今回は《ふたりの後継者》篇。藤島千代を介して、左右馬たちの元に依頼が持ち込まれる。事務所を訪れた実原久は、25年前に亡くなった依里の残した子供を探していた。久の弁護士が出した尋ね人の広告で名乗り出たのは2人。久は、そのいずれが本当の孫なのか、見極めて欲しいという。孫候補の2人も交えた会食に、左右馬とともに招かれた鹿乃子は、ひとりの孫候補だけではなく、久の言葉にも嘘があるのに気づく……
原作では、終盤まで絡んでくる人物が現れる、という意味で重要なエピソード。とはいえ、本物の孫を探し出すくだりは決して込み入っていないので、過程を丁寧に見せている。ここに、もっとあとで出てくる鹿乃子初の洋装を混ぜたのはいいろ趣向。せっかくの実写化なんだから、華やかな場面は入れたいよね。
とにかくこの作品は脚色が巧い。鹿乃子の洋装を繰り上げて持ってきたこともそうですが、原作以上に重きを置いている割烹くら田を中心とするご近所の描写がいいのです。基本的には嘘をつかない人たちが、気遣いに放つ嘘の優しさ。能力があると知られれば排除され、隠していても居心地の悪い想いをしてきた鹿乃子にとって、ここが理想的な場所であることを実感させる。だからこそ、これまでにない逸脱ぶりを示す“ある人物”の存在が際立ってきます――ただ、想定される残り回数から、この人物の存在が重くなってくるところまでやるのは至難の業だと思うのですが。
いずれにせよ、そろそろ気になってくるのは、たぶんあと2回くらいで訪れる幕引きです――来週が最終回ではないのは、番組表から解るので、最低でもあと2話はある。とはいえ、今回のエピソードで登場する人物が再び絡んできて、左右馬自身のドラマに踏み込んでいくくだりまで済ませるには尺が足りない。まだ、ミステリとして見応えのあるエピソードが残ってるし、どうするのだろう。
次回は、《母来たる》篇。鹿乃子の苦しみにひとつ決着をつける、個人的にはドラマ版の最終話に保ってくるんじゃないか、と思ってたエピソード。もう私はここのスタッフを全面的に信頼してるので、ただ楽しみにしてます。
ここまで原作が再構成されている中で、未使用に終わりそうなエピソードも複数ありますが、中でも個人的に惜しんでいた、藤島千代が単身活躍するエピソードが、FODの配信のみでリリースされているようです。実際、本筋にはまったく絡まないけど、千代というキャラクターの個性が存分に発揮されているエピソードだったので、あとで確認してみます。感想まで書くかは解らぬ。
コメント