- 『ナンバーズ―天才数学者の事件ファイル― シーズン1 Vol.4』(Paramount Pictures Japan)
- 第8話『えん罪の可能性』
首が千切れかかるほどの力で絞殺された女性。その犯行現場の状況は、ドン・エプス捜査官がかつて解決したはずの事件と酷似していた。ドンは己の下した結論に疑念を抱き、弟の数学者チャールズに、まったく別個の殺人犯が同じ痕跡を残す可能性があるのか、捜査陣が証拠を取り違えることがあり得るのか、と問いかける……
科学捜査がミスを犯さないのか、という根源的な問いかけにまつわるエピソード。謎解きよりも、たとえ理論上は数十億分の一の確率で絞り込めるとしても、扱っているのが人間である以上ミスはあり得る、という単純な真理に翻弄される捜査官と数学者の兄弟の懊悩を描いています。
ただ、確率と実際の運用上の問題については語られている通りでも、本篇の場合はいささか安易に転がりすぎたように思えます。証人の記憶の曖昧さはまだしも、この事件の犯人があそこまで見過ごされてしまうというのは、さすがに悪魔的な奇跡に等しいのでは。
しかし恐らく、このシリーズの設定がなければ余計に説得力を欠いていたかも知れない内容で、扱って然るべき大罪であったのは確かでしょう。
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- 第9話『スナイパーの心理』
市内で立て続けに発生する、無差別狙撃事件。ドン・エプス捜査官たちは懸命に犠牲者たちの共通点や、犯行現場に残された痕跡を探ろうとするが、朧気な犯人像さえ浮かんでこない。捜査に協力するチャールズは、犯人の心理を探るため、ドンに射撃の手解きをして欲しいと頼む……
確率論を扱っている、という意味では第8話に通じるとも言えるのですが、見事に方向性が変わっているのが面白い。前回で人間心理への無知や資料の乏しさが間違いを導くことを痛感したチャールズが、従来よりも真剣に理解に努めようとした、という捉え方もできます。そのわりに関わり方が安易なのが引っ掛かりますが。
狙撃犯を巡る解釈が二転、三転するのがこの話の見所、ではあるものの、この辺はドラマの尺だとあっさり語られてしまうため、ちょっとインパクト不足の印象です。犯人像も地味だし――ただ、ここではチャールズの危険すぎるほどお茶目な行動が際立っているせいもあるかも。
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