『天保異聞 妖奇士』説二十 不忍池子守唄

 竜導は久々に服装を整え、実家を訪れた。二十年以上を経て、母は竜導を養子として招き入れた男と勘違いしているらしいことに気づく。同じころ、往壓の名を養子から譲られた幼き武士志願・土方歳三を追っていた元閥たちは、狂斎と話し合う歳三を発見するが……

 ……あれ? 2回で終りですかこのエピソード。前回予感したほど竜導の過去やふたりの“往壓”について掘り下げをしておらず、盛り上がりにも乏しかったのが残念。歴史に実在する人物の過去をフィクションのなかで捏造することの困難とか、養子として受け入れられた男の自己存在証明に欠く、という悩みを掘り下げ話を膨らませる厄介さも承知していますが、全員がろくに絡まないうちに突然の妖怪対決で終了、というのはちょっとあっけなさ過ぎる。武器であれば何でもかんでも共鳴させてしまう、という特殊な妖夷を中心にした膨らませ方をしても良かったのではないでしょーか。

 本筋がそんな流れなので、個人的に目が行ってしまうのは宰蔵の扱いです。言動にますます竜導へのフラグが立ってます、という気配が濃くなっていることもそうですが、本編において数少ない年代の近い女性であるアトルとの関係がなんだか不思議なのです。あまり積極的には絡まないものの、接触すると微妙な剣呑さが漂いますが、他方ラストシーンにて会話の背後で描かれている姿は、なんだか普通の十代の女の子っぽい。次回予告から推測するに次回はまたはっちゃけたところを見せてくれるようで……スタッフは彼女をどうしたいんでしょう。

コメント

  1. ナナシ より:

    通りすがりに失礼します。
    宰蔵の人格形成に竜導は深く関わる人物だとは思いますが、彼女の感情は異性への恋や憧れやそれに類する感情ではないはずです。他の仲間と同じ。それ以上にはならないでしょうね。

  2. tuckf より:

    作品の主題としてはそれで問題ない、はずなんですが、宰蔵は絵の作り方といい行動原理といい、いわゆるラブコメのパターンを踏襲しているきらいがあるので、期待し……じゃなくて危ぶんでます。どうもこのシリーズは、主要登場人物たちにどういう結末を齎そうとしているのか、判然としない部分が未だに多いので。
    まあ、どちらにしても、ここまで付き合いましたので、最後まで見届ける気ではいますが。

タイトルとURLをコピーしました