他に1万円ぶん消費する方法ってあっただろうか。

 母が地元の商店街の福引きで汚職事件、じゃない、お食事券1万円を当てました。
 どうするか、と訊かれて、私はいいから仲のいい友達と行ってくれば、と勧めたのですが、そのつもりでいた相手が先月に腰の手術を受け、経過は良好ながら、お食事券の期限中はまだコルセットが取れず、お店の座席に着くのは辛いらしい。でけっきょくきょう、私が同行して消化することになりました。
 なにせ1万円分、しかも使える店は限られている。その中で使い切るとなると寿司か鰻くらい。実は私、幼い頃は生魚がどうしても受け付けず、最近は克服したものの、未だ外食で寿司という選択肢を取るほどではない。故に当然の如く、選ぶのは鰻なのです。
 大きな店ですが、祝日土曜となれば混雑は予想できる。お昼よりやや早い時間に出かけた。それでも若干は並ぶのを覚悟していたのに、あっさりと席に通されてしまった。まあ、こういうお店はちゃんと注文してから焼き始めていたりするし、早めに入れる分には問題はない。事実、食べ始める頃にはちょうどいい時間になってました。
 鰻の松竹梅は品質ではなく、分量の話です。私も母もどちらかと言えば食は細く、変に見栄を張っていちばん高い梅を注文すると、せっかくのご馳走をひいひい唸りながら食べる羽目になる。なので2人ともあえて松、お吸い物だけ肝吸いに変更してもらいました……昔は肝も苦手だったが。案の定、私たちには松で充分でした。私は米粒も可能な限り残さず平らげた。
 会計を済ませ入口まで戻ると、順番待ちの客が大勢いる。ちょうど従業員が客を通そうとしていて、「大変お待たせいたしました」と言っていたほどなので、やはり早めに来て正解だったらしい。
 腹ごなしがてら、前々から正確な場所を確かめたかったものを徒歩で確認しに行き――その正面に別のうなぎ屋があって笑ってしまった。どのみち、お食事券が使えるところではなかったので、ここを利用することはなかったでしょうけれど。それから道を戻り、ちょこっとだけ買い物をしてから帰宅。
 今年は久々に松江怪喜宴が実施されますが、予約が出遅れてしまったのと、旅行透析の枠が確保出来るかが不確かで、2泊以上の滞在が困難、と結論づけるのに手間取った結果、かなりタイトな時間割になり、2019年の訪問時と今年1月に訪ねたうなぎ屋までみたび足を運ぶ時間的余裕はない。そのぶん先に食べられて良かった……そこまでお店の上等な鰻にこだわってるわけでもないんだけどね。

 なお、まだ2千円分のお食事券が残っているそーですが、そちらは近所の美味しいスイーツの店でテイクアウトでもやっているようなら、母が何かのついでに買ってくる、ということになりました。しかし、候補に考えているお店は、店主のこだわりが強すぎて持ち歩き困難な商品ばかりなので、厳しいかも知れない。まあとりあえず堪能はしたので、最悪、期限切れで使えなくなってもいいのだ。

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