『ブレイド2(2002)』Blu-ray版(Amazon.co.jp商品ページにリンク)。
原題:“Blade II” / 原作:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コラン / 監督:ギレルモ・デル・トロ / 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー / 製作:ピーター・フランクフルト、トマス・クレチ、ウェズリー・スナイプス / 製作総指揮:アヴィ・アラド、マイケル・デ・ルカ、トビー・エメリッヒ、デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス、スタン・リー / 撮影監督:カブリエル・ベリスタイン / プロダクション・デザイナー:キャロル・スピアー / 編集:ピーター・アムンドソン / 衣装:ウェンディ・パートリッジ / マーシャルアーツ・コレオグラファー:ドニー・イェン / キャスティング:ナンシー・フォイ / 音楽:マルコ・ベルトラミ / 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ロン・パールマン、レオノア・ヴァレラ、ノーマン・リーダス、トーマス・クレッチマン、ルーク・ゴス、マット・シュルツ、ダニー・ジョン=ジュールズ、ドニー・イェン、トニー・クーラン、ダズ・クロフォード、サンティアゴ・セグラ、カレル・ローデン / アメン・ラー・フィルムズ製作 / 初公開時配給:日本ヘラルド / 映像ソフト発売元:Warner Bros. Home Entertainment
2002年アメリカ、ドイツ合作 / 上映時間:1時間57分 / 日本語字幕:? / PG12
2002年6月15日日本公開
2012年12月19日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video|Blu-ray Disc|Amazon Prime Video]
NETFLIX作品ページ : https://www.netflix.com/watch/60022707
Netflixにて初見(2021/3/9)
[粗筋]
世界支配を目論んだ吸血鬼との対決から2年。吸血鬼の力を持ちながら、日光やニンニクへの耐性を備えた《ヴァンパイアハンター》のブレイド(ウェズリー・スナイプス)は、行方をくらました相棒ウィスラー(クリス・クリストファーソン)の行方を追い続けていた。
ようやく見つけ出したウィスラーは、水槽に閉じこめられ、無数の管に繋がれた惨い姿になっていた。先の闘争で吸血鬼の牙を受けたウィスラーが変容しないように繰り返し血液を送りこみながら、ブレイドの情報を引き出すため拷問を繰り返していたらしい。ブレイドはウィスラーをアジトに連れ帰り、血清を施した。
辛うじて変容することのなかったウィスラーだが、彼が不在のあいだに、ブレイドは新たな協力者をアジトに迎え入れていた。スカッド(ノーマン・リーダス)と名乗るその若者に、ウィスラーは不信を隠さない。
そんな矢先、アジトにふたりの武装した吸血鬼が潜入してくる。紫外線避けの装備をした彼らは、しかしブレイドに対して、ヴァンパイア王国からの休戦の使者である、という。休戦の証を届けてきた使者のひとりは、ヴァンパイアの王ダマスキノス(トーマス・クレッチマン)の娘、ニッサ(レオノア・ヴァレラ)であった。
ヴァンパイアたちの秘密の館に招かれたブレイドたちは、いま人類のみならず、吸血鬼にとっても危機となり得る存在が放たれた、と知らされる。《死神族》と名付けられたその種は、吸血鬼さえ餌にする。その感染拡大の勢いは激しく、数ヶ月もすれば吸血鬼も人類も滅亡しかねない、というのだ。
ダマスキノスは、2年前の戦闘を経て組織した精鋭部隊ブラッドパックの指揮権をブレイドに委ね、《死神族》の討伐を請願する。ウィスラーは疑念を唱えたが、しかしブレイドはこの申し出を受け入れた。
吸血鬼以上に強い吸血衝動を持った《死神族》は必ず、餌となる血液が大量にある場所に出没する。ブレイドとブラッドパックたちは、吸血鬼がたむろするクラブに赴いて待ち伏せを図った。
しかし、誕生したばかりの《死神族》の特性を熟知する者はひとりもいない。それが、戦闘に慣れたブレイドやブラッドパックを激しく翻弄する――
[感想]
前作から4年を経て発表された、ウェズリー・スナイプス主演による《ブレイド》シリーズ第2作である――が、日付を確認いただければ解るとおり、私は1作目、2作目はほぼ立て続けに鑑賞している。それゆえに、率直に言えば、本篇のどの場面の出来事よりも、冒頭のモノローグにいちばん衝撃を受けた。確かにそう解釈も出来るけど、いいのかそれは。
主演と脚本は前作から共通しているが、監督はスティーブン・ノリントンからギレルモ・デル・トロにバトンタッチした。これが思いのほか、作品の雰囲気に大きな影響を及ぼしているように感じる。
