『3年B組金八先生第8期』第16回

 いよいよ都立高校願書提出の日。金八先生が心構えを説いているさなか、詩織が突然倒れてしまった。保健室で目醒めた詩織は、金八先生の背後に女の人の姿を見るが、どうも金八先生にも保険医の本田先生にも見えていないらしい。帰宅した詩織に母は、神社を営むこの家の女はそういうものがしばしば見えるようになる、と指摘する。はじめは見えないものから指図されることに嫌気を覚えていた詩織だが、そんな彼女の行動でみなみたちが助かったことで、状況は一変する……

 うわ、また意外な方向に行ったな。しかし、霊能力の類が突然目醒める、というのは実は世間的にはあり得る出来事だったりします。それすらもちゃんと踏まえようとしている姿勢はけっこう買います。

 ただ、まがりなりにも神社に生まれ育って、そういう世界に無縁で過ごしていたわけではないはずの少女が、いざ見えたからって異世界のものとあんな無防備な接し方をするのはちょっと不自然。今回は全般に意識して漫画チックに演出しているきらいがありましたが、その辺はもう少し配慮しても良かったのでは。

 途中からの流れも、この年頃には正しい推移なのですが、ちょっと性急すぎるきらいがある。本当はこういう展開をするまでにはもう少し時間が要ります。金八先生というフォーマットでこの要素を伏線として盛り込むのはやや無茶があるかも知れませんが、この神社の女には霊感があって云々、とかしばしば不自然な言動を覗かせる、ぐらいの伏線はあってもいいでしょう。決着の段になってその背景を見せていけばいいのですから……って、そういう構成の仕方もあまり金八先生らしくないのだが。するとやっぱり、意識的に1話にまとめて、演出自体をやや漫画的にすることで違和感を和らげるというのは正しいのか。難しいところです。

 だが、だがしかし、それを受けて恒例の授業場面は圧巻。ちゃんとこれまでに提示したエピソードや人物描写を踏まえて、生徒達全員を更に深いところまで導こうとする。半年を通じての主題に酔いすぎていたきらいのある最近のシリーズよりも授業を重視してきたことが見事に活きています。

 そして、詩織にまつわる出来事と金八先生の身辺で起きた出来事とを絡めるラストシーンも素晴らしい。予想はつきますが、この組み合わせの妙で充分にカタルシスを演出できています。オカルトに傾きすぎて一部の視聴者が逃げかねないところでさり気なくユーモアを付け添えるのもいい。

 相変わらず地味、地味なのにどんどん私の中での評価は高まっております。最初の頃はうーん、うーん、と呟きながら観ていたのに、いつの間にか楽しみになっているのですよ。なんか毎回このパターンですが、このシリーズほどそれが快いことはなかった。総評を下すのは最終回まで控えたいところですが、申し訳ないけれど現時点では、小山内美江子氏が抜けたのは正解だったように思います。うん。

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