今期のアニメもだいたい4話を数えるところまで来ました。毎回観てるもの、なんとなく録画してるだけのもの、何らかの理由で録画を止めちゃったもの、色々あります。
開始前から楽しみにしていたのが『片田舎のおっさん、剣聖になる』なんですが――正直、回を重ねるごとにモヤッとしてます。
もともとは小説だったこの作品、私が初めて接したのはコミカライズ版でした。いまや新刊を、発売即ダウンロードされるよう電子書籍のサイトで予約しているくらいお気に入りになってます。
で、その流れでアニメ版も、放送開始前から楽しみにしていたのですが……ぶっちゃけ、物足りない。
ちょっとイヤな予感はあったのです。コミカライズで惹かれた作品の先が知りたくなって、原作小説を摘まみ読む、ということを時々していて、気に入った場合はそのまんま小説で一気に読んでしまう場合もあるのですが、この作品は、あまり乗らなかった。
恐らくそれは、コミカライズで惹かれた要素と、原作小説の見せ方が違いすぎたから、というのが大きい。原作は主人公であるベリルの一人称で綴られて、本質的にはオッサンであるが故の感覚を、かなり砕けたタッチで表現している。この類の小説では決して珍しい手法ではないんですが、私がコミカライズで惹かれたのは、ただのおっさんにしか見えず、自己肯定感も低いベリルが、その剣技や弟子たちとの接し方に、確かな達人の佇まいが覗く、その面白さにある。しかしこれが、基本ベリルの一人称で綴られてしまうと、あまり実感出来ない。選択した描き方が私の考え方とは違う、というのも大きいのでしょう、とにかくしっくり来なくて、原作小説を読むことはやめてしまった。
今回のアニメ版は、恐らくそういう考え方において原作小説寄りにした可能性は高い。だからまずその時点で私の感覚とは違うのですが、もっと問題なのは、エピソードのつなぎ方、見せ方がいずれも、だいぶ説得力に欠くのです。ベリルと立ち会った剣士たちが、それなりの腕前のはずなのに立ち会いですぐに感じ取れない程度ならまだしも、戦っていてもその腕前を感じ取れる描写がないので、ベリルの凄腕っぷりが伝わらないのがものすごーく物足りない。
それどころか、最新の第5話では、戦闘以外の描写でも不自然さが強まっている。
いちばん引っかかるのは、ここで初登場するミュイ・フレイアの描写です。スリで生計を稼ぎ、その僅かな収入でさえ盗賊に巻き上げられている設定なのに、服が不自然に凝っているのもさることながら、罪を犯しているのに、大通りで平然と捜し物をしたり、この世界観であれば警察組織に該当する騎士詰め所に安易に顔を出している。その後の行動も、この境遇であればあって然るべき警戒心や慎重さが微塵も窺えない。
前述の通り、私は原作小説を読んでません。こうした描写はもしかしたら、原作小説に準拠しているのかも知れません。しかし、だとしても、アニメ化の前にこうした欠点をうまく補ったと思われるコミカライズの脚色があったのですから、アニメなりにもっと説得力のある脚色を試みるべきではなかったか。
ヴィジュアルは悪くない。声優は比較的、イメージに合った人ばかりだし、西川貴教による主題歌もハマってる。それだけに、この脚色の拙さ、表現の不自然さがどーしてももったいない。いちおう視聴は継続するつもりですが、ず~っとモヤモヤする羽目になるかも知れません。
とりあえず今期、私が素直に楽しんでいるのは、『mono』と『アポカリプスホテル』、『忍者と殺し屋のふたりぐらし』、そして『ウィッチウォッチ』の4本というところです……けっきょく、世界観や設定が物騒でも、日常描写が楽しいものがメインなんだな。
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