『裸の銃を持つ男(2025)』

『裸の銃を持つ男(2025)』予告篇映像より引用。
『裸の銃を持つ男(2025)』予告篇映像より引用。

原題:“The Naked Gun” / 監督:アキヴァ・シェイファー / 脚本:ダン・グレゴー、ダグ・マンド、アキヴァ・シェイファー / 製作:エリカ・ハギンズ、セス・マクファーレン / 製作総指揮:ピート・チアッペッタ、アンドリュー・ラリー、アキヴァ・シェイファー、ダニエル・M・スティルマン、アンソニー・ティッタネグロ / 撮影監督:ブランドン・トロスト / プロダクション・デザイナー:ビル・ブルゼスキー / 編集:ブライアン・スコット・オールズ / 衣装:ベッツィ・ハイマン、マリア・トーツ / キャスティング:キャメロン・キューバ / 音楽:ローン・バルフ / 出演:リーアム・ニーソン、パメラ・アンダーソン、ポール・ウォルター・ハウザー、ダニー・ヒューストン、CCH・パウンダー、ケヴィン・デュランド、ライザ・コーシー、エディー・ユー、マイケル・ビーズレイ、モーゼス・ジョーンズ / ファジー・ドア製作 / 映像ソフト発売元:Happinet Pictures
2025年アメリカ作品 / 上映時間:1時間25分 / 日本語字幕:町野健二
日本劇場未公開
2026年1月21日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video + Blu-rayセット]
DVD Videoにて初見(2026/3/24)


[粗筋]
 フランク・ドレビンJr.(リーアム・ニーソン)警部補はロサンゼルス市警特捜班に所属する腕利きの刑事だ。誰の指示も受けず、犯行現場に単身乗り込んで、力尽くで解決するのを得意としている。
 その日もフランクは、前日に武装した銀行強盗をトリッキーな策で襲撃し一網打尽にした自分に酔いしれながら出勤したが、待ち受けていたのはデイヴィス署長(CCH・パウンダー)からの叱責だった。あまりにも過剰な暴力により、強盗犯によって訴えられたことが問題となり、これまでの傍若無人な捜査も相俟って、特捜班の廃止すら検討されているという。
 強盗事件の捜査を外されたフランクが相棒エド(ポール・ウォルター・ハウザー)と共に向かわされたのは、単独の交通事故と見られる現場だった。崖下に自ら突っ込んでいったような状況に、自殺と判断、適当に片付けようとしたフランクの許を、当事者の妹ベス(パメラ・アンダーソン)が訪ねてきた。ベス曰く、彼女の弟・サイモンは殺されたのだという。
 サイモンは、マイクロチップの開発を皮切りに財を成した事業家リチャード・ケイン(ダニー・ヒューストン)の許で働く優秀なエンジニアだった。しかし、事故の直前、サイモンはベスに、困ったことになった、と言い、事故翌朝に会う予定を組んでいた。自殺するはずなどないという。
 ベスの証言を受けて、フランクは半信半疑ながら、ケインに接触した。表面は友好的な人物で、サイモンの死を惜しみ、捜査に携わるフランクに自社最新の電気自動車をプレゼントしてきた。
 しかし、フランクが制圧した銀行強盗犯の取調で、思わぬ事実が判明する。襲撃犯たちは依頼によって計画を立てており、依頼主の目的は、ひとつの貸金庫だけだった、という。火薬で鍵を破壊しこじ開けられていた貸金庫の持ち主は、サイモン。
 銀行強盗とサイモンの死が繋がっている、と気づいたフランクは、ケインの行動を本格的に探り始めた――


