったんですが、しかしそーいうのはさすがに望みすぎでしょう。充分に面白かった。

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