ついこのあいだFROLIC A HOLICやったばかりの気がしますが、東京03単独公演はこの時期のスタートが基本。今回もしっかり初日、5月10日のチケットを確保して駆けつけました。
今回の小屋は日本青年館ホール。実は、初めて生で東京03のライブを観たのがここ。いきなりFROLIC A HOLICだったのだ。それ以前にライブビューイングで『自己泥酔』を観ていましたか、いきなりのFAHは、いまにして思うと贅沢でした。
そのときどういうルートを辿ったのかもよく覚えておらず、千駄ヶ谷駅からなんとなく歩いて移動。なにせ国立競技場が新しくなって景色も変わっており、いまいち要領が解りません。だいぶ遠回りしつつ、どうやら開場時間に到着。グッズは肝心のパンフレットとサントラが発売されておらず、通販のほうでまとめて発注済みのため、今回は手ぶらでもいいのです……万一のためにあれこれ携えてはきているが。
19時より開演です。なにせ初日なので、これから鑑賞される方が間違って迷い込んだ場合を考え、ポスター写真のあと多めに改行を挟んでから感想を記します。それにしても、なんか私が03の単独公演のチケットを買うと、左右どっちかの端寄りになりがちなのはなんでだ。去年も左寄りだったぞ。
日本青年館ホール入口前に掲示された『第25回東京03単独公演「寄り添って割食って」』ポスター。
恒例、大竹元マネジャー(現・ASH&D代表取締役。マジで。)によるピアノ曲のイントロから本篇へ。最初のネタは《処世術》。嘘も方便、という奴ですが、しかしこのヒネリ方は角田さんが憐れでいい。ちゃんと仕掛けてひっくり返す、まさに東京03の本領とも言うべきネタ。
オープニング曲《なんで仲良く出来るのか?》は、私の記憶する限り初めての角田さん弾き語りの映像をそのまんま使う趣向。相変わらずの躍動するテロップで、いつもの感じも出してますが、正直なところ、角田さんのギターが上達してるのにちょっと引きました。コロナ禍でのオンライン公演のときから指摘されてはいましたが、まだ上手くなってるの。
2本目のネタは《アドリブ》。よくある結婚式のメッセージ動画編集のひと幕を03流にイジります。こちらも布石が効いたネタですが、同時に芝居の細やかさも光る1本です。いかにも素人っぽい撮影の様子が、ストーリー上で素に戻った瞬間を引き立てる。ただひとつ、撮り直しのくだりで飯塚さんが放つ台詞はふた通りに取れてしまって、そのあとの展開で反応をばらけさせてるのが気になりました。私はどっちの意味か悩んだのです。
幕間のVTRは、前作同様に連鎖する作りになっている。1本目では、何らかの理由で記憶喪失になった豊本さんによるほぼひとり芝居。笑えるけど既にヤバさが滲んでます。
3本目のネタは《ここだけの話》。03にはありがちな、上司から部下への説教、かと思いきや急カーブでヒネリが来ます。これだけでなかなかにヤバさが薫ってくるのに、更に足してくる。途中でなんとなーく予感はしてきましたが、案の定、このネタが今回の講演の縦軸になってくる。ただそれゆえに、このネタの終盤の記憶が曖昧だったりする。
幕間のVTR2本目は、1本目のアナザーサイドにして、本篇《ここだけの話》の続き。細かい擽りはあるものの、ここは続くエピソードへの振りの傾向が強い。個人的には、撮影場所が第21回東京03単独公演「人間味風」幕間映像とおんなじ場所で撮ってる、と不意に気づいてしまったのがハイライト。あれ、あんな田圃のど真ん中だったのか……。
4本目は《ノンキャリア》。刑事ドラマにありそうなシチュエーションから展開していきます。導入まではありそうですが、そこからはアホで、しかし03らしい趣向。そう感じることはあっても現実には言わないと思う、けどそこをリアルに思わせ、きっちり笑いに変えていく。でもさっさと報告せえよ。
