今週は動きすぎなので、今日は自宅で大人しく作業してる、という選択肢もありましたが、きのう封切りの映画に、どうあっても観逃したくない作品がある。若干しんどいのをおして、出かけてきました。
行き先はTOHOシネマズ日比谷。日本橋とかでもかかってるんですが、上映開始時間がちと厳しい。日比谷なら9時半からなので、まあギリギリ許容範囲です。今週末から来週頭にかけて雨の予報が出ているので、移動はきょうも電車。
鑑賞したのは、『イン・ザ・ベッドルーム』、『リトル・チルドレン』で高い評価を受けたトッド・フィールド監督16年振りの最新作、ケイト・ブランシェットを主演に招き、完璧主義者で傲慢な天才音楽家の精神的危機をサスペンス・ミステリー的な手捌きで描き出した『TAR/ター』(GAGA配給)。映画をいっぱい観るようになって以来、いちばん好きな女性俳優がケイト・ブランシェットなので、キャリア最高の演技、と賞賛される本篇を観逃すわけにはいかない。
噂通りケイト・ブランシェットが凄かった。のっけからの長広舌で本物の音楽家としか思えない人物像を確立し、合理的で完璧な音楽観とともにその傲慢さを随所に滲ませる。それが、思いがけない事態からじわじわと心の均衡を失っていくさまを、抑制と緩急の鮮やかすぎる演技で体現していく。
それにしても本篇の描写はなかなかに厄介です。起きている事件、変化を基本、ダイレクトに描くことはしない。助手はメールでどういう報告を受けたのか、ターを取り巻く状況がどのように変化しているのか。観客に対して示されるのはその片鱗や、結果としての変化のみなので、事態を読み解くのに手間取ります。しかも、のちの展開を読み解くと、けっこう重要な描写が序盤からちりばめられているのが解り、もう1回頭から確認したくなる。そしてたぶん、それだけの価値のある奥行きが本篇にはある。
ジェンダー問題やSNSの扱い、スキャンダルの展開など、現代にしばしばクローズアップされるテーマを無数にちりばめながら、それらに安易な答を出すこともしていない。フィクションでありながら圧倒的なリアリティで、時代の一断面を切り取った強烈な1作。アカデミー賞で無冠に終わったことが不思議に思える……けどそれだけ今年は混戦だったのよね。
映画館の入っている東京ミッドタウン日比谷を出ると、まず日比谷シャンテに向かい、地下にある日比谷しまね館にて、最近我が家のお気に入りであるざら茶を購入。それから、ちょっと思案してから、東京駅方面に向かって徒歩で移動、京橋付近にあるど・みそ本店に赴いて昼食……久々に食べたくなっていたし、雨も小降りだったので、思い切って歩いていってしまった。土曜日に人出の多いところから若干外れたところなので空いてるかも、という期待に反し、ちょっとだけ店の外で待つことになりましたが、ここまで歩くのに使った時間を考えると、もう他の店に行くよりここで食べる方がいい。
食後、東京駅から改札を通り、自宅の最寄り駅へ。予報よりも雨が穏やかなのは幸いでした……でも、想定外に歩いてしまったから、だいぶヘロヘロです……。
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