原題:“森寃” / 英題:“Forest of Death” / 監督:ダニー・パン / 脚本:ダニー・パン、カブ・チェン / 製作:オキサイド・パン、ダニー・パン、アルヴィン・ラム、チュン・ホンタ / 製作総指揮:ダネイル・ラム、チウ・スーイン、ソン・デイ / 撮影監督:チューチャー・ナンティタンヤッダ / プロダクション・デザイナー:ヌータブット・ポンガーラム / 編集:カラン・パン / 衣装:ウィリアム・ファン / 視覚効果:ファット・フェイス・プロダクション Ltd. / SFXスーパーヴァィザー:チャス・チャウ / 音楽:パイノット・パームシス / 出演:スー・チー、イーキン・チェン、ラウ・シウミン、レイン・リー、トミー・ユン、ラム・スー、ローレンス・チョウ / マジック・ハート・フィルム製作 / DVD発売元:竹書房
2007年香港作品 / 上映時間:1時間37分 / 日本語字幕:?
2008年01月21日DVD日本盤発売 asin:B000XCY556
DVDにて初見(2008/04/13)
[粗筋]
方位磁石が利かず、入った者はしばしば脱出不能に陥り、自殺者が絶えない通称“神秘の森”。マスコミも興味本位で採り上げるこの森で、暴行殺人事件が発生、捜査のために入っていった刑事が心臓発作で死亡した。
捜査を引き継いだハ刑事(スー・チー)は、死亡した刑事が直前まで追っていたパトリック・ウォンが犯人であると確信するものの、いまひとつ物証に乏しい。そんな彼女が頼ったのは、植物学者のシューホイ(イーキン・チェン)であった。植物に意識があり、何らかのメッセージを発することが出来る、と訴える彼は学会でも異端扱いされ、研究費にも事欠く有様だったため、足がかりを得ようとハ刑事に協力を快諾した。
シューホイの恋人でテレビ局のレポーターをしているメイ(レイン・リー)は、“神秘の森”を巡る取材で局内での評価を高めつつあり、そこへシューホイが踏み込むという話を聞いて、実験現場に立ち会うことを望むが、近ごろ仕事を優先しすぎる彼女に対する不信もあって、シューホイは拒絶する。異様な雰囲気の中、行われた実験で、事態は思わぬ展開を見せる……
[感想]
『the EYE』によって国際的に認知され、世界的に活躍の場を拡げつつあるパン兄弟のうち、主に編集を手懸けていた弟ダニー・パンが単独で監督した作品である。
が――正直に言って、話が支離滅裂すぎる。超自然的な出来事に対する人々の反応が不自然なら、科学的な立場から云々と言っている男も直感頼りでまともに事実を検証できていない。
特に失笑したのは、女刑事とともに森の中に入っていった場面。その前に刑事が侵入したとき、樹に目印をつけて潜っていったのに迷ったから、長いロープを引っ張っていったのですが、手に握っていたロープが突如別の何かの力で引っ張られ持ち去られる、という事態に遭遇したのに、逃げ帰ったあと、まるっきり平静に戻っている。あの出来事は何だったんだ、とか、目にしたあまりに非現実的な出来事に対して、あれほど科学的云々言っていた男が何ら悩みも考察もしていないのだから不自然極まりない。
また、この森には字幕によれば“派出所”があって、ティンという人物が常駐しているのだが、初めての時はともかく、二回目以降、女刑事ははどうやってここに迷わず辿り着いているのか。そして“派出所”と呼んでいる場所に居座っているのに、あとの記述では、とある理由から退職しているという。ならどうして派出所を占拠することが許されているのか、ていうかそもそもそれなら“派出所”という字幕には何らかの間違いがあると思われるのだが、それが作品そのものの問題なのか、字幕のミスなのかも解らない。
人物についても、恋人同士のふたりに絆が感じられないとか、派出所の老人の知識がどこから得られているのか不明瞭、など様々な問題点が見いだせるが、とりわけこの話でスー・チーが演じている女刑事は、間違いなく無能の域にいると思う。いくら動揺したからと言って、誰がいるかも解らず、どんな効果があるかも解らない状況で発砲するなんて言語道断だし、「見た目の印象で判断しない」というならそもそも暴行殺人事件の犯人にしても慎重に捜査するだろうし、有効性の不明な――当人がどう言おうと科学的というよりはオカルト的な植物の意識を根拠にした捜査なんかするはずもない。
どこを切っても趣旨が一貫していないのでひたすら苛々させられるのだが、実のところ森にまつわる秘密のアイディアそのものは面白いと思う。ただ、それを説明する論理や、謎が明かされるに至る話運びが雑すぎてまったく説得力がない。何より、この秘密の内容からすると、舞台となる森が“死の森”になるというのは根本的にあり得ないのだ。
作中のどこにも芯が通っていないので、ただただふにゃふにゃな代物でした。初期の『レイン』や『the EYE』を除くと全般に微妙な代物が増えていた気はしていたが、これはあまりに程度が低すぎる。或いは単独での脚本作が少ない弟による作品だからかも知れないが、兄も製作に名前を連ねている以上言い訳は利かないだろう。正直、今後に不安さえ抱かせる仕上がりであった。パン兄弟のファンで出来不出来に拘わらず押さえたい人か、はじめからネタのつもりで観る人以外にはお薦めしない。
なお、スタッフ・キャストは主要な人物を除いて、本篇冒頭のアルファベットによる記述を私が読み取ったものです。如何せん正確な発音が解らないためかなり適当ですので、その点ご了承願います。中国系の人々はまだ誤差程度で収まっているでしょうが、撮影やプロダクション・デザインに名前を連ねているタイ系の名前はもーわけ解りませんって。
コメント