『怪談新耳袋 殴り込み!2』の、どーしても気になること。

 先日のイベントで、DVDに収録できなかった映像を拝見しながらずーっと考えていて、指摘したほうがいいのかしら、と悩みに悩み、結局その場では(出演者の皆さんを捕まえやすい場所で聴いていたにも拘わらず)お話ができなかったことがあります。

 以下、終盤のネタばらしと、そのあたりの解釈を記しますので、“続きを読む”記法にて格納しておきます。虚心に映像を愉しみたい、という方は忘れてください。



 前作と同程度の奇妙な映像、不可思議な音は多数記録に成功しながら、それらを押さえてトリを飾っている映像が、とある廃ホテルで撮影に成功したものです。数年前、お笑い芸人たちがイベント用に肝試しとして潜入、その際に撮影した映像に、不気味な女の顔のようなものが映りこんでいる、というのを観た覚えがある方は多いと思いますが、今回“新耳Gメン”*1はほぼ同じものを撮影することに成功している。

“新耳Gメン”の皆さんは、顧問役の木原浩勝氏から「怪奇映像を撮るためには、そこにいる“霊”に敬意を払うのでは駄目だ。挑発しろ。不浄を働け」と仰せつかっていて、訪れる先訪れる先でとんでもないことをやっている。某ゲームセンターでは霊を罵り、バイクの後ろに跨る女性の霊が出ると言われる山中のトンネルではシャドーナンパをやってのける。実は収録を避けられた映像のなかではもっと酷いことをやってるそうなんですが、まあそこまでやっているからこそけっこう高い確率で収穫を得ているのでしょう。某廃ホテルで決定的な映像を記録できたのも、挑発が奏功したからだ、と言えます。

 ……が、しかし。

 肝心の映像を撮影するまでのくだりを何度も眺めた私には、どーもそうは思えない。他の映像はともかく、廃ホテルのアレについてだけは、挑発がうまく行った、とは考えにくい。

 問題の映像を収めることに成功したのは、カメラマンの青年でした。先に豊島圭介監督とギンティ小林氏が単独でホテルの3階まで上がり撮影を行ったものの、いずれも素晴らしいまでのヘタレっぷりを晒しただけ(まあ、実際ひとりであそこに上がったら誰だって怖いだろーけど)で収穫はなく、最後の秘策として、まず全員で3階に上がり、そののち予め決めてあった“生贄”であるカメラマンを残して下りる。カメラマンはまず、そこにいるらしき女の霊を罵り、次に告白めいた言葉をかけて、そのあとで“気になるあの娘に写メを送る”――と現実の女性相手にやったら確実に平手の一発は食らうようなサイテーな行為を繰り返し、霊の出没を促したわけです。

 ここまでやったから撮影に成功した、と言いたいのは解る。実際に、カメラはあの芸人たちが撮ったのと同じような映像を記録しました。しかし私が首を傾げるのは、その絵が収録されたタイミングです。

 カメラがその姿を捉えたのは、撮影者が3階に取り残されたのち、少し移動をした瞬間。つまり、挑発をする前なのです。

 豊島監督もギンティ氏もひとりで動揺していただけで、傍目に挑発が成功していたとは到底言えない。つまり、決定的映像を収録できたのは、どう見ても挑発のお陰ではない。

 ……気の毒で、直接は言えません。なのでここでこぼしておきます。まあ、「挑発する意思があったから反応したんだ!」と抗弁は出来ますが、でもあんたら全員ずーっとビビってたやん、と即座に反論も出来るわけで。

 もっと言ってしまうと、私はくだんのお笑い芸人たちが撮影した映像は、霊とかの類ではなく、天井にある何かにライトやカメラの機能などが複雑に影響した結果それっぽく見えたものでは、という疑いを抱いていました。“新耳Gメン”のスタッフは、同じものが撮れたことを「あそこに何かがいる証拠」と喜んでいましたけれど、あそこまで似たような状況で、似たようなものが撮影できたというのは、むしろ光と影の悪戯だった可能性を強めたよーに思えるのですけれど。

 まあ、たとえ正体が何であれ、極めていや〜な感覚を齎す、いい怪奇映像であることは変わりない、とも思っているのですけれど。問題はそれが本物か偽物か、ということではなく、どんな印象を与えるか、だと私は考えているので。ですから、くだんのお笑い芸人たちが収めたものも“新耳Gメン”たちが撮影したものも立派な怪奇映像の名作だと思いますし、わざわざ危ないところに飛び込んでいって、ヤバいことをしてまで“現物”を押さえることに挑み続ける彼らをけっこう本気で尊敬してます。ええ。

 そんなわけで、来年も新作を期待しております。でも八のつく山は避けた方がいいと思う。帰ってこないと困ります。

*1:新耳袋殴り込み!』スタッフの通称。いつの間にかそんな呼び名になっていたらしい。故に映像作品各パートのOPは出演者が横並びで歩いてくる様子。

コメント

  1. 名無し より:

    私は、あの映像を見た時に、「あっ、お笑い芸人のやつと一緒やん、てかこれ構成してつくってるっしょ?」と思いましたが...

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