
TOHOシネマズシャンテが入っているビル外壁にあしらわれた午前十時の映画祭16、『レッド・サン(1971)』上映当時の今後の上映作品一覧。
原題:“Red Sun” / 監督:テレンス・ヤング / 原案:レアード・コーニッグ / 脚本:ローレンス・ロマン、デネ・バート・パティクラーク、ウィリアム・ロバーツ / 台詞:ジラール・デヴリース / 製作:ロベール・ドルフマン / 製作総指揮:テッド・リッチモンド / 撮影監督:アンリ・アルカン / プロダクション・デザイナー: / 編集:ジョニー・ドワイアー / 衣装:トニー・プエオ / 音楽:モーリス・ジャール / 出演:チャールズ・ブロンソン、ウルスラ・アンドレス、三船敏郎、アラン・ドロン、中村哲、キャプシーヌ、モニカ・ランドール、田中浩、アンソニー・ドーソン、リカルド・パラシオス、リュック・メレンダ、フロレンシオ・アマラージャ / 初公開時配給:東和 / 映像ソフト日本最新盤発売元:角川書店
1971年フランス、イタリア、スペイン、アメリカ合作 / 上映時間:1時間52分 / 日本語字幕:?
1971年11月26日日本公開
午前十時の映画祭16(2026/04/03~2027/03/18開催)上映作品
2012年3月16日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video|Blu-ray Disc]
TOHOシネマズシャンテにて初見(2026/9/22)
[粗筋]
19世紀半ばのアメリカ。
強盗団を率いるリンク(チャールズ・ブロンソン)と、相棒で早撃ちの名人ゴーシュ(アラン・ドロン)は仲間たちと共に、アメリカを横断中の列車をジャックした。狙いは、輸送されていた大量の金貨。列車には日米修好条約を締結するために日本から大使として派遣された坂口備前守(中村哲)が乗っていた。ゴーシュは大使たちの乗る車輌にも踏み込み、大使が大統領への贈答品として持ち込んでいた美しい日本刀も奪う。
首尾良く事を運んだかに見えたが、最後にリンクを待っていたのはゴーシュの裏切りだった。一部のメンバーと結託し、リンクたちがまだ残っていた車輌を爆破してゴーシュは逃げ去っていった。
幸いに軽傷で済んだリンクに、備前守は日本刀の奪還を要求する。強盗は死刑が確実であるため、備前守に訴えられたらリンクは終わりだった。備前守からお目付役として送り出された黒田十兵衛(三船敏郎)とともに、リンクはゴーシュを追う。
リンクはいずれゴーシュが情婦のクリスチーナ(ウルスラ・アンドレス)のもとにやって来ると踏んで、彼女が働く娼館のある町へ先回りを目論んだ。
だが、旅路は波乱含みだった。無頼漢で他人に命令されることを好まないリンクと、勤めに忠実な十兵衛はまさに水と油で、リンクは繰り返し十兵衛を撒こうとするが、武芸に優れた十兵衛を振り切ることは出来ない。
果たしてリンクたちは、無事に宝刀を奪還できるのか――?
[感想]
江戸幕府の終焉は1868年、それまで1858年の日米修好通商条約などで欧米諸国との駆け引きが生じており、外国を知る必要を感じた有志の外遊もあって、いわゆる“侍”がアメリカ西部に現れる、という設定はまったく荒唐無稽とまでは言えない。実際、不平等条約の解決のために大使が送られる、という展開は、史実と併せて考えればあり得ることだった。
だがそれでも、佩刀した武士が西部のアウトローとともに荒野を行く、という成り行きは、やはりいささか異様だ。それを敢えて形にしてしまうのは映画、フィクションならではの大胆さであり面白さだろう。
片割れが日本の侍である、ということを除けば、よくあるバディものの文法に則った構成である。性格はほぼ反対、水と油のような関係で、旅行きは波乱続きだ。頭の堅い“お目付役”十兵衛が気に食わない無法者のリンクは十兵衛を陥れて遁走を図るが、辛抱強い十兵衛は執拗にリンクを追う。リンクは意趣返しのように十兵衛をからかったり、辱めるような言動を繰り返すが、十兵衛はそれすら意に介さない。この駆け引きがコミカルで、風変わりな魅力がある。
だがそんなふたりも、旅を続けるうちに絆めいたものが芽生えてくる。信念の違いで衝突する場面もあるが、ゴーシュを追い宝刀を取り戻す、という目的のもと、協力するようになる。クライマックス、阿吽の呼吸で互いを補うさまがいっそ痺れるほどだ。
西部劇にサムライが加わる、という趣向の旨みは何よりも、日本にはない広大な荒野を佩刀した和装の人間が闊歩し、銃弾が飛び交うなかを剣術、体術で対抗する、という構図だろう。そういう意味で抜かりはない、と言いたいところだが、少々物足りなさは禁じ得ない。
旅の最中、遠景でリンクと十兵衛が連れ立って歩む、といった映像はあまり多くなく、わりと近い距離から撮ったシーンがほとんどで、西部のスケール感を堪能した、という気分には至らない。
ガンマンとサムライの対決は描かれるが、これももうちょっと数と尺が欲しい、と感じるし、特に決着については、それまでの描写と合わない、という嫌味を覚え、やや満足感を損なっている。この展開を受けてのやり取りは情感に満ちているだけに、惜しい、と言わざるを得ない。
しかし、当時の三船敏郎という俳優が世界的に発揮したスター性と、斜陽の時期にあったとは言い条、まだ価値を留めていた西部劇、という要素があってこそ成り立った本篇は、半世紀以上を経たいま観ても、無視しがたい魅力がある。
午前十時の映画祭16で上映された際、一部の劇場で添えられた町山智浩氏の解説では、現代にこそリメイクする意義がある内容、と評価していた。大筋では同感だが、それでも国際的に日本を代表する俳優である三船敏郎が侍として西部に立った本篇自体にも充分な価値がある。本篇での三船=十兵衛の佇まいは、何なら『七人の侍』よりも『用心棒』よりも王道の侍然としている。
そんな三船と、無骨だが洒脱なチャールズ・ブロンソンが絡み、アラン・ドロンが出番は多くないが俳優としての色気を発揮して対峙する、という唯一無二のシチュエーションが拝める、そういう点も含め、この時代だからこそ作り得た空気を堪能すべき作品だろう。
関連作品:
『007/危機一発(ロシアより愛をこめて)』/『荒野の七人』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』/『七人の侍』/『用心棒』/『』/『椿三十郎(1962)』/『冒険者たち』/『日本のいちばん長い日<4Kデジタルリマスター版>(1967)』/『ホステル2』
『荒野の用心棒』/『ダンス・ウィズ・ウルブズ』/『カウボーイ&エイリアン』


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