かりん 増血記(4)

かりん 増血記(4) 『かりん 増血記(4)』

甲斐 透・著/影崎由那・原作イラスト

判型:文庫判

レーベル : 富士見ミステリー文庫

版元:富士見書房

発行:平成16年12月15日

isbn:4829162805

本体価格:540円

商品ページ:[bk1amazon]

 吸血鬼一家に生まれながら吸血ではなく増血する能力が発達してしまった少女・真紅果林を巡るドタバタと恋模様を描いた影崎由那の同題漫画の、本編で語られていないエピソードを綴った小説シリーズの第四巻。

 果林の事情を理解し、秘密を守ることに協力してくれるようになった雨水健太。万年金欠の彼にお弁当を作って感謝の意を示す果林だが、お互い意識しあっているのになかなか関係は進展しない。ある日、果林はバイト帰りの電車のなかで痴漢に遭う。彼女を助けてくれたのは木島秀実という青年で、奇しくも果林の妹・杏樹の通う小学校で代用教員を務めていた。一目見るなりピンと来るものがあった秀実は、翌日果林のバイトするレストランで偶然再会するとさっそく遊園地へと誘う。話の成り行きで申し出を受けてしまった果林は健太の目を気にしたり杏樹に相談したりとおたつくが、果林と健太のはっきりしない態度にいささか業を煮やしていた杏樹は、敢えて姉と秀実とを接近させようとするが……

 原作漫画の出版ペースに合わせて好調に巻を重ねているシリーズである。どんどんミステリー文庫で発表される意味は薄くなっているが、それでも何らかの事件を盛り込んでくる姿勢が好もしい。

 物語の焦点はあくまで、ますます微妙になった果林と健太の関係を描くことにある。基本的に原作が本筋であるのでそちらに激しい影響を及ぼすような展開やキャラクターが登場しない、と解り切っているので、ふたりの関係を掻き乱す存在が現れても結局は元の木阿弥と知れており、その意味での意外性はどうやっても演出しようがない、という制約があるからだ。やはり基本的に、原作漫画の延長として読むべきものだろう。

 もうひとつのポイントは、原作ではいまいち活躍の場のない果林の家族にスポットライトを当てていることだ。本書では果林の妹・杏樹を中心に話を膨らませており、原作では十分に発揮されない彼女の個性や魅力を発揮させている。そういう意味でも、見事に役割を果たした職人仕事と言える作品。

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