TOHOシネマズ日本橋のエレベーター前に掲示された、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』上映当時の午前十時の映画祭13案内ポスター。
原題:“The Lost World : Jurassic Park” / 原作:マイクル・クライトン / 監督:スティーヴン・スピルバーグ / 脚本:デヴィッド・コープ / 製作:コリン・ウィルソン、ジェラルド・R・モーレン / 製作総指揮:キャスリーン・ケネディ / 撮影監督:ヤヌス・カミンスキー / プロダクション・デザイナー:リック・カーター / 編集:マイケル・カーン / SFX:インダストリアル・ライト&マジック / 特殊効果:スタン・ウィンストン / キャスティング:ジャネット・ハーシェンソン、ジェーン・ジェンキンス / 音楽:ジョン・ウィリアムズ / 出演:ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、アーリス・ハワード、リチャード・アッテンボロー、リチャード・シフ、ヴィンス・ヴォーン、ヴァネッサ・リー・チェスター、ピート・ポスルスウェイト、ピーター・ストーメア、トーマス・F・ダフィ、ハーヴェイ・ジェイソン、トーマス・ロサレス・Jr.、ロビン・サックス、シト・ストリットメーター / アンブリン・エンタテインメント製作 / 配給:UIP Japan / 映像ソフト日本最新盤発売元:NBC Universal Entertainment
1997年アメリカ作品 / 上映時間:2時間9分 / 日本語字幕:菊池浩司
1997年7月12日日本公開
午前十時の映画祭13(2023/04/07~2024/03/28開催)上映作品
2022年11月21日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video|Blu-ray Disc|4K ULTRA HD + Blu-ray Disc|4K ULTRA HD + Blu-ray Disc Amazon.co.jp限定セット]
NETFLIX作品ページ : https://www.netflix.com/title/60003016
TOHOシネマズ日本橋にて初見(2023/4/15)
[粗筋]
イスラ・ヌブラル島で起きた事件から4年が経った。
カオス理論学者イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)はかつてのインジェン社の経営者ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)に呼ばれ、彼の屋敷へと赴く。インジェン社は先の事件によって経営危機に陥り、ハモンドはその責任を問われ、経営権を甥のピーター・ルドロー(アーリス・ハワード)に奪われていた。
ハモンドは事件の教訓から、恐竜に人間が関与するべきではない、という立場に転じていたが、せっかく蘇らせた恐竜たちの生態を記録する必要がある、と考えていた。事件ののちイスラ・ヌブラル島は閉鎖されたが、同じ海域にあって、恐竜の研究と繁殖のために使用されていたイスラ・ソルナ島――通称《サイトB》はまだ上陸可能だった。《サイトB》は管理が放棄されて以来、恐竜たちの天国となっている。ハモンドはそこに調査隊を派遣する、という。
その一員に、という依頼をイアンははねつけるが、ハモンドが列挙した他の隊員のメンバーに驚かされる。そのなかに、イアンの恋人であり、古生物学者であるサラ・ハーディング(ジュリアン・ムーア)が名前を連ねていたのだ。しかも、先に話を持ちかけられたサラは欣喜雀躍し、本隊に先駆けて既に《サイトB》にひとりで上陸しているという。調査のためではなく、サラを救出するために、イアンは調査隊に加わった。
だが同じ頃、ルドローはインジェン社の経営を再建すべく、《ジュラシック・パーク》計画のための研究と設備の再利用を目論んでいた。そのために組織された捕獲隊が、イアンたちからわずかに遅れて、《サイトB》を目指していた――
[感想]
遺伝子工学によって現代に蘇った恐竜が人間を襲う、という、化学の発展を背景とした“あり得るかも知れない恐怖”を映像にし、アトラクション的体験を生み出す映画に仕立てた前作は、世界中で大ヒットを遂げた。続篇もので自らメガフォンを取ることが珍しいスティーヴン・スピルバーグだが、本篇に限って続けざまに監督したのは、その設定に魅力を感じたから、というのもあるだろうが、恐竜という、人類がまだじかに目撃したことのない脅威の表現を更に掘り下げることに関心があったからではなかろうか。
実際、脚本家のデヴィッド・コープは第1作で寄せられた意見を考慮しながら執筆に臨んだという。如実な例としては、前作では「恐竜が出てくるのが遅い」という意見があったため、本篇では露骨なほど恐竜の初めて登場するタイミングが早められている。他にも、そのつもりで意識して鑑賞すると、前作で不満に思いそうなポイントが細かに改善されたり、違った見せ方をしているのを感じる。少なくともそういう意味で、クリエイター側にとって撮る意義のある続篇だったのだろう。