前作は“吸血鬼”という古典的な題材を採り上げながらも、スーパーヒーローを主人公とするアクション映画の枠に収まっているが、本篇は“吸血鬼さえ捕食し、感染させる”新種を登場させたことで、感染ホラーの色彩が強まった。通常であれば人間を服従させ、貪る存在である吸血鬼たちが、感染に怯え、緊迫した面持ちで《死神族》討伐に赴く、という趣向は、シリーズとして既にこの世界観での《吸血鬼》を描写しているからこそ可能であり、面白い着眼だ。
ただその一方で、人類や、あくまでも人間に与するブレイドにとって戦うべき敵であったはずの《吸血鬼》の地位を、いくぶん下げる内容になってしまったことは否めない。本篇に登場する《吸血鬼》たち、とりわけブレイドと行動を共にする《ブラッドパック》たちは劇中、ほとんど吸血行為をしないので、やや風変わりなだけの傭兵部隊のように映る。シリーズとして世界観を確立していればこそ許される描き方だが、いささか勿体なくも思える。
しかしそのぶん、いわゆる《吸血鬼》をテーマにした他の諸作とは異なるグロテスクさが生まれた。性質上、どうしても血腥さが先行しがちだが、本篇の《死神族》の描写はクリーチャーの異物感が際立ち、視覚的に嫌悪感を誘う。製作の経緯は解らないが、『クロノス』『ミミック』と既に独自の美的センスでクリーチャーを描く技倆を示したギレルモ・デル・トロ監督が起用されたのも、こうした題材故だったのかも知れない。もしそうなら、判断としては成功だろう。シリーズのムードにギレルモ・デル・トロ独特の醜悪にも拘わらず不思議な愛嬌のある怪奇
惜しむらくはアクションシーンだ。
アクション自体のクオリティは高い。前作の、まるで型を決めるようなスタイリッシュさから趣を変え、香港流のスピード感と鮮やかさが強まった。間違いなくこれは、アクションの振付にドニー・イェンが関わっているからだが、いささか見せ方が巧くない。香港流のアクションは繋がりを明確にすることでスピード感やアクションの奥行きを表現する技術を蓄積しており、本篇でもその面影はあるのだが、それをハリウッド流の、カット数を増やすことであいだを摘みテンポを作り出す編集を施したため、立体感が損なわれている。俳優やスタント陣はドニーらアクション演出の指示に応えている節は見られるのだが、残念ながら活きているとは言いにくい。ドニー・イェンは本篇におけるアクションの仕上がりに不満があり、それがきっかけでしばらくハリウッドと距離を置いていた、という話すらあるようだ。その真偽はどうあれ、なまじ香港流アクションの息吹を感じられる作りであるだけに、歯痒さを覚える見せ方になっている、というのは否定できない。
他の作品にも接した者ならそれと解るほど、ギレルモ・デル・トロ監督の個性は出ている。一方で、アクションの組み立てはドニー・イェンのみならず他の俳優、スタントにも明白に香港スタイルが現れており、スピード感とパワーは見応えがある。ただ、どちらも本来の持ち味を充分には発揮出来ていない。そのくせ、アクションの仕上がりに敬意を払ったが故なのか、クライマックスが本篇のファンタジー的要素には似つかわしくなく泥臭い組み立てになっているのも引っかかる。
ギレルモ・デル・トロ監督とドニー・イェン、彼らのその後の活躍を予感させる要素がある、という意味で極めて興味深い作品だが、トータルではいささか歪で、幸福なマリアージュにはならなかったようだ。これはこれで独特の魅力はあるのだけど、安易に勧めるのは躊躇われる。まずは前作か、ギレルモ・デル・トロ監督作品、ドニー・イェンの2000年代の作品に接して、相性を確認してから臨むほうが無難だと思う。
関連作品:
『ブレイド(1998)』
『クロノス〈HDリマスター版〉』/『デビルズ・バックボーン』/『ヘルボーイ』/『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』/『パンズ・ラビリンス』/『パシフィック・リム』/『クリムゾン・ピーク』/『シェイプ・オブ・ウォーター』
『アート・オブ・ウォー』/『PLANET OF THE APES/猿の惑星』/『薔薇の名前』/『パンドラム』/『戦場のピアニスト』/『デス・レース2』/『トランスポーター』/『12人の怒れる男』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアン・モンキー』/『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い』/『刺さった男』/『バレット・モンク』
『バイオハザードII アポカリプス』/『エイリアン』/『グリーン・デスティニー』/『007/ダイ・アナザー・デイ』/『ハルク』/『僕らのミライへ逆回転』/『デッドプール』
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