最近、土曜日に出かけるかどうか、でずーっと迷ってる感があります。まだ人出は少ない、とは言い条、土日は増えるので、なんとなく抵抗が強い。出かけるのはいいとしても、4月・5月の休館の影響で、作品数が増えてしまったぶん、スケジュールにかなり偏りが生まれている。気になっている作品が変な時間に上映されてしまうので、変則的に予定を組もうとするのですが、だんだん億劫になってしまう。こと土曜日なんかは、夕方以降に出るよりも、朝一番のほうが人出も穏やかなので、行動しやすいに決まってる。あれこれと観る作品を物色してたら、ずっと宿題になってる作品よりも、私のそんな行動原理にしっくり来る時間帯にかかるほうを優先してしまいました。
というわけで、朝からバイクにて馳せ参じたのは、YEBISU GARDEN CINEMA。2カ月ほど前に来たばかりですが、それでも自宅からまあまあ距離があるし、と用心して、だいぶ余裕をもって出かけたのですが――すごくあっさりと着きました。自分で思ってたより道程が身体に染みついてたらしい。
鑑賞したのは、『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督のもう一つの代表作を2ヴァージョン連続で上映するうちの第1弾。船の上で生まれ、一度も陸に降りなかった男の人生を、名匠エンニオ・モリコーネの音楽で綴った傑作を監督自らの監修でデジタル修復した『海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版』(SYNCA配給)。トルナトーレ監督の作品がつまらなかった試しはないので、これもいつか観ておきたかった1本です。
……確かに代表作でありました。『ニュー・シネマ・バラダイス』にも通じる要素がふんだんに鏤められていますが、決して二番煎じではなく、ドラマとして、映画として優れた発想で彩られている。ずっと船の上で育ち陸を知らない男、という一種のロマンをたたえたモチーフが見事に開花する、嵐の夜のひと幕と、ジャズ・ピアニストとの一騎打ちはゾクゾクするくらい素晴らしい。個人的にトルナトーレ監督は、感動的なドラマの作り手に見せかけて、本質的にはミステリ映画の達人だと思っているのですが、今回も“伝説”となりつつある男の行方を謎として巧みに操り、観客を力強く牽引していく。映画的なスペクタクルと無常観、そこにちょっと気の利いたやり取りを添えた終幕が残す余韻も味わい深い。ジャンルを超越したピアニストの音楽を見事に表現したエンニオ・モリコーネのスコアも圧巻の、なるほど納得の傑作でした。
ちなみに50分近く尺の長いイタリア完全版は後日公開。国際版では省かれた、幼いピアニストと作業員とのやり取りなどが追加され、見せ場の演奏も分量が増しているらしい。とりあえずこんどの修復版だけで充分かな~、と思ってましたが、観てみたら想像以上にツボだったので、たぶんイタリア完全版も観ます。また恵比寿まで来るかは解らないけど。
鑑賞後は、前回同様に新宿から移転した北の大地というラーメン店にて昼食。前の店舗でよく食べていた味噌ラーメンを注文……するつもりでいましたが、あまりにも暑かったので、今回も夏季限定メニューをいただきました。
ところで本日訪れたYEBISU GARDEN CINEMA、かつていちど閉館の憂き目を見ましたが、経営していた日本ヘラルドが最終的にKADOKAWAに吸収され、こちらも系列となっていたユナイテッド・シネマのチェーンというかたちで復活を遂げた、という経緯がある。大手に列せられても、ちょっと通好みの作品を選んで上映するスタイルは継承してくれてるので、遠いのを押してときどき訪れてましたが、本日行ってみたら、玄関にこんなポスターが展示されてました。
……とりあえず“一時閉館”とは書いてありますが、世の中なにがあるか解らない、改装が終わったらどこにも影が見えなくなってる、なんてことにならないよう祈ります。
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