それっぽいモチーフ出せばいいってもんでもない。[レンタルDVD鑑賞日記その962]

心霊盂蘭盆17(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 9月7日に、2022年3月リリースの『心霊盂蘭盆17』を鑑賞。音楽活動をしている2人のビデオチャット生配信に起きた異様な出来事《呪われた入室者》、解読した謎のメッセージに従い山中に迷い込んだ大学院生が遭遇する怪異《燻製隷属の虚偽》、収録された複数の怪奇映像を繋ぐ人物の裏サイトに残された異様な映像を巡る完結篇《Cicada Sign》など、全5篇を収録。
 ……なにこの、全篇空回りしてる感じ。
 モチーフ自体は悪くない。蝉や暗号、ネットでの乱入といったモチーフが入り乱れ、別の怪奇映像とそれに絡むエピソードが後続のエピソードとリンクし合って、異様な状況が拡大していく、姉妹シリーズ《心霊曼邪羅》ではやらない、1巻を通して生まれる面白さ、恐怖は確かにある。
 が、それも行きすぎたり、あまりにも曖昧な要素が多かったりするとピンと来ないし、最終的に冷めてしまう。本篇の場合、なんでこのタイミングで、これらの出来事が繋がっていったのか、がぼんやりとしすぎている。要素を紐解いてみれば、実は特定の人物の呪い、とも考えられるのですが、にしては手口が迂遠すぎる。この世の者でない何かが仕掛けているなら、もっと直接的な方法でいいのです。生きている人間が仕掛けていたとしても、何だか凝りすぎている。謎解きゲームじゃないんだから。
 他方で引っかかるのは、“芝居の拙さ”です。いや、たぶん全員ちゃんと演技は経験している人なのでしょうけれど、映像におけるシチュエーションをリアルに表現する、という意味ではまったく物足りない。全般に物言い、間の取り方に芝居臭さが色濃く、ナチュラルに話してないな、というのが滲み出てしまっているのです。《メッセージ》に登場する家族の、親子や姉妹としての歴史をあんまり感じさせないやり取り、《》の自然とは言い難いトーク。《》における、地下アイドルという設定にしてもあまりにも華のない装いを始め、シチュエーションや衣裳にも“そぐわない”と感じる部分が多い。
 何より、ずっと現れる“蝉”のモチーフは何だったんでしょうか。最後にテロップで示される事実の象徴、ということにしたかったのかも知れませんが、ランダムに集まったはずの怪奇映像の一部が繋がり合っていたからと言って、それが一定期間に限られる、ってどうやって決めつけられるのか。あと、そもそも“蝉”の寿命が7日間というのは俗説で、実際にはもっと長く生きるのですから、象徴としても、呪いのトリガーとしても不十分。だいたい、絵は出しても劇中、蝉の鳴き声がほとんどしないので、どーにもしっくり来ないのです。近年の猛暑により、蝉は日中よりも夜に鳴くことが多いんだから、本篇収録の怪奇映像においては、もっとガンガンに鳴いていてもいいはずだと思うの。
 他のシリーズでもしばしば用いられる、複数の投稿が繋がりあう長篇に挑むとか、様々なモチーフを組み合わせて読み解く面白さを演出しようとする、そういう意欲はとても評価出来るのですが、どうしても全体的な仕上がりは稚拙で不格好、と言うほかない。なんか、安易に切り捨てたくはない何かはあるんだけどなあ……。

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