映画観賞後、移動の状況から綴っていく。
六本木から新宿へは大江戸線一本。そう解っていたからこそ敢えて六本木で観てからイベントに向かう、といういつもと違う道程を踏んだのですが、計算違いだったのは六本木ヒルズから大江戸線の入口までの距離と、この雨の量。
調べればメトロハットの地下道経由で大江戸線の改札まで移動する経路もあったのかも知れませんが、正直六本木の地下道の作りは理解しがたく、そもそも六本木ヒルズ地上の案内では、歩道に出て移動する経路しか示していない。悩むより先に歩道に降りていたのですが、次第に激しくなる雨に加え異様な蒸し暑さで、雨で濡れているのか汗で濡れているのかもうさっぱり解らない状況に。大江戸線名物の長い長い階段を下りきりどうにかホームにたどり着くも、省エネなのか空調の効きが弱めで汗はなかなか引かず、到着した電車に乗ってようやく一息。汗を拭き吹き、昨晩の時点で急遽参加表明した誰かさんから届いた「雨が酷いから帰るー」というメールへの返信や、mixi用の簡単な映画感想の準備をする。
降りてみて初めて解ったのは、大江戸線からロフト・プラスワンのある歌舞伎町方面への移動が非常に厄介であること。JR新宿駅の西口と南口へのルートしかなく、東口に向かうためにはひたすら外の道を進まなければならない――電車に乗っているあいだに激しくなったこの雨の中を。
いつもなら現地に到着したあとはそのまま集合場所に指定されている公園で時間を潰すところなのですが、この雨の中ぼさっと突っ立っていたら風邪を引きかねない。近くのファーストフード店に入り、飲物とポテトのみ購入して三十分ほど時間を潰しました。そのあいだに、映画感想を仕上げて送信。
覚悟を決めて集合場所へ赴く。ちかごろは毎回ご一緒しているN氏とコンビニで合流し、更にK氏・F氏と公園で落ち合う頃には更に雨脚は強まりほとんど嵐の一歩手前。そんななか、狭い公園に百人以上詰めかけているので、傘を差しても充分な面積が確保出来ず、傘の下に別の人の傘の端っこがくぐって雨が垂れてきて結局どこかしら濡れてしまう。テントぐらい用意せえよー、とぼやきながら待つこと更に十数分……この雨のせいで先のイベントの参加者が捌けるのに時間がかかり、店内の清掃にも手間取っていたらしい。どこもかしこも似たような状況かよおい。立て続けの災難に、いーかげんこっちが
やっとこ入場、席を確保してようやく人心地がついた。この雨で誰かさんのようにリタイヤする人が多いかも、と予想していたのですが、第十夜刊行の直後ということもあってか、或いはこんな企画に参加するだけあってみんな多少マゾっ気があるのか、陽気を思えば異常なくらいの人の入り。注文が届くのも遅い……のはいつものことか。いいの解ってるから。
さて、ようやく本番である。第一部はこの夏発売されるPSP用ソフト『実話怪談新耳袋 一ノ章 前編』に収録されているスペシャルドラマ撮影中にカメラに写りこんだ奇妙な映像を、監督や出演者の証言を交えて検証する。当初映像特典として収録することも検討されたそうですが、なにせ説明がないと普通にスタッフの手違いと思われかねないような代物なのでカットしたのだとか。しかし、問題の映像の前後に撮影された絵や、関係者の説明を聞けば聞くほど確かに異様な映像なのです。ついでに最近木原氏が入手した奇妙な写真を三枚ほど愛でて第一部終了。
第二部は、しばらく前にあの“山の牧場”に突撃取材を刊行、一部始終を収めた映像で会場を大いに沸かせた(っていうか笑わせた)『映画秘宝』スタッフ再びの挑戦に関する報告。今度このお馬鹿な人々が向かったのは、『新耳袋 第六夜』に登場しこの夏劇場版も公開されるエピソードの舞台となった“幽霊マンション”。『映画秘宝』十周年記念企画として、劇場公開に合わせて実物のレポートを、という目論見らしい。
まずはその模様を撮影・編集したビデオが流された。といっても怪奇現象が映っていたわけではなく、内容的にはいみじくも『映画秘宝』編集部自らが語ったとおり、『テキサス・チェーンソー』などのアメリカ風ホラーの導入部分だけという趣。野郎四人が真夜中に車を走らせて問題の土地を探す様子を撮影しているのはかなり間抜けです。しかも、道を間違っていた(のちに木原氏が記憶違いをして間違ったルートを指示していたことが判明)ためにうろうろした挙句、刑事に不審尋問されるという一幕まで映っている。
あれやこれやでどうにか問題の幽霊マンションに到着。外観を見たのはこれが初めてですが――本当に、異様。周囲に高い建物が一切ないところに八階建てというのも妙ですが、その立派な建物にいまや入居者はほとんどなく、見た目は廃墟も同然になっている。飛び降りの頻発する上階の吹きぬけに面した廊下にはネットが張られ、あたりには正体不明の自転車や廃材がころがっている。何も知らないまま連れてこられた漫画家の方が、何も起こらずともしまいに腰を抜かしてしまったのも宜なるかな、という薄気味の悪さ。
ビデオはここで終わっていて、そのあとの出来事の詳細については今月二十一日発売の『映画秘宝』を参照のこと――と実に巧い宣伝をつけたところで第二部は幕。前の“山の牧場”突撃取材ほどのインパクトはありませんでしたが、やっぱり始終笑いの絶えないレポートでした……それでいいのか、新耳袋ライブなのに。
さすがにこれでは拙い、と木原・中山両氏も自覚されていたようで、最後の第三部は第十夜執筆中から終了後に取材されたエピソード数話を披露。全体に小粒でしたが、さすがに新耳のおふたりだけあって、早くも優秀な話が集まっている。特に、ある映画撮影現場での出来事は、ありがちながらも目撃者の人数が尋常ではなく、インパクトは強烈。
そして最後に、完結した『新耳袋』と、第三夜刊行以後に始まり八年間続いたイベントの総括。依然、来年以降の予定は立っていないとのことですが、既に集まりはじめたなかに「これは残しておかなければ」と思わせるようなエピソードもあるので、何らかの形で新しい本を出すことは間違いなさそうな情勢とのこと。そして、新作の発表形態如何に拘わらず、このトークイベントは以降も継続されるとのことです。予測どおりではありますが、それでも嬉しい。
会場から出てみれば、雨はほぼ上がり道も渇きはじめて、雲もあちこち切れている。雨の中の強行軍も手伝って、疲労困憊で帰途に就いたのでした。
コメント
追い討ちをかけるようですが、メトロハットから大江戸線へは当然行けます。日比谷線への通路の右手前、レストラン街を抜けていく道もあるし、日比谷線改札前からも案内出てますが――わかりにくいですかね?;
やー、たぶんそうじゃないかとは思ったんですが、実はメトロハットの外にある案内が、外しか差してないのです。エスカレーターの手前の分岐に、日比谷線と大江戸線とで思いっ切り反対方向を示してます。
そもそも六本木ヒルズの案内図も内部の構造も不親切すぎて、外を歩く方がまだましだ、と思ったのもあるのですが……さすがにあの雨の中ではきつかった……
六本木ヒルズはいっぺん解体して、構成をやり直して欲しいです、本気で。