レンタルDVD鑑賞日記その656「俺、映画館が再開したら、これの第4作を観るんだ……」の巻。

 鮮やかにフラグを立てつつ鑑賞したのは、ドニー・イェン主演×ウィルソン・イップ監督のコンビによる大ヒットシリーズ第3作『イップ・マン 継承』です。1959年、香港に拠点を構えた詠春拳の達人イップ・マンは、地上げを狙うチンピラの嫌がらせに悩まされる息子の学校を救うべく立ち上がるが――。
 先行2作はイップ・マンが外国人の格闘家と対決した、と実話から膨らませ、外圧に対して武人としていかに立ち向かうか、を20世紀前半の中国史と重ねて描いてましたが、今回は混乱する香港を舞台に、武人であることと同時に家庭人でもある彼の姿に焦点を当てている。指導者や流派の名を背負う達人としての道よりも、家族の安心や幸せのために地味な仕事を請け負い、汚辱も甘んじて受け入れる。旧作のような大きな使命感を描いてはいませんが、個人的には本本篇の彼の方がずっとかっこいいと思う。とてもいい。
 ドラマが丁寧に構築されているだけでなく、それがきちんとアクションと巧みに結びついて、その魅力を膨らませているのも素晴らしい。小学校や造船所で少数対多数の交戦を躍動感に満ちながらも非常に整理されたカメラワークでわかりやすく描く一方、肝心の場面は一対一の戦いでは細かな仕掛けを用いて細部の動きを抽出しつつ丁寧にパワフルに魅せる。ブルース・リーの系譜を受け継ぎ、かつアクションそのもののドラマ性も豊かで、着実に進化してる。
 ちなみに本篇にはかのマイク・タイソンが出演、クライマックスの手前でイップ・マンとの一騎打ちを繰り広げます。結果は……ご覧になって確認していただきたいところですが、ちょっと忖度が窺えたのに笑ってしまった。でもまあ仕方ないよなこの場合。彼の扱いには、シリーズ全体の流れを継承しながら、同じものにしたくなかった監督の意思も見えたので、私は評価します。

 きょうこれを観たのは、間もなくこのコンビによるシリーズの最終作となるはずの『イップ・マン 完結』が公開されるから。先行する本篇は観逃してしまいましたが、完結篇はしっかりと劇場で確かめたいので、予習のつもりで……なんですが、公開予定日は5月8日。急いで借りて観たものの、ちょっと伸びそうな情勢。
 まあ、先になったとしてもこんどは劇場で観ますけどね。質の高いアクションもまた、やっぱり大画面で観た方が満喫できますし。

コメント

  1. […] 原題:“葉問3” / 監督:ウィルソン・イップ  […]

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