『海に眠るダイヤモンド 最終話 あの夜/記憶は眠る』

 鉄平はある日の夜、朝子と会う約束をしながら、現れることなく、リナとともに小舟に乗って端島を去った。あの夜、鉄平に何が起きたのか、いま鉄平はどこにいるのか。いづみと玲央は、ふたたび端島を目指す――
 長かった、鉄平を探す旅も遂に完結。案の定、あの人に秘密があったり、最後まで波乱を巻き起こしつつも、やっぱり最後は端島に収束していく。
 2時間スペシャル、とは言うけれど、実質的には9話と10話の融合っぽい。だから、ちょうど1時間経ったあたりで、ふたつめのサブタイトルが出てくる。配信とかでは分けられるのではなかろうか。
 あまり伏線というものに拘らず、ドラマとしての奥行きと丁寧さを売りにしているように思ってたんですが、こうやってみるとやはり伏線は用意されていた。確かに、そもそもノートの状態を考えれば、こういう背景であるのが自然です。そして、ようやく判明した、端島から鉄平が消えた経緯と、その後の姿が圧巻。確かに、こういう経緯ならば、鉄平は戻ることは出来なかった。
 意外だったのは鉄平と玲央の繋がりでしたが、ただここに繋がりが生まれたことも、ドラマの上では必然だった。やっぱり、玲央の存在と、彼の行動こそが実は象徴であり、過去と現代を繋ぐ最大の要素だったのでしょう。神木隆之介が二役をこなしたのも、当たり前だったのです――とはいえ、終盤のシーンでモニターと実像で並んでいるところは若干悪い冗談みたいでしたけど。
 そして、ようやく辿り着いたあの場所の、あの光景には本当にやられました。ひとつは予想がついたけれど、もうひとつは迂闊にも予測できなかった。だって、現物は別のところにあるのですから――ただ、タイミング的には、現物は使えなかったのでしょうし、現物でないことも鉄平が最後まで抱き続けた想いの証明なのでしょう。何にしても、すべてが籠められたあのシーンは、目頭が熱くなりました。現実にはあり得なかったそのあとのシーンは、ずっと紡がれた想いの結晶です。
 タイトルに籠められた意味と、その残し方がまた美しい。端島を支えたのは、地下に眠る大量の黒いダイヤモンド、石炭だった。生物の死骸が長い歳月を経て変化したそれらと同じように、鉄平の物語に登場した多くの人々が眠り、鉄平の想いを凝縮したものも、ああして眠り続ける。安易に、いづみの手許に戻るよりも、情緒に満ちた決着だと思う。
 端島というものの歴史と世界に誠実でありながら、フィクションとしての美しい構成と昂揚感を生み出した、極上の傑作。さだまさしが出ていて、なおかつ活気のあった時代の端島を再現している、という2点で満足させてくれればこっちは充分だったんですが、これまでに観たドラマの中でもトップレベルの名作でした。

TBSテレビ「日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』」
TBSテレビ 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』の公式サイトです。毎週日曜よる9時放送。主演は神木隆之介。過去から現代に通じる希望を見つけだす、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメント。

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