『ラスト・サマー』

TOHOシネマズ日本橋にて行われた、出演女優&プロデューサーによるQ&Aの模様。

英題:“Last Summer” / 監督:キッティタット・タンシリキット、シッティシリ・モンコンシリ、サランユー・ジラーラック / 脚本:コンデート・ジャートゥランラッサミー / 製作:ルタイワン・ウォンシラサワット / 製作総指揮:ラッダーワン・ラッタナディロックチャイ / 撮影監督:サヨムプー・ムックディプローム / 美術:パワス・サワットチャイメート / 音響スーパーヴァイザー:リチャード・ホックス / 音楽:ウィチャヤー・ワッタナーサップ / 主題歌:シン・シンクーラー / 出演:ジラーユ・ラオーンマニー、スタッター・ウドムシン、ピンパカーン・プレークンナタム、エーカワット・エークアチャリヤー / 日本配給未定

2013年タイ作品 / 上映時間:1時間33分 / 日本語字幕:小泉真祐

第27回東京国際映画祭CROSSCUT ASIA上映作品

日本公開未定

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/10/28)



[粗筋]

 若手女優のジョーイ(ピンパカーン・プレークンナタム)がSNSに衝動的に書き込んだ“死にたい”という言葉。ジョーイの友人シン(ジラーユ・ラオーンマニー)は、彼女を助けたい一心で、海にある別荘にジョーイを誘う。

 だが、滞在していた別荘で、ジョーイは突如ショック症状を起こし、手を打つ暇もなく絶命してしまう。気晴らしにと与えたドラッグのせいだ、と思った一同は、ジョーイの屍体を処分しようと考えるが、そのさなかに不可解な出来事が相次ぎ、シンたちは追い込まれていく……。

[感想]

『ラストサマー』という映画は十代向けホラーのエポック・メイキング的作品だった。あり得るかも知れないシチュエーションから、この年代ならではの思慕や後悔、感情的な揺れを織り込み、どこから何が飛び出すか解らない壮絶な復讐劇に繋げる語り口は、その後のホラー映画に少なからず影響を与えている。基本的なアイディアがそっくり同じだった韓国映画REC(レック)』(ただ、はっきり言ってこれは駄作でした)のような作品もあったりするくらいで、同作のフォーマットはそれだけ完成度が高かったと言えよう。

 インターナショナル・タイトルがほとんど一緒の本篇も、着想はほとんど一緒と言っていい。ただ本篇の場合、そこに乗せているのが日本のホラー映画の影響を窺わせる超自然的な怪奇現象であり、基本的なプロットにちゃんと芯を通したうえで、ホラー表現を洗練させている点は評価出来る。

 ハリウッド産『ラストサマー』は事件からだいぶあとに復讐が始まるのに対し、本篇は事件直後から怪事が陸続として起きる、という違いはあるが、少なくともその成り行きにはおおむね納得がいく。それが呪いだとしたら性急すぎるだろ、とも思うが、悪意に対する報復、という意味では明快なのだ。

 怪異への移行もスムーズだが、そのうえで密度が高く、緩急も著しい。そうなったのには、本篇が3人の監督がリレーする形で製作されているのも奏功していると思われる。脚本自体は一貫して書き上げられているようだが、監督ごとにシチュエーションを違え視点人物を変える、という趣向にしたが故に、エピソードごとの密度が高まっているのだ。ストーリーが一貫しているので、監督が替わるごとに大きな変化が起きている、という印象もない一方で、それなりに“作風”というものが窺える作りにもなっているので、100分足らずの手頃な尺だが映画としての充実感もある。

 本篇の怪奇現象の描写には、はっきりと『女優霊』以降の日本産ホラー映画の影響が窺える。それもただの物真似ではなく、かなり見事に取り込んでいる。宗教観に日本と近いところがあり、受容しやすい環境であったことも奏功しているようだが、ホラー映画が継続に製作されているという映画事情も手伝っているのだろう。評価され、量産されているから、ある程度のクオリティが確保された。

 詰め込んでいるが故の強引さも見受けられる。序盤の人間関係が解りにくかったり、ちょこちょことタイ独特の常識らしきものが織り込まれており、そこでややつまずく可能性はあるが、ハリウッドのB級作品や本邦の低予算作品などよりも、よほどしっかりと構築されたホラーに仕上がっている。東京国際映画祭での上映から8ヶ月経った今も、日本において一般に紹介される機会が得られていないが、個人的にはちょっと勿体なく思う。

関連作品:

the EYE』/『theEYE2』/『theEYE3』/『リサイクル−死界−』/『心霊写真

キャリー』/『女優霊』/『REC(レック)

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