原題:“暗戦2 Running Out of Time2” / 監督:ジョニー・トー、ロー・ウィンチョン / アクション監督:ブルース・マン / 脚本:ヤウ・ナイホイ、オー・キンイー、ミルキーウェイ・クリエイティヴ・チーム / 製作:チャールズ・ヒョン / 撮影監督:チェン・シュウキョン / 美術:チウ・ソンポン / 編集:ロー・ウィンチョン、ヤウ・チーワイ / 衣装:ジェイ・チン / 音楽:レイモンド・ウォン / 出演:ラウ・チンワン、イーキン・チェン、ケリー・リン、ホイ・シウハン、ラム・シュー、ルビー・ウォン / 映像ソフト発売元:GROOVE PICTURES
2001年香港作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:三生圭代
2003年9月25日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2011/01/03)
[粗筋]
国際的大企業で、合併を前にして謎の盗難事件が3件連続して発生した。ホー警部(ラウ・チンワン)は内通者が存在する、と見て、先方の届け出を待たず盗聴を行うが、2週間に亘って動きが見られない。だがその一方で、ホーの元には謎の郵便物が届けられ、別の交渉人を相手に、ビルの屋上でコイントスに興じる謎の男(イーキン・チェン)が現れた。
そして遂に犯人が動き出した。企業の若きリーダー・テレサ(ケリー・リン)のもとに、2000万ドルを要求する電話がかかってきたのである。ホーは清掃員を装い企業のオフィスに乗り込み、協力を申し出るが、そこへ電話をかけてきた犯人は何と、ホーに替わるよう言ってきた。相手は前日、屋上でコイントスをしていた男であり、取引の場所は「ホー警部に訊けば解る」と人を食った返事を寄越す。ホーは通話履歴を確かめて愕然とした――犯人は、警察署の内部からかけてきたのだ。
すぐに出入口を封鎖するよう要請するが、ホー警部に対して妙な敵愾心を燃やすウォン副指揮官(ホイ・シウハン)は頼みを実行に移さなかった。やがて、テレサが2000万ドルを携え部下と共に警察署に乗り込んでくると、間もなく犯人から警察の回線に連絡が入る。男の要求は、それまでに増して人を食ったものだった――番号を記録する代わりに、2000万ドルすべてをコピーしろ、というのである……
[感想]
アンディ・ラウに賞を齎したサスペンスの続篇だが、アンディ・ラウは登場しない――あの推移を見れば当然ではあるが。その代わりに、アンディ・ラウ演じる知能犯と鎬を削った交渉人が再登場し、多くのモチーフを踏襲している。確かに作りとしては、続篇と謳うに相応しいものとなっている。
しかし、出来映えがいいか、と問われると、残念ながら首を傾げずにはいられない。
前作は、序盤から病に冒されていることが仄めかされたアンディ・ラウの、まさに命の瀬戸際で繰り出す罠や駆け引きの数々が、必然的に緊迫感を演出する役に立つと共に、その捨て身の行動に清々しさを感じさせる役割も果たしていたが、本篇のイーキン・チェン演じる犯人には、その緊迫感も悲愴感もない。感じられるのは愉快犯的な雰囲気だけで、重みが皆無だ。
犯人の仕掛ける罠は前作同様に大胆不敵だが、どうやって仕掛けたのかも、何故仕掛けたのかも不明なものが多く、迫力はあるがカタルシスに乏しい。直接的に仕掛けを描く必要はないが、肝心なものについてはその理由やトリックの種を仄めかすなどするべきではなかったか。物語の性質によっては、謎をそのまま放置しておくのも趣向としてあり得るだろうが、本篇のように駆け引きから生まれる絆や面白さを中心にするのなら、もう少し描くべきだっただろう。
ムードは踏襲しているし、俳優たちの演技は悪くない。ホー刑事とテレサのやり取りは極めて微温的なロマンス、といった風情でなかなか見応えがあるし、前作以上に間抜け度が増したウォン副指揮官、何故か違う役柄で登場したラム・シューもいい味を出している。前作のやり取りを再現したかのようなエンディングもなかなかに洒落ている。
そうして前作を愉しんだ観客を惹きつけようとする志は悪くないのだが、それならば犯人像や犯行手段をもっと複雑に、奥行きのあるものにして欲しかった。なまじきちんと続篇の体裁を整えているだけに、縮小再生産としか感じられない内容にしてしまったのが勿体ない。
関連作品:
『PTU』
『スリ』
『死の森』
コメント