多くの治療法や医療器具の開発に携わり、ハウス医師でさえ敬意を示す老医学博士が、自らのラボで呼吸困難を起こして昏倒した。肺に水が溜まり、じわじわと呼吸を阻害されていく症状の原因が特定できないなか、老博士はエピネフリンを大量に投与するよう求める――つまり、死なせてくれ、というのだ。だが、ハウスは病を特定し、治療法が見つかるまで諦めるつもりはなかった……
インフォームド・コンセント、治療のために必要な情報をすべて患者に提供した上で、医療行為への同意を得ること。この邦題、原題をそのまんまカタカナにしただけなんですが、ある意味内容は真逆です。治療、というより検査の意味を完璧に知っている人間が拒絶し、「死なせてくれ」とまで言っているのを、昏睡状態にしてまで無理矢理検査するという。
医学に精通した者を診察する、という題材は前にもありましたが、今回は方向性が微妙に異なるうえ、相手も遥かに格上です。それだけにハウス医師もいささか持て余している格好ですが、更に助手たちの信条も絡めていくことで、病と闘う人々の、それぞれのスタンスの違いによる溝の大きさが窺い知れる話になっています。額面上、ハウス医師がキャメロン医師に患者の過去をちらつかせることで反抗心を起こさせ、結果的に治療を手伝わせるための方策に用いているだけ、のようにも見えますが。
普通に検査し治療を施すよりも厄介な戦いの締め括りは――やはり医療に携わる者だからこその誇りと苦しみとを感じさせる、実に重いものになっています。前話までの、ハウスの足についての問題は語られることもなくなり、もはや完全にシリーズ初期のテイストですが、その奥行きの深さは相変わらず。
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