金銭を目的とするシロサギ、心と躰とを食い物にするアカサギ、そしてその二種類の詐欺師だけから搾取するクロサギ。家族が騙された怨みからクロサギとなった男・黒崎。彼が新たに狙うのは、ダミーの企業を興して、資金繰りに苦しむ中小企業から騙し取る女・新川波江。その新川の被害者となった工場主・松村の家に居候していた大学生・吉川氷柱は、偶然に黒崎と出会い、法への信頼と法の限界とのあいだで動揺する……
テーマも素材もいい、役者も悪くないのだけど作っているスタッフからアイドルドラマという侮りが抜けていないのが見え見えです。ムードに似合わず、それによって効果を上げるわけでもない音楽をやたらと鳴らし、凝り方は間違っていないオープニングの背景は主演の山下による「アイドルがちょっと大人になりました」という月並みな歌。……うーん、とどうも微妙な反応をせざるを得ません。
素材はいいし、画面作りや俳優の演技という点ではなかなか見応えがあります。山下智久はいかにも現代の若者の延長という造型で黒崎を演じており、個人的にはもう少し工夫が欲しかったところですが、オーソドックスなぶん癖がなくて馴染みやすい。今回の場合はゲストとして犠牲となる詐欺師・新川を杉田かおるが好演していて、駆け引きの見応えはありました。ドラマとしても一筋縄では行かない見せ場があって、それなりに楽しめる。
ただ――どうも詐欺の基本計画以外の作りが緩い。詐欺を追う神志名という刑事は、新川の事務所から出て来たばかりの黒崎を騙されかかっている人間だと早合点してアドヴァイスをするのですが、事務所のある建物の中で堂々と話すという不用心さだし、氷柱の密告を受けて現場に急行するとき、わざわざサイレンを鳴らして駆けつけるという迂闊さ。狙いは悪くないのですけれど、どうも骨組みが脆弱な印象です。問題は詐欺計画部分以外の脚本かな。
しかし個人的には、堀北真希が従来よりちょっと大人びたイメージのキャラクターを好演しているというだけでひたすら嬉しかったりする。……そんなことぁ知ってますかそうですか。
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