『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 【最終章】』

アップリンク・ファクトリー、施設脇に掲示されたポスター。 戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章 [DVD]

監督、脚本、撮影、VFX&出演:白石晃士 / 製作総指揮:原啓二觔 / プロデューサー:三上真弘、田坂公章 / 出演:宇野祥平、大迫茂生、久保山智夏 / 制作プロダクション:ビデオプランニング / 製作&映像ソフト発売:ニューセレクト / 配給:「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」上映委員会

2015年日本作品 / 上映時間:1時間29分

2015年4月11日最速上映

2015年5月2日映像ソフト発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://albatros-film.com/movie/kowasugisaishu/

アップリンク・ファクトリーにて初見(2015/04/11) ※緊急舞台挨拶付き最速上映



[粗筋]

『コワすぎ!』シリーズのディレクター工藤仁(大迫茂生)とAD市川実穂(久保山智夏)が異世界に消えてから1年近い時が過ぎた。

 新宿上空に現れた巨大な影――カメラマンの田代正嗣(白石晃士)は“巨神兵”と呼んでいる――に、最初のうちこそ騒然としていた世間も、今ではその姿に慣れてしまい、日常として受け入れてしまっている。

 そんな中、『コワすぎ!』の収益や提供映像で一定の収入を得ることが出来た田代は、ネット中継が可能なカメラを導入し、工藤たちを連れ戻すための奮闘をリアルタイムで観客に届ける試みを始めようとしていた。

 だが、その最初の放送で、いきなり事態は動く。自身の部屋で中継を始めた矢先に、見ず知らずの男が侵入してきたのだ。

 江野(宇野祥平)と名乗る男の言葉は異様だった。彼はパラレルワールドからやって来た人間であり、別世界の田代に対し大きな恩義があるため、工藤たちを連れ戻す手助けをしに来た、と言う。そのためには田代自身が、江野の指示する通りのミッションを成し遂げる必要があるらしい。

 あからさまに不審な内容だったが、既に多くの怪奇事件に遭遇してきた田代は、この男に賭けてみることを決めた。超能力で、田代をカメラもろとも別の場所まで連れていった江野は、早速命令を下す――それは本当に、意味不明の内容ばかりであった……

[感想]

 ニコニコ動画での放送などにより、カルト的なファンを獲得、一部で熱狂的に支持されている『コワすぎ!』シリーズの“最終章”である――既に情報が出ているので「何を今更」とお思いかも知れないが、本篇自体の情報が出るまでは、無茶苦茶な話だったのだ。だって、本篇に先行する劇場版で、色々ブチ壊しにしすぎて、いったいどうやって続けるのか、傍目には想像しがたいほどだったのだから。劇場版公開時、監督があちらこちらで「続篇についてはアイディアがある」と公言していたので、そのうち何か出してくるだろう、とは思っていたが――内容的に、これを想像していたひとはまずいないだろう。

 ただ間違いなく言えるのは、一連の『コワすぎ!』シリーズを、都市伝説や怪談をモチーフとしたフェイク・ドキュメンタリーとして楽しんでいたのなら、間違いなく本篇には不満が残る。前作でさえだいぶ危うかったが、本篇は尚更に、当初の出発点から遠ざかってしまっている。本篇を観ながら私が思い出したのは、タイで製作されたサスペンス『レベル・サーティーン』だった――何がどう連想させたのか、興味のある方はそちらもご覧頂きたい。

 しかし出だしはそうした作品を彷彿とさせても、やはり白石監督である。各所で起きる出来事の理不尽さと、それによって牽引していく力はただ事ではない。

 シリーズの流れを踏襲した序盤から突然始まる異様な展開に、繰り返す緊張。しかしその内容が内容なので、剣呑な場面であるにも拘わらず、人によっては笑いが堪えられないはずだ。理不尽な成り行きが生み出すシビアな緊迫感と、時折襲われる弛緩した笑い、その連続の中にしかし、ちゃんと貫かれた芯があり、エンタテインメントへの確固たる意識がある。

 とことん逸脱しているように見えて、しかしちゃんとシリーズの世界観、ユニークさは色濃く踏襲している。特に本篇の突出した面白さは、実質的に主演が白石監督自身になってしまっている点だ。

 目立ちたがりなだけじゃないか、とも思うが、決してそれだけとは言えない(きっと目立ちたがりではあるんだろうけど)。この作品で、白石監督演じる田代カメラマンがクローズアップされたのは、キャラクターと世界観の成長が、図らずも工藤と市川というレギュラーの欠席があったからこそなのだ。作品の性質上、第三者が語り手になるわけにはいかない。観客が、ドキュメンタリー的に物語を目撃するためにはカメラマンの存在が必須であり、このシリーズには田代がいた。本人が狙ったのでないとしたら自業自得としか言えない成り行きにより、白石監督は自ら主役を張り、しかもきっちり活躍してみせる。彼が挑むミッションの凄まじさと、それに対する反応ぶりは、リアクション芸人もかくや、というレベルだ――だから目的の深刻さ、行動の過激さにも拘わらず笑ってしまうのだけど。

 物語が深まるにつれて、本篇はどんどんホラーから逸脱してしまう……いや、実のところ本篇の趣向はクトゥルー神話に近い発想が横たわっていて、きちんとホラーの文脈を留めているのだが、一般的な観客が求める恐怖は間違いなく得られないだろう。ただその代わり、この性感だからこそ許されるシチュエーション、面白さはてんこ盛りだ。具体的には記さないが、工藤と市川が再登場した際の成り行きや、事態を打破するための終盤のシチュエーションは、本篇の世界観と、低予算という制約があるからこその発想であり、面白さと言えるだろう。白石監督にはいちど潤沢な予算で撮って欲しい、と思っているが、本篇の魅力はこの規模、この予算だからこそに違いない。

 白石晃士監督には、フェイク・ドキュメンタリー・スタイルの金字塔といえる大傑作『ノロイ』があり、『裏ホラー』やこの『コワすぎ!』初期作品のようにホラーとしても秀逸な作品があるため、そのイメージで鑑賞した観客にとって、この最終章は失望させる内容かも知れない。しかし、自らのスタイルを突き詰め、独自のプロモーションにより人気シリーズとして昇華させたこの『コワすぎ!』においては、広げた大風呂敷のいちばん正しい畳み方をしている。先の劇場版を、笑いながら楽しんだ、という人にとっては、満足いくかどうかはともかく、納得のいく最終章ではなかろうか。

 そして、納得した、しないに拘わらず、本篇を経たあとで、新たに仕切り直して始まる『超コワすぎ!』には期待せずにはいられないはずだ。何せ初回の題材は、都市伝説の定番のひとつ“コックリさん”である。一連の出来事を踏まえ、いい意味でも悪い意味でも成長してしまったスタッフたちが、あのよく知られた怪異にどのように立ち向かうのか、そして次はどんな地平に向かうのか、楽しみにしたい。

関連作品:

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』/『オカルト

ノロイ』/『裏ホラー』/『シロメ』/『ある優しき殺人者の記録

ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE』/『ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE2』/『呪霊 THE MOVIE 黒呪霊』/『グロテスク

レベル・サーティーン』/『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〔新編〕 叛逆の物語』/『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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