『パルプ・フィクション』

TOHOシネマズ錦糸町 楽天地、4階通路に掲示された案内ポスター。(※『午前十時の映画祭9』当時) パルプ・フィクション(初回生産限定スペシャル・パッケージ) [Blu-ray]

原題:“Pulp Fiction” / 原案:クエンティン・タランティーノロジャー・エイヴァリー / 監督&脚本:クエンティン・タランティーノ / 製作:ローレンス・ベンダー / 製作総指揮:ダニー・デヴィート、マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェア / 撮影監督:アンジェイ・セクラ / プロダクション・デザイナー:デイヴィッド・ワスコ / 編集:サリー・メンケ / 出演:ジョン・トラヴォルタユマ・サーマンサミュエル・L・ジャクソンブルース・ウィリスティム・ロスアマンダ・プラマークリストファー・ウォーケンハーヴェイ・カイテル、マリア・デ・メディロス、ヴィング・レイムス、フィル・ラマール、フランク・ホエーリー、バー・スティアーズ、アレクシス・アークエット、エリック・ストルツ、ロザンナ・アークエットクエンティン・タランティーノスティーヴ・ブシェミ / 初公開時配給:松竹富士 / 映像ソフト発売元:Warner Bros. Entertainment

1994年アメリカ作品 / 上映時間:2時間34分 / 日本語字幕:戸田奈津子 / PG12

1994年10月8日日本公開

午前十時の映画祭9(2018/04/13~2019/03/28開催)上映作品

2014年12月13日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

TOHOシネマズ錦糸町にて初見(2019/2/19)



[粗筋]

 ――パンプキン(ティム・ロス)と恋人ハニー・バニー(アマンダ・プラマー)はレストランで食事をしながら、襲うならどこがいちばん確実か、と議論をしている。銀行よりもこういうレストランの方が、保険の保証があるうえに、大勢の客の財布も狙える、とパンプキンは力説する。ハニー・バニーが同意すると、ふたりはさっそく拳銃を抜いて襲撃を始めた。

 ――ボスのマーセラス・ウォレス(ヴィング・レイムス)を裏切り、アタッシュケースを奪った男たちのもとへ向かいながら、ヴィンセント・ヴェガ(ジョン・トラヴォルタ)は昨晩の災難を語っていた。いちども会ったことのないマーセラスの妻・ミア(ユマ・サーマン)の面倒を見るように命じられ、思わぬ緊張を強いられたことを愚痴るヴィンセントを、相棒のジュールズ・ヴィンセント(サミュエル・L・ジャクソン)が軽くいなしているうちに、ふたりは目的地に到着した。ジュールズは聖書の一節を引用しながら、ヴィンセントとともに引き金を引くのだった。

 ――ボクサーのブッチ・クーリッジ(ブルース・ウィリス)は酒場で、マーセラスから八百長を持ちかけられる。既に盛りを過ぎている彼は、あと何試合出られるか、と問われ、提案を呑むしかなかった。しかしブッチは当日、危険な反乱を企てる――

[感想]

 いわゆるギャング映画に属するのだろうが、そんな大雑把な分類でいいのか? と首を傾げたくなる。しかし、そもそもどういう映画なのか、ひとくちには説明しがたい内容だ。

 描かれる出来事はいちおうひと繋ぎになっているが、随所で中心となる人物が変わり、時間も頻繁に前後している。一区切りがあったところで必ずしも話は終わっておらず、あとで別の時間の、別視点での出来事によってようやく意味が判明したり、場合によっては先に結末が示されてしまうこともあったりする。基本的に切り取られる会話やシチュエーションは雑談であったり、緊迫しつつもどこか間の抜けたものであったりするのだが、この編集の妙でテンポと牽引力を保ち、最後まで惹きつけられてしまう。

 非常に魅力的な語り口だが、しかし終わってみると、どういう物語なのか、何をテーマにしているのか、と問われると、表現に困ってしまう。ギャングという職業、生き様の滑稽さを切り取っているとも言えるが、それを戯画化することのほうが目的とも言える。はたまた、そうした明快な主題を求めたがる観客や評論家を翻弄することが狙いとも受け取れる。

 実際、本篇におけるクエンティン・タランティーノの語り口は、特に韜晦的だ。どのシークエンスでもピントのずれた会話や意表を突く展開が続き、観客を引っ張りつつも終始はぐらかし続ける。他の作品にもそうした傾向はあるが、私の観た範囲では、他の作品ならば曲がりなりにも全体を貫くストーリーが存在しているため、ここまで顕著な作りは本篇しかない。

 容赦のない暴力や、下品な描写も作品の美点として取り込んでしまう組み立ても特に際立っている。タランティーノという監督の魅力、個性、アクと呼ぶべきものも大胆に露出しており、代表作と呼ぶに相応しい1本である、と思う。

関連作品:

レザボア・ドッグス』/『キル・ビル Vol.1』/『キル・ビル Vol.2』/『シン・シティ』/『グラインドハウス』/『デス・プルーフ in グラインドハウス』/『イングロリアス・バスターズ』/『ジャンゴ 繋がれざる者

グリース』/『Be Cool/ビー・クール』/『テープ』/『ノー・グッド・シングス』/『ミスター・ガラス』/『評決』/『PLANET OF THE APES/猿の惑星』/『ディア・ハンター』/『フロム・ダスク・ティル・ドーン』/『デイ・オブ・ザ・デッド』/『フィールド・オブ・ドリームス』/『バタフライ・エフェクト』/『ディヴァイド』/『ファーゴ

素晴らしき哉、人生!』/『シェーン』/『リオ・ブラボー』/『サイコ(1960)』/『続・夕陽のガンマン』/『卒業』/『ワイルドバンチ』/『仁義なき戦い』/『悪魔のいけにえ(1974)』/『ゴッドファーザー PART II』/『キャリー(1976)』/『ロッキー』/『地獄の黙示録 劇場公開版<デジタルリマスター>』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ<ディレクターズ・カット>』/『許されざる者(1992)

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