プログラム切り替え直後の月曜日は午前十時の映画祭7を観に行く日――そして、これが最後です。最後の1本は最終日に合わせて観る、というのもちょっと考えたんですが、そういうことをすると不測の事態が発生した場合に観逃す危険も高くなるので、可能な以上は最後も自分のルールに従うことにしました。若干天気が不安でしたが、ギリギリ雨は降らないような雰囲気なので、自転車にてお出かけ。
最後もいつもどおりTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞しました。締め括りの1本は、日本が誇る巨匠のひとり成瀬巳喜男の最高傑作とも言われる、林芙美子の小説をもとに、身勝手な男に振り回される女の悲運を切々としたタッチで描き出した『浮雲』(東宝初公開時配給)。
作品の締め括りに“終”の文字ではなく、有名な一節が用いられているのが印象的なのですが、まさにあの言葉が本篇を象徴している。戦争を挟んだこの時代に、女であるがゆえの苦しみに翻弄される姿が息苦しくも切ない。いまの人間の目で見ると、こういう連中とはさっさと縁を切ったほうがいいんじゃないのか、と感じますが、利害を超えたところに感情があるからこそ振り回されてしまうのでしょう。一方で、軽薄にも思える男の側の行動にも多少なりとも誠意や優しさが窺えるだけに、そのままならなさが沁みてくる。何とも言いようのない物悲しさが迫ってくる、確かに凄い1本でした……映画祭のトリにしちゃちょっと余韻が重たい気はしましたけど。
ともあれ、これで無事に――というほど順調でもなく、途中けっこう危ない時期もありましたが、何とか今年も午前十時の映画祭7コンプリートです。都合5回目のコンプリート、デジタル化された第1回新・午前十時の映画祭(実質第4回)以降はいまのところ1本も欠かさず観ていることになる。一般の劇場でクラシックの名作が楽しめる数少ない好企画だと思うので、今後も続けてもらうためにも、4月から始まる“午前十時の映画祭8”もやっぱりコンプリートを目標に通い続けます。
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