VTR3本目は、久々に幕間のみとなったニイルセンの手書きアニメーションネタ《最悪な状況》。しかしこれも先行するVTRから話が繋がっている。察しはついてましたが、どんどん豊本さんのヤバさが加速していきます。
5本目のネタは《ブラックアウト》。東京03定番とも言える飲み屋を舞台にした内容、ですが、この切り口は意外となかった。珍しい酩酊演技からのツイスト、そして搦め手から最後に横っ面を引っぱたくみたいな締め方が痺れます。衝撃の度合いは違いますが、傑作のネタ《小芝居》を彷彿とさせる味わいもあって、個人的には今回、特にお気に入りのネタです。
VTR4本目は歌ネタ、タイトルも先行する本ネタと同じく《ブラックアウト》。本ネタから話を連繋しつつ、幕間VTR連作のクライマックスへの振りになってる。ここで初登場するあの人物、豊本さんの実嫁でも面白かったと思う……駄目か。本当に怖くなりそう。
6本目の本ネタは《嫌いな上司》。いつになく、やたらと濃いキャラのついた芝居ですが、意味が明かされた瞬間、思わず「なるほど」と呟いてしまった。腑に落ちる感覚を味わわせておいて、そのあとはそれでひたすら転がし続ける。使い方次第では定番にも昇華できそうな設定なんですが、本人は厭がるかも知れぬ。
最後の幕間映像は、連続するドラマの締め括りであり、ステージ上での最後のネタへの導入です。なので、特に書くことはありません。強いて言うなら、あの人意外と頑丈だな。
そして大トリは幕間映像全篇の締めともなる《反省しない男》。ここまで積み上げてきた豊本さんのヤバい人物像が見事に炸裂していて小気味良く笑え、かつちょっと怖い。現実にいてもこの“命題”はなかなか厄介ですが、それを打開するアイディアは現実として捉えても有効だと思う。いつも通りなら幕間映像と同様、ここの台本はオークラが担当しているはずですが、まさにオークラらしい仕掛けの巧さ。全篇、自身のアイディアで彩ったFROLIC A HOLIC feat. Creepy Nutsやったばかりなのにこの入り組みようは笑いつつも敬服します……でも、念のために言っておくと、ここで取り沙汰されてる罪、たぶん勝手にチャラには出来ないぞ。1件はともかく、もうひとつの方はたぶんだいぶアウト。
エンディング曲は《寄り添って割を食った》、公演とほぼおんなじタイトルから解るとおり、歌詞はほぼ本篇のおさらいでした。でも、最後まで色々と考察を強いないのは、エンディングとして正解。
以上、今回もほぼ2時間できっちり終了。前作同様に、豊本さんのヤバいキャラクターが際立っている印象でしたが、本ネタとの絡め方が絶妙で、各々単独で成立しつつも全体に統一感を出し、なおかつ、飯塚さん角田さんもしっかり見せ場があり、個性が立っている。個別のネタなら過去にもより優秀なものがありますが、ライブ全体の構成、という意味ではいちばん完成度が高いかも。
劇場を出たあと、こんどはちゃんとスマホで地図を確認し、正しいルートを辿って駅に戻る……正しいルートでもまあまあ距離がある。日本青年館ホール、いい劇場だと思うけど、どの駅からも微妙に離れてるのは何とかならんもんか。常小屋ではないので、次に訪れるのはしばらく先でしょうが、バイクが駐められる場所を見つけておくべきかな……。
今回、特にお気に入りのネタがあったうえに、全体の構成に優れつつもまだブラッシュアップしてきそうな箇所がけっこう見えたので、前回はネット配信にて楽しんだ追加公演、もういっかい生で観る方を選ぶかも。配信の方は前回、業者側のコンディションが悪くて、あんまり楽しめなかった、という事情もあるし。
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