『ホステル2』

ホステル2 [DVD]

原題:“Hostel : Part II” / 監督・脚本:イーライ・ロス / 製作:イーライ・ロス、マイク・フレイス、クリストファー・ブリッグス / 製作総指揮:クエンティン・タランティーノ、スコット・シュピーゲルボアズ・イェーキン / 共同製作:ダニエル・フライシュ、フィリップ・ワーリイ / 撮影監督:ミラン・チャディマ / 特殊メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー / プロダクション・デザイナー:ロブ・ウィルソン・キング / 編集:ジョージ・フォルシーJr.,A.C.E. / 衣装:スザンナ・プイスト / キャスティング:ケリー・マーティン・ワグナー / 音楽:ネイサン・バー / 出演:ローレン・ジャーマン、ビジュー・フィリップス、ロジャー・バート、リチャード・バージ、ヴェラ・ヨルダノーヴァ、ヘザー・マタラッツォスターニスラフ・イワネフスキー、ジェイ・ヘルナンデス、ジョーダン・ラッドエドウィジュ・フェネシュ、モニカ・マラコーワミラン・クナツコ / ネクスト・エンタテインメント/ロウ・ナーヴ製作 / 配給:DesperaDo / 映像ソフト発売元:Amuse Soft Entertainment

2007年アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:岡田壯平 / R-18

2007年9月8日日本公開

2008年2月22日DVD日本盤発売 [bk1amazon]

公式サイト : http://www.hostel2.jp/

DVDにて初見(2009/12/21)



[粗筋]

 絵画の勉強のためにイタリアを訪れていたアメリカ人画学生のベス(ローレン・ジャーマン)、ホイットニー(ビジュー・フィリップス)、ローナ(ヘザー・マタラッツォ)の3人は、休日に揃ってプラハでの観光を楽しむつもりでいた。

 だが、夜行列車で相次いでトラブルに遭遇した3人はプラハ行きに嫌気が差してしまう。ちょうど列車には、絵画教室でモデルを務めていたアクセル(ヴェラ・ヨルダノーヴァ)が乗り合わせており、彼女の誘いでスロヴァキアに行き先を変更、スパと謝肉祭を楽しむことにする。

 道中の経緯から、他人との接触に警戒していたベスだったが、ヴァカンスを渇望するホイットニーも、空想癖の強いローナも彼女の忠告に従わなかった。そして祭の夜、ベスの危惧していた通り――いや、彼女の想像を超える悪意が、3人の女性達に牙を剥こうとしていた……

[感想]

 異様なまでに冷徹な拷問シーンの数々と、極めて丁寧に構成されたシナリオが評価され、高いレーティングに設定されながらもスマッシュ・ヒットを飛ばしたゴア・ムービーの続篇である。

 よくこういう作品は、続篇になるとスタッフが一新され、設定こそ一緒だが妙に異なる雰囲気を醸しだし、更には質も落ちていることがままある。しかし本篇は、監督・脚本のイーライ・ロスを筆頭に、ほぼ同じスタッフが結集している。舞台設定も変えていないので、その意味では理想的な続篇だ。

 だが、前作にある中盤以降の緊迫感や、結末の爽快感と空虚さとがない混ざった異様な余韻、何よりも目を覆うばかりの残酷描写に期待して鑑賞すると、はっきり言って失望する可能性は低くない。

 前作にあったあの緊迫感は、容赦ない暴力描写が形作っていたものだが、今回それが全般に抑え加減になっているために、特に前作であの凶暴さに晒されてきた観客は、本篇には緩い印象を受けるだろう。決して行為自体の残虐性は低くなっていないのだが、表現自体が全体に和らいでいるうえ、中盤あたりから既に始まっている駆け引きや追跡劇のスリルのほうに重点が置かれているために、なおさらそう感じるのだろう。最後の出来事が齎す爽快感や空虚な余韻も、別のものに置き換えられている。

 ただ、よく観れば解ることだが、基本的な構造は前作をきっちりと踏襲している。序盤のいささか脳天気と思われる筋運びが後半での成り行きに影響しており、物語の構成要素が噛み合っていく、爽快とも呼べる感覚は健在だ。特にある人物をめぐる劇的な展開について、ちゃんと伏線が張ってあるのは素晴らしい。人間関係もまた、そこに貢献するよう配慮されているのである。

 人間関係と言えば、本篇では序盤から“加害者”側の目線からの描写も組み込まれている。こちらに登場するスチュアート(ロジャー・バート)とトッド(リチャード・バージ)の、人柄の違いが作品に歪んだユーモアと、驚きを齎す材料になっている点にも注目したい。もともとホラー映画には度を過ぎると醜悪なユーモアに繋がるという性格があるが、監督は続篇を作るにあたって積極的にそういう側面を意識していた節があり、彼らの人物造型はその象徴だろう。

 そう考えていくと、前作と余韻のまるで異なる決着も、必然的な成り行きなのだ。趣向としては実のところ前作に近しいところがありながら、それがブラック・ユーモアとして機能しているのも、意図してのことだろう。

 残念ながらそれが、前作を観た人々の期待するものとは必ずしも一致しないことで、故に前作ほど高くは評価されていない傾向にあるが、明確な意図をもって制作され、目論見通りに仕上げられていることが窺える本篇は、本能の赴くまま作られたように見せかけて実は周到に生真面目に組み立てられていた前作の続きとして、相応しい完成度を備えている、と思う。叶うことならば、そのうえでなお、前作に匹敵する凶悪さを求める観客にも応えて欲しかった、というのが正直なところだが。

関連作品:

ホステル

グラインドハウス

イングロリアス・バスターズ

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