『「超」怖い話Ε』
判型:文庫判 レーベル : 竹書房文庫 版元:竹書房 発行:2005年02月05日 isbn:481241976X 本体価格:552円 |
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竹書房に移行して以来順調に巻を重ね、2004年初頭には映画化、年末には勁文社時代の樋口明雄氏担当分を再編集して出版、今年に入ってもネットシネマにてドキュメンタリー形式の映像配信を開始するなど様々な展開を見せるシリーズの2005年第一弾。
ほぼ同時期に発売した漫画版『「超」怖い話 死霊の宴』の平山氏書き下ろしのルポを読んだときから危惧していたのだが、やはり肉体的・精神的に相当ギリギリだったのか、文章に荒れた印象が強い。その荒さが迫力に繋がった「片耳妓」「VF」のようなエピソードもあるが、現象と結末との関連性が掴みづらい「蛇杖」のようなものがあって、そのバランスの曖昧さが従来と比べて読みづらさにも繋がっているように感じた。 また、短期間に巻を重ねているせいもあるのだろう、更にパターン化が強まってきた印象を受ける。実話怪談本は採集者によって個性や特徴が出がちな傾向にあり、そもそもパターン化に陥りやすいもののはずなのだが、短期間に新刊を矢継ぎ早に繰りだしたことでその弊が色濃くなってきたように思う。あとがきでもうひとりの著者・加藤一氏が弁明するとおり、「似た話から相違を引き出し」ていくことも実話怪談のひとつの使命であるだろうけれど、執筆期間が短いせいで類話との差別化が充分になされていないのではちょっと困る。多くの取材からエピソードを精選し文章を研ぎ澄ませて一定数に纏めていく『新耳袋』に対し、類話であっても本数を重ねていくことで「怪談ジャンキー」を生み出すことを本格的に使命と認識したようにも捉えられるが、それで“怖さ”も“奇妙さ”も水増しされていく、或いは精製もせずに繰り出していくことで執筆者おふたりを疲弊させてしまうのでは本末転倒ではないだろうか。 「VF」というシャレにならないようなスポットの発掘、「指の日」「十年累」のような微妙にパターンを逸脱した奇妙な話など、相変わらず収穫も少なくなく現時点ではクオリティを保っているのだが、そろそろ本っ気で今後が心配される。お願いですから少しペース緩めてください。前書きに出版二十日足らず前の日付を記すようなおっかない真似は止めてください。 |
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