[感想]
 レスリー・ニールセン主演で、日本でも大ヒットとなったスラップスティック・コメディ・シリーズのリメイク、ではなく、れっきとしたリブートである。なにせ、劇中でそう断言している。
 実は私自身は、オリジナル版を鑑賞したことはない。ただ、かなりブッ飛んだ趣向の用いられたコメディ映画だったことはうっすらと知っていて、その最新作を、近年、演技派であるにも拘わらず積極的にアクション映画に出演し、存在感を発揮しているリーアム・ニーソン主演で製作した、と聞き、興味が湧いた。そして、北米版の予告篇を鑑賞して、本篇の日本公開を待ち焦がれていた。
 が、残念ながら、劇場公開は見送られしまった。それでも、比較的早いタイミングで映像ソフトや配信が実施されていたため、月額レンタルサービスで借りて鑑賞したのだが――正直、映画館で公開して欲しかった、と改めて思った。
 しかしその一方で、公開を躊躇するのも、理解は出来てしまった。
 コメディ映画ではよくあることだが、本篇も、製作された国の常識、知識があることを大前提とした笑いがふんだんにちりばめられている。ブラック・アイド・ピーズとか『セックス・アンド・ザ・シティ』とか、知っている前提で言及しているが、かく言う私自身もこの辺りは詳しくないから、雰囲気とか採り上げ方からきっとおかしなことを言っている、と察しているだけだ。知識の外側にある情報を持ち込んだ笑いを“面白くない”と評価してしまう人には間違いなく向かないし、映画館でかけたところで、空回りしてしまう。
 だが、個人的には、そこまで心配する必要もなかった、とも思うのだ。なにせ、そういうアメリカでの常識めいた部分を抜きにしても、動きや展開だけでも充分に本篇はコメディとして楽しめる。
 作品の真価は冒頭10分、いや5分くらいで充分すぎるほど発揮されている。そもそもこのシーンが、舞台といい音楽といい、比較的最近の傑作を下敷きにしているのだけど、それに気づかなくても、直後のあまりにもシュールな事態の連続で笑わされる。やり過ぎでハマらない、という人もいるだろうが、ここで笑えた人なら、もう心を鷲掴みにされているし、そのあともとことん楽しめる。
 明らかに非常識、非現実的な事柄ばかり起きるのだが、その巧みな跳躍っぷりがアイディア豊かで魅せられてしまう。刑事物やアクション、サスペンスでお馴染みの趣向を弄った場面であっても、きちんとその大前提を先に見せてからひねったりひっくり返してくるので、都度都度笑わされてしまう。
 この作品の笑いを言い表すなら、本邦の『8時だヨ!全員集合』や『オレたちひょうきん族』など、テレビのコント番組の精神を、現代のガジェットや映像表現の中で進化させたもの、だろうか。細部のネタが解らなくても、テンションと勢い、巧みに意表を突く手法でしっかり笑わされるはずである。
 本篇が楽しいのは、リーアム・ニーソンを筆頭に、ちゃんとしたドラマ、文芸作品でも活動しているような俳優が、大真面目にイかれたことをしている点だ。冒頭、リーアム演じるフランクの初登場こそだいぶ奇天烈だが、基本的な振る舞いの渋さ、タフガイ然とした雰囲気は、近年出演しているアクション映画で固めてきたイメージを踏襲している。そのまんまで、明らかに変なことを考え、妙なことを口走り、常識を逸脱したことをするから笑わされる。演技派でありつつ、そうしてキャラクターを固めてきたリーアム・ニーソンだからこそ本篇の“フランク・ドレビンJr.”というキャラクターは成立している。
 終始細かに笑いをちりばめ、クライマックスで派手な展開を用意しつつも、そこでも引っ張っていくのは最後まで笑いだ。そこに教訓も学びもないが、この世界観に興味を抱いて、冒頭で惹き込まれた人なら、最後まで充実感を味わえ、いい意味で、あとに何も残らない。
 製作国での常識に則ったネタや、英語が理解できないと伝わらない要素もあるとはいえ、動きと構成で導く笑いの方がふんだんで、世界的に受け入れられる要素は充分にある。実際、アメリカに限らず、きちんとヒットしていたようだし、出来れば日本でも、短期間、限定的規模でもいいから、劇場でかけて欲しかった……。


関連作品:
アイス・ロード』/『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』/『リチャード・ジュエル』/『ワンダーウーマン』/『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』/『ノア 約束の舟』/『2ガンズ』/『アーミー・オブ・ザ・デッド
めまい(1958)』/『羊たちの沈黙』/『シカゴ(2002)』/『ダークナイト』/『キングスマン』/『96時間 レクイエム』/『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』/『未来世紀ブラジル』/『ピンクパンサー』/『ピンクパンサー2』/『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬

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