『アンダーワールド ブラッド・ウォーズ』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン8入口に掲示されたポスター。 アンダーワールド ブラッド・ウォーズ [Blu-ray]

原題:“Underworld : Blood Wars” / 監督:アナ・フォースター / 原案:カイル・ウォード、コリー・グッドマン / 脚本:コリー・グッドマン / キャラクター原案:ケヴィン・グレヴィオー、レン・ワイズマン、ダニー・マクブライド / 製作:デヴィッド・ケーン、ゲイリー・ルチェッシ、トム・ローゼンバーグ、レン・ワイズマン、リチャード・S・ライト / 製作総指揮:アナ・フォースター、ジェームズ・マックエイド、スキップ・ウィリアムソン / 共同製作:デヴィッド・ミンコウスキー、ジャッキー・シェノー、マシュー・スティルマン / 撮影監督:カール・ウォルター・リンデンローブ / プロダクション・デザイナー:オンドレイ・ネクヴァシール / 編集:ピーター・アムンドソン / 衣装:ボヤナ・ニキトヴィック / 音楽:マイケル・ワンドマッチャー / 出演:ケイト・ベッキンセール、テオ・ジェームズ、トビアス・メンジーズ、ララ・パルヴァー、ジェームズ・フォークナー、チャールズ・ダンス / レイクショア・エンタテインメント製作 / 配給&映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment

2016年アメリカ作品 / 上映時間:1時間31分 / 日本語字幕:風間綾平 / R15+

2017年1月7日日本公開

2017年3月22日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-rayamazon|3D版Blu-rayamazon|4K ULTRA HD & Blu-rayamazon|ペンタロジー ブルーレイBOX:amazon|ペンタロジー スチールブックセット:amazon]

公式サイト : http://bd-dvd.sonypictures.jp/underworldbloodwars/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2017/1/10)



[粗筋]

 かつてはヴァンパイア族きっての処刑人であったセリーン(ケイト・ベッキンセール)は、いまや敵であったライカン族はもちろん、ヴァンパイア族からも追われる身となった。いつ果てるとも知れぬ旅を続ける中、またしてもライカン族の襲撃を受けたセリーンは、数少ない味方であるヴァンパイア族のデヴィット(テオ・ジェームズ)とともに撃退するが、デヴィッドは戦闘中に銃弾を浴び、セリーンは彼を治療するため隠れ家に退避する。

 かつてヴァンパイア族の奴隷にまで落ちぶれていたライカン族であったが、セリーンの叛乱によってヴァンパイア族が弱体化したことに加え、マリウス(トビアス・メンジーズ)というリーダーの元に結束し、いまや不死のヴァンパイア族が将来を悲観するまでにその勢力を拡大していた。最終決戦を計画するマリウスは、そのために決め手となる存在である、セリーンの娘イヴの姿を捜し求めていた。

 他方、ヴァンパイア族の中でも策動する者がいた。セリーンによって殺害された長老ヴィクターの愛人のひとりであり、若くして元老院に列したセミラ(ララ・パルヴァー)である。彼女はヴァンパイア族でも古参のトーマス(チャールズ・ダンス)に、ライカン族の脅威が迫っていることを説き、処刑人たちの戦闘能力を向上させるために、最強を誇ったセリーンに恩赦と避難場所を与え、戦士を教育させるべきだ、と訴え、自分に代わって長老たちに提言するように請う。セリーンと行動を共にするデヴィッドはトーマスの息子でもあり、トーマスはこの提案を飲んだ。長老のカシアス(ジェームズ・フォークナー)は渋い態度だったが、セミラが監視することを条件に承諾する。

 銃弾に仕掛けられていた追尾装置によってライカン族に居場所を突き止められていたセリーンとデヴィッドは、セミラが寄越した使者たちと共に、ヴァンパイア族が潜む屋敷に赴く。

 追われる身から一転、快く歓迎されたかに見えたセリーンであったが、しかし運命は、彼女に易々と安息の時をもたらさなかった――

[感想]

 現代社会の暗部に潜む魔の者たちの秘められた戦いをスタイリッシュに描いて好評を博した『アンダーワールド』シリーズの、およそ5年振りとなる第5作である――そして、恐らくだが、たぶんこれがラストだろう。

 続けて続けられなくもない終わり方だが、しかし様々な状況の変化、何より1作目から13年以上も経過したことを思えば、ここらで幕引きを図っていても不思議ではない。だが、率直に言って、そろそろ潮時、というのが本篇を観た正直な感想だった。

 ムードは維持している。チェコノルウェイでロケを行い、クラシックな建築や雪山に聳える館の冷たくも美しいヴィジュアルはシリーズの雰囲気に合っている。アクションも非現実的な派手さは留めている。

 だが如何せん、背景が少々入り組みすぎてしまい、それをまとめようとした結果、“我々の暮らす世界の裏で繰り広げられる激闘”というシチュエーションの面白さ、魅力は完全に損なわれてしまった。ヴァンパイアもライカンも、人間の目をあまり気に留めている印象はなく、むしろ大っぴらにも見えてしまう。

 また、シリーズを重ねていくにつれて異様に強く、そして存在が重くなっていったセリーンを、いささか持て余しているようにも見えるのが気になるところだ。前作までの蓄積を考えれば、セリーンはもっとべらぼうに強くても不思議ではないはずだが、妙に振り回されてしまっている不自然さなど、シリーズを追ってきた者ほど首を傾げるところではなかろうか。

 いちばんいけないのは、そうして積み重ねてきた設定をなるべく無駄にするまい、と配慮した結果なのかも知れないが、様々な策動が入り乱れた結果、個々の目的が不明瞭だったり、いい加減に見えてしまっている点だ。特にセミラの策略など、いったいどういう利益を考えて行動を選択していたのか、観終わってから考えると理解しがたい。ライカンの側にしても、計算高いのか、やっぱりただ血気盛んなだけなのか、判然としなくなってしまっている。複雑に入り乱れたわりには、それがあまりカタルシスに有効に働いていないのだ。

 前述したように、ヴィジュアルはシリーズでの統一感を感じさせるし、アクションの派手さも維持している。とは言い条、舞台がクラシックな佇まいの館ばかりなので、中世を舞台にしたファンタジー・アクションと似たような雰囲気になってしまっているし、シリーズ初期のようなアクションのアイディア、独創性にもさほど恵まれていないので、強いインパクトはない。

 雰囲気は留めているし、入り組んでいるがゆえに展開を完全に読ませはしないので、最後まで引っ張られてしまうが、それ故によけい、この終わり方は拍子抜け、という印象も禁じ得ない。そうなっても不思議はないが、アクションやヴィジュアルを維持することに執心するあまり、肝心のカタルシスを演出しきれなかった嫌味がある。

 タイトな戦闘服に身を包み、コートを翻すセリーンの姿は逞しくも美しく、その佇まいだけでも魅力的だが――しかし、それを13年も演じてきたことを思えば、当人もそろそろ潮時と考えているのではなかろうか。旧作から追い続けてきたファンは、最後になるかも知れない勇姿を目に焼き付けておくためにも、映画館に駆けつける価値はあると思うが……しかしそれだけに、もうちょっと工夫は出来なかったか、と惜しまれてならない。

関連作品:

アンダーワールド』/『アンダーワールド:エボリューション』/『アンダーワールド:ビギンズ』/『アンダーワールド 覚醒

2012』/『もうひとりのシェイクスピア

トータル・リコール』/『オール・ユー・ニード・イズ・キル』/『バンク・ジョブ』/『イミテーション・ゲーム エニグマと天才科学者の秘密

フロム・ダスク・ティル・ドーン』/『ヴァン・ヘルシング』/『デイ・ウォッチ』/『30デイズ・ナイト』/『デイブレイカー』/『ブラッディ・パーティ』/『ダーク・シャドウ』/『リンカーン/秘密の書

ワイルド・スピード MEGA MAX』/『バイオハザードV:リトリビューション』/『パラノーマル・アクティビティ 呪いの印』/『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

コメント

タイトルとURLをコピーしました