『「超」怖い話 超−1 怪コレクション』
判型:文庫判 レーベル:竹書房文庫 版元:竹書房 発行:2006年10月6日 isbn:4812428718 本体価格:571円 |
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シリーズに新たな書き手を招き入れる目的のもと、インターネットのシステムを駆使して行われた作品公募企画“超−1”。主催者の予測を超える大盛況となったこの企画は、ふたりの新たな書き手候補とともに、埋もれさせるには惜しい多くの傑作を輩出した。一般読者も含めた公開審査の結果、高い評価を得た作品を、従来の『「超」怖い話』と同じ体裁にて書籍化したものが本書である。
編者である加藤氏が危惧している通り――率直に言って、ここ最近の『「超」怖い話』よりも、怪談愛好家にとっての満足度は高い仕上がりだ。やはり多くの書き手がそれぞれの精力を傾注して執筆した作品ばかりなだけあって、粒が揃っているのである。 また、書き手もシリーズをよく理解しているだけあって、恐らくはシリーズ本編と立て続けに読んでもさほど違和感を覚えない。オリジナルに添って、地の文にインタビュイーの言葉を台詞としてそのまま織りこむ手法を取っている作品も、きちんと視点人物を定めて小説風に仕立てた作品も、いずれもきちんと『「超」怖い話』のムードを再現している。今後の展開に期待を持たせてくれる出来だ。 共同執筆者に選出された高山大豆氏とロールシャッハ氏の作品は質・量ともに確かに充分な出来であるが、『電話』『すけべ』『クレジットカード』など類例のない、強烈なインパクトを誇る作品がそれ以外の書き手から出ていることにも着目したい。新たな執筆者を選ぶ、という見地では問題があっても、並べてみるとやはり「これ一本」の力強さは凄まじい。決まった執筆者が複数のエピソードを手懸けるシリーズ書籍と違う、公募作品集ならではの面白みと言えよう。 素人の作品集ではあるが、精選されただけあって文章面での不満もほとんど感じさせない。公募作品集などという色眼鏡など不要、純粋に怪談集として賞味するに足る、良質の1冊である。ちょっと厳しいことを言ってしまえば、ここしばらくの『「超」怖い話』よりも読み応えがあった。 前述の通り、主催者の想像を上回る傑作が集まったこのシリーズは、本書だけでは名作を収録しきれずに、今月末に続刊が発売されることと相成った。そちらも楽しみにすると同時に――編者ふたり体制への変更と同時に新たな書き手を得、新局面を迎えた『「超」怖い話』の今後にも注目したい。 |
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