前作は、当初は強固な檻に囲われた恐竜たちを観察する、というスタンスから始まったため、危機を認識するまでにタイムラグが生じてしまったが、そういう意味でも本篇は対照的だ。なにせ主人公が、前作において散々な目に遭い、性格まで変わってしまったカオス理論学者であるから、存在自体が“恐竜の跋扈する島”の危険性を証している。視点人物が強い危機意識を持っているので、はじめから危険性を観客に実感させ、序盤から緊張感を盛りあげる。
そもそも、本篇は檻の外から眺めるのではなく、はじめから内部に向かっている。主人公マルコムの恋人は恐竜の生態を実地に観察する、という得がたい機会のために乗り込み、身に染みてその危険を知っているマルコムは彼女を連れ戻すために渋々上陸する。だが島には、ある目的を持って、恐竜を捕獲するべく特殊部隊まで送りこまれている。それぞれが異なる理由で行動を起こし、別々の刺激を与えるので、恐竜たちは前作よりも更に複雑に動き、サスペンスとしての変化がより豊かになっている。
恐怖が迫っていく表現にも様々な工夫が見られ、本篇が前作の趣向を掘り下げレベルアップさせる目的で制作されているのは窺える。だが惜しむらくは、あくまでもそれらが前作で完成された設定、世界観から逸脱せずに構築されているため、制作者たちの意欲ほどに新鮮な衝撃を与えられていない。それゆえに物足りなさ、二番煎じ、という否定的な印象を導く傾向にあるのではなかろうか。
しかし、前作で提示した世界観を重視し、更に進化させた技術を駆使して、巨大生物の脅威をより力強く描き出そうとした意欲は肯定されるべきだし、実際に成功もしている。また、前作ではテクノロジーの生み出す歪み、先進技術であればこその競争の醜さ、といった要素を盛り込んでいた一方で、今回は主人公に昇格したマルコムの及び腰ながら勇敢な行動と並行して、特殊部隊メンバーの“男臭い”ドラマにクローズアップして、大きく趣を違えている部分もある。本当の危険に直面するまで恐竜に対する侮りがちらつく特殊部隊の面々が次第に危機感を増していくさまもスリルに拍車をかけるが、中では数少ない、最後まで冷静な態度を貫くローランド・テンポ(ピート・ポスルスウェイト)の独特な渋さ、格好良さも見所のひとつだ。
しかも本篇は更に、クライマックスにもうひとつ大きな見せ場を用意している。この設定、この展開を敷衍していけば当然とも言えるこのひと幕のインパクトは強い――とはいえ、多くの要素を絞り込んでしまう状況ゆえにいまひとつ危機感が乏しいのが勿体ない。とりわけ、起こるアクシデントのひとつひとつが、とある続篇映画に似通ってしまったのは痛恨だったのではなかろうか。作品名はあえて伏せるが、奇しくも劇場公開の時期が(北米でも日本でも)ほとんど同時期だったので、リアルタイムで観たひとほど残念に感じたかも知れない。
だが、映画の申し子とも言えるスピルバーグ監督があえて着手した続篇ものだけあって、きちんとそれだけの意義を備えた作りになっているのは確かだ。映像技術は遥かに進み、本篇以上の描写がいくらでも可能になっていることは、他でもないこのシリーズの伝統を受け継ぐ《ジュラシック・ワールド》シリーズが如実に証明しているが、だからこそ、様々な挑戦を試みた本篇の価値は認められるべきだ、と思う。
関連作品:
『ジュラシック・パーク』/『ジュラシック・ワールド』
『激突!』/『JAWS/ジョーズ』/『未知との遭遇 ファイナル・カット版』/『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』/『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』/『プライベート・ライアン』/『A. I. [Artificial Intelligence]』/『マイノリティ・リポート』/『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』/『ターミナル』/『宇宙戦争』/『ミュンヘン』/『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』/『戦火の馬』/『リンカーン』/『ブリッジ・オブ・スパイ』/『ウエスト・サイド・ストーリー(2021)』/『フェイブルマンズ』/『天使と悪魔』
『ライフ・アクアティック』/『マップ・オブ・ザ・ワールド』/『ボディガード』/『ドメスティック・フィアー』/『ロミオ+ジュリエット』/『ファーゴ(1996)』/『ザ・ファン』/『コラテラル』/『ゴーン・ガール』
『ダイナソー・プロジェクト』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』
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