エイプリルフールにはちょうどいい映画だったかも知れない。

 神保町シアターで現在行っている企画上映は、“横溝正史と謎解き映画の悦楽”。私好みの作品が多数ラインナップされていたので、出来る限り足を運びたかったんですが、公私ともにバタバタが続いてその余裕がありませんでした。まだまだ作業が山積みながら、少し根を詰めた分リラックスしておきたいこの機会に、観ておきたかった奴だけでも押さえてこよう、と本日夕方の回を鑑賞してきました。

 作品は、夏樹静子の代表作を薬師丸ひろ子主演で映画化した角川映画の有名作のひとつ『Wの悲劇』(東映配給)。著名作ながら原作はまだ読んでおらず、折角の機会だから、と思い、あとで読むつもりで鑑賞前に原作の文庫版を購入してきました。

 ……これ、原作を先に読むべき内容でした。映画は原作を作中の演劇として採り上げ、物語はこの演劇に関わった新人女優を中心に繰り広げられています。結果、ミステリとしての興趣をあまり表現することなく、ヒロインのドラマと通底する物語として、原作の犯人やおおまかな展開を明かしてしまっているわけです。

 映画としては面白い。その試み自体が意欲的ですし、薬師丸ひろ子の演技力と魅力とにマッチして見応えがある。でも、本邦ミステリ史においても名前の挙がることが多い小説のクライマックスをこーいうかたちで先に知ってしまったのがなんか悔しい。演技という“嘘”の本質にも関わる内容は、偶然でしたがエイプリルフールに観るにはちょうどいい趣旨でしたし、映画としては本当に傑作なんですけど、なんとも複雑な気分。

 午前中にチケット確保のためいったん現地入りした際に原作を購入して、いちど帰宅した際にぱらぱらと読み始めてしまったんですが……もう割り切って、映画の中でどれだけ“忠実に”扱っていたか確認するためにすぐ読んでしまうか、記憶が薄れるのを待って改めて臨むか……どないしよ。

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