原題:“Wrath of the Titans” / 監督:ジョナサン・リーベスマン / キャラクター創造:ビヴァリー・クロス / 原案:グレッグ・バーランティ / 脚本:ダン・マゾー、デヴィッド・レスリー・ジョンソン / 製作:ベイジル・イヴァニク、ポリー・ジョンセン / 製作総指揮:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、カラム・マクドゥガル、ケヴィン・デ・ラ・ノイ、ルイ・レテリエ / 撮影監督:ベン・デイヴィス,B.S.C. / プロダクション・デザイナー:チャールズ・ウッド / 編集:マーティン・ウォルシュ,A.C.E. / 衣装:ジャニー・ティマイム / 視覚効果監修&セカンド・ユニット監督:ニック・デイヴィス / 特殊効果監修:ニール・コーボールド / 音楽:ハビエル・ナバレテ / 出演:サム・ワーシントン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、ダニー・ヒューストン、エドガー・ラミレス、ロザムンド・パイク、ビル・ナイ、トビー・ケベル、ジョン・ベル / サンダー・ロード・フィルム製作 / 配給:Warner Bros.
2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間39分 / 日本語字幕:太田直子
2012年4月21日日本公開
公式サイト : http://www.titan2movie.jp/
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2012/04/27)
[粗筋]
クラーケンとの壮絶な戦いから数年。全能の神ゼウス(リーアム・ニーソン)と人間とのあいだに生まれた半神ペルセウス(サム・ワーシントン)は、用意された神の座を退け、育ての親と同じ漁師となっていた。愛妻イオは早逝したが、忘れ形見である息子ヘレイオス(ジョン・ベル)を育て、穏やかな日々を送っている。
だがある日、突然に父ゼウスが訪ねてきた。あの戦い以来、神々に祈る者が減ったために、神々の力は衰えており、その影響でタルタロスの牢獄の封印が弱まっている。来たるべき冥府の魔物との戦いに力を貸して欲しい、という頼みであったが、もう2度と刀を握らない、息子にも握らせない、とイオに誓っていたペルセウスはこれを拒絶する。
ゼウスは弟の海神ポセイドン(ダニー・ヒューストン)、息子の軍神アレス(エドガー・ラミレス)とともに、封印の力を強めるべくタルタロスの牢獄がある冥府へと向かった。1度は対峙した兄ハデス(レイフ・ファインズ)も、この窮地には手を貸すものと考えていたゼウスであったが、意外なことに、我が子であるアレスが裏切った。ゼウスを拘束すると、その力をゼウスたちの父であり、巨神たちの荒ぶる王・クロノスに吸収させる。
瀕死のポセイドンからペルセウスが父の危機を知らされた直後、彼らの村を冥府の魔物・キメラが襲撃した。どうにかキメラを撃退したペルセウスは、意を決して立ち上がる。赴いたのは、女王アンドロメダ(ロザムンド・パイク)が領民たちと共に魔物を塞き止めている最前線。そこにいる、ペルセウス同様に神を父に持つアゲノール(トビー・ケベル)の力を借りるためである――
[感想]
ギリシア神話には疎い私だが、それでも本篇がオーソドックスな流れを踏襲していないことは察しがつく。神話の登場人物をベースに独自のストーリーを構築することはなにも悪くないのだが、困るのはそうして組み立てたストーリーに説得力が備わっていないことだ。
祈りが力になる神々は、信仰する人間が減ったことでその力を失い、結果として魔物の跳梁を許してしまう、という発想、その周辺の描写は単純明快ながらドラマを形作っていて、決して悪くはない。ただ、それ以外のストーリー展開にあまり脈絡が感じられないのは致命的だ。確かに各所で次のパートへと繋ぐ描写は盛り込まれているが、何故そういうことになるのか、少々無理矢理すぎないか、という部分があまりに多い。いくら神話とは言い条、細かな背景を疎かにしていては、不自然さが際立ってしまう。
更に本篇は、神である父と、人間とのあいだに生まれた子供、という奇妙な関係性、複数の兄弟間に巻き起こる愛憎、といったもうひとつの主題を仄めかしているが、そのあたりを会話などで掘り下げる工夫に乏しく、こちらも効果を上げていない。そのせいで、終盤に至ってある人物が見せる変節に説得力が備わらず、それと対比する形で情感を膨らませることも可能だった出来事が非常に軽くカタルシスを損なってしまっている。狙いは悪くないのだが、表情、台詞の力が足りていない。辛うじて伝わるものがあるのは、主要キャストが名優揃いだからであって、率直に言えばスタッフの力不足と思われる。
しかし、見所が無いわけではない。前作は折しも『アバター』の大ヒットを契機に3D映画量産の気運が高まっていたころに公開されたため、無理矢理3D化されてしまったが、もともと想定していなかった加工なので、映像の迫力と3Dの効果が調和していない部分が多々あった。しかし本篇は、きちんと3Dの効果が実感出来る映像になっている。鑑賞後にプログラムを読んで、撮影が2Dで行われていた、と知って驚いたくらいに本篇の立体感は自然だ。いささか煌びやかすぎた色調を抑え加減にしたことで、臨場感も迫力も格段に増している。
そして、何だかんだ言っても、クライマックスにおける巨神との戦いのインパクトは凄まじい。山よりも巨大な神が、灼熱のマグマをまとった腕を振り回して暴れるさまは映画館、しかも3Dで味わうだけの価値はある――実のところ、戦いぶりや倒し方にはもっとひねりやドラマの味付けが必要だった、とは思うのだが、夾雑物がないぶん、巨神のスケールに素直に圧倒されやすい、という見方もあろう。
折角の迷宮というモチーフが充分に活かされていなかったり、設定がろくに役だっていないキャラクターが多かったり、とあちこち問題点だらけなので、どうにもお薦めはしづらいのだが、神話を題材にしたファンタジー・アドヴェンチャーの空気はかなり表現されており、3D映画ならではの、非現実的な世界に浸る、という楽しみ方には向いている。
関連作品:
『タイタンの戦い』
『黒の怨』
『決闘の大地で』
『ナイロビの蜂』
『バトルシップ